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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第6章 道化師は惑う

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第140話 苦悩

読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)


そりゃ、あれだけあれば考えますよね

 クラウンは神の使徒ラズリとの激闘を終えて、今はハザドールで客扱いとして割り振られた部屋の一室にいる。


 その部屋は豪華な彩飾に包まれたまさしくザ・王族と言った感じの部屋で、クラウンにはあまり居心地がいい環境ではなかった。とはいえ、休めるうちに休むのは自然のことだ。


 それにその居心地の悪さは個人的な文句でしかない。そもそも、親切に与えられているのにその態度はいかがなものか。なので、受け取るものは受け取って、今はベッドの上で寝そべっている。


 あの日から数日が経ち、国は徐々に人々の活気を取り戻しつつあった。


 結果的にいえば、あの操られた症状はやはり魔法的なものであったらしい。そして、その魔法は王様の魔法ではなく、ラズリが施したであろう魔法で、王様はその魔法を使うための媒介に過ぎなかったらしい。


 その魔法によって何をしようとしていたかは定かではない。聞こうとして答えれるかどうかも怪しい。それに解決したなら、もう掘り返す必要も無い。


 ちなみに、その魔法による後遺症は特にないらしい。ただ、シュリエールを除いた誰一人としてその時に何が起こったのか記憶が無いらしい。


 だが、思えばそれでいいのだろうと思える。誰も辛い記憶なんて知りたくも無いはずだ。まさに今回の出来事は知らない方が幸せという言葉に尽きるだろう。


 クラウンはふと目を閉じる。そして、この空間に〈気配察知〉をして、徐々に範囲を広げていく。


 するとやはり、黒い世界に白い線で画かれたこの場の部屋の様子が現れた。モノクロよりもさらに黒と白で明確に分けたかのようなそれは、この部屋の外にいる人の歩みもしっかりと捉えていた。


 しかし、その空間において距離感は把握出来ないので、多少の予測が必要なのかもしれない。あの時は戦っている場所が開けていたり、特に仕切りがなかったのであまり考えずに攻撃に専念できたというところもある。


「まだ出来たばかりだから、もう少し感覚を掴む必要があるな」


 クラウンはそう独りごちると静かに目を開けた。そして、映る光景はシャンデリアがつき、何かの絵が描かれた天井。まさかこんなにも見えることが素晴らしいとは。こんな経験でもしなければ、気づくこともなかっただろう。


 これからもリリス達とこの世界を見ていける。そう思うと何だか嬉しくも感じる。これまでになかった感情だ。気配を極めてしまったからか余計に自分の感情が目につくようになってしまう。


 それにしても、いつの間にこんな感情を抱くようになっていたのだろうか......いや、そんなことを考えるのは野暮だときっとリリスは言うだろうな。


 そう思うとクラウンは僅かに笑みを浮かべた。そんな言葉を言うリリスの姿が容易に想像できたからだ。ここまで考えられるようになっているとはある意味重症かもな。


「だが......」


 クラウンは左手で心臓のある左胸側の服を握った。そして、先ほどの穏やかな表情と違って、やや鋭い目付きをしている。まるで誰かを睨むように。


 そして、クラウンは誰もいない空に話しかけた。


「おい、聞こえているか? お前は一体何者なんだ? お前は本当に俺から生み出した存在なのか? 答えてみせろ」


 クラウンの口調は強かった。だが、そんな言葉に対して答えるものはいなかった。当然だ、見えないわけではなく本当に誰もいないのだから。


 そしてまた、クラウンが話しかけたのは内なる自分自身に対してだ。リリスが取り払ったとされているあの時のオレ。言わば悪意の塊とでも言えばいいのだろうか。


 それは確かに心の中に住み着いている。そして、ずっと動きもなくじっとしている。だが、あの時は確かに動きがあった。


 それは目の前で雪姫が斬られて、助けた後の事だ。それは確かに現れた。「憎め」という一言だけ告げて。


 あの時の記憶はおぼろげだ。その後の目潰しがあまりにも記憶にこびりついていて、その時の記憶を邪魔をしている。たが、確かに覚えていることもある。


 あの黒く凶悪な篭手だ。それは自分の感情の一瞬の隙をついて現れた悪意が具現化したものだ。自分の体から溢れ出た黒いオーラが悪意の本流であろう。


 俺にいるもう一人のオレはついにやり方を変えてきたということであるのか。その事はオレという存在が現れない以上は証明のしようも無い。


 だが、わからないといって証明のためにあの悪意に近づくのは危険だ。それこそアイツの思う壷なのかもしれない。ともかく、アイツを下手に刺激しないことが最善であろう。


 おそらく、アイツが目覚めれば俺にでも止められない。


 クラウンは一旦その話題から離れると次は新たな神の使徒レグリアの能力と言葉について考え始めた。


 まず、初めにあのレグリアという神の使徒はあまりにも得体がしれない。ラズリが人間らしかっただけに余計に。


 レグリアは首を切り落としても、血すら流さずに平然と生きていた。そして、それとレグリアが見せてきた顔を見て思い当たる節がある。それは聖王国で戦った教皇のことである。


 あの時の教皇は首を切り落としたにもかかわらず血が出ていなかった。だが、あの時は動くことも無かったし、何より死んだことを示す気配が消えていた。


 ということは、あの時の教皇とレグリアは別人もしくはクローンか何かなのか。はたまた、魔法で作り出した何かなのか。


 一番濃厚な線は魔法による何かであろう。この世界について全てを知っているわけじゃない。当然知らないものの方が多いし、それにあいつは神の下僕だ。ラズリのような特別な何かがあってもおかしい話じゃない。


 だとすると、レグリアから読み取った異常な程の気配の数に対して答えが見つからなくなってしまう。まるで何人もの気配を一人に詰め込んだようなあれは化け物というに相応しいだろう。


「はあ......」


 クラウンは思わずため息を吐いた。現状でレグリア攻略のことを考えても仕方ないのかもしれない。そもそも、殺せるのかも怪しい。


 いや、神に作られたといえど、ラズリが斬れた以上は死ぬことの想定がつかないレグリアであってもきっと斬れるはずた。そう考えると殺しきれなかったラズリはあまりにも痛いところだ。


 あの時は自分が食らうダメージを考えずに突っ込んだ方が良かったのか? だが、もしそのように動いていれば、カムイより先に攻撃を食らって、最悪頭が吹っ飛んでいたかもしれない。


 そうなれば、話は復讐どころではない。死んでいるのだからその時点でゲームオーバー。自分の〈超回復〉も再生ではない。それに再生であっても、頭が飛ばされればひとたまりもないだろう。


 あの時の選択が正解だったかどうかはわからない。だが、ラズリが生きている以上はどのみちどこかで戦わなければいけないということだ。


 それも漫画やゲームの話であれば、前回よりも強くなって登場......正直、勘弁して欲しいところだ。今回でこの強さなら、次は本当に命が無くなる可能性だってあるのだから。


 とはいえ、向かってきたのなら殺すまで。その事だけは変わることの無い決定事項だ。


 そして、最後に気になるのはレグリアが言っていた「魔王の因子」という言葉だ。


 こればっかりは何も考えられる情報がない。おそらく、神の使徒がコソコソと動いて、企んでいるなにかであることは確かなのだろう。


 しかし、その企みで「魔王の因子」というのはどういう事なのだろうか。それもその言葉を自分に向けて言ってきた。まさか自分が魔王にでもなるとでも言うのか。


 いや、さすがにそれは考えすぎか。そもそも魔王は魔族の王であるということだ。魔族でない自分が魔王になることも、魔族そのものになることもない。


 なぜそう言いきれるかというと、人族と魔族では体の作りが若干違うのだ。魔族は魔法に特化したような肉体構造になっており、人族は接近戦に特化した肉体構造になっている。


 それに人族を魔族にする魔法はさすがにないだろう......いや、その考えは早計か。少なくとも、ラズリもレグリアも自分の知らない魔法を使っていた。


 となれば、魔法に問わず魔法に関する何かが出来ると思っていた方がいいだろう。それこそ、魔法陣のような何かが。


 だが、少なくとも魔王城近くの神殿に行くことはあっても、魔王城に攻め込むつもりは毛頭ない。そんな面倒なことを何故しなければいけないのか。


「まあ、わからないことにこれ以上割いていても無駄であろう。それよりも、迎えに来たリリスに聞いてみたいことがあったな」


 そう呟くとクラウンは上体を起こす。そして、扉の方へと視線を向けた。それは気配でこちらに向かってきているのに気づいていたからだ。


 すると、クラウンの読み通り扉がノックされた。そして、「入るわよ」という言葉を告げて、クラウンと顔を合わせていく。


「なによ、起きてるのね」


「入ってきてまずそれか。俺が入っていいか許可を出してからだろう」


「何を言ってるのかさっぱしね。あんたに許可をとる必要も無いと思っただけよ。あんたが寝ているのなら、それはそれでそっとしておいたわよ」


「......それだけか?」


 クラウンがそう聞くとリリスは顔を赤らめながら、少しずつクラウンから顔を逸らしていく。その態度で何を言わんとしているかは明らかだ。


「私はただ添い寝......ゴホンゴホン、そんなことよりも、カムイはだいぶ調子取り戻してきたわよ。まあ、あんなことがあれば当然よね」


「俺もちょうどその話が聞きたかったところだ。それにお前がそんな言い方するということは結局のところまだ愛想よく振りまいてるだけだろ?」


「妹愛が強すぎるからこそ、余計にメンタルに響いていると思うわ。正直、私は一人っ子だし、それに性別も違うから何ともね......安易な同情はかえって毒になると思うし」


「無闇に触れないのは懸命だな。だが、いつまでもあんな調子なのはさすがに周りに響く」


 クラウンはベッドから立ち上がるとリリスを通り過ぎて、扉のドアノブへと手をかける。


「どこ行くの?」


「あいつのところだ。少し話を聞きに行くだけだ」


「素直じゃないのは相変わらず」


 リリスはそう言いながらクラウンが部屋を出ていくのを見送った。

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