表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第6章 道化師は惑う

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

127/303

第127話 避けられない人物

ついに向かい合った二人


いつも読んで下さりありがとうございます(≧∇≦)

「あの......どうして人の姿が見えていないのに来ることがわかるんですか? それも何かの魔法なのでしょうか?」


「『気配察知』っていう周囲の動物の生命エネルギーを感知してどこにいるかを教えてくれる魔法だ。使えば使う程強化されて、知り合いなら位置すら把握できるようになるんだぜ」


「なるほど、魔力の型ですね。魔力は同じように見えても人によって違うとも言いますし」


「おっ! よく知っているな。いや、一国の姫様にとっては常識問題だったか?」


「いいえ、そんなことありませんよ。その事を知った日が近くてたまたま覚えていただけですよ。こう見えても物覚えはいい方なので......数日でどうしてこうなってしまうんでしょうね」


 シュリエールは思わず暗い顔をした。その表情は穏やかだった日常から一転して絶望にも似た落差を感じる表情であった。そんな顔をするシュリエールに先ほどまで話していたカムイは思わず頭を抱える。


 そして、どう言っていいやればいいかわからない表情をしていた。それは自分と同じような境遇であるが故に。


 カムイは自国にいない時にその国が襲撃され、親友が殺され、妹が攫われたという情報を島を渡ってきた同胞から聞いた。そして、その時の自分と同じ顔をシュリエールはしているのだ。


 あの時は時間が解決してくれた。だが、シュリエールの場合は事が起きてからまだ日が浅い。むしろ、よく耐えれていると思うぐらいだ。


 とはいえ、カムイ自身は自分より年下のそれも少女にそんな不安な顔はして欲しくないと思っている。なので、昔妹にやってみせたようにシュリエールの頭に手を乗せ、ゆっくりと撫でていく。


 その突然の行動にシュリエールは思わず目を見開く。しかし、同時に嬉しそうな顔をしてやや熱っぽい視線を送ってしまう。その不器用とも言える優しさが心に染みたのだ。


 するとここ、クラウンはシュリエールに話しかける。


「シュリエール、お前はいつから雪姫と関わりがあるんだ?」


「そうですね......聖王国で襲撃があったことをご存知でしたら、その日に関わったのです。その日は私が是非とも勇者様達にお会いしたいと思って、父様に組んでもらった催しでして......あの日がなければ今はないんでしょうね」


「......そうか」


 シュリエールは複雑な表情で俯いた。それはなんとも狂った運命での関わりだと思ったからだ。


 あの襲撃は聖王国の聖騎士の人によって迅速に安全な場所まで案内されたから良かったものの、少しでも違ったら死んでいた可能性もあるからだ。


 そう思うとあの日は行かなかったことが正解だったかと思うかもしれない。しかし、あの時に雪姫と出会ってなければ、たとえ同じようなこの地で会ったとしても、操られた人と認識して意図的に避けていたかもしれない。


 なぜなら、雪姫と出会った時がたまたま少し遠くで見かけただけの事だったから。


 そして、現在も追いかけてくる女兵士から逃げられているのも、逃がしてくれた雪姫の存在があったからこそ。


 あの日に怖い目に遭わなければ、後々に他の市民同様に操られていた可能性だってあるわけだし、逆に言えば遭ったからこそこうして無事でいられている。


 なんとも恨むに恨みきれない運命である。こんなことになるなんて誰が予想出来ようか。


 そんなこと考えているとシュリエールは突然頭を何かにぶつけた。その何かは立ち止まったクラウンの背中であった。


 そして、路地から通りに出るところで立ち止まっているので、シュリエールは怪訝に思ってその顔を覗いてみるとクラウンが何かに耐えるような表情をしている事に気づいた。


 シュリエールは思わずその通りに顔だけ前に乗り出して周囲を確認してみる。だが、その周囲には雪姫の姿は見えない。もしかしたら、気配で捉えているのかもしれない。


 すると、クラウンは拳を握りしめると「行くぞ」とだけ告げて通りへと出ていく。


 それから、その通りを少し進んだところで再び路地へと入っていく。それから、路地裏に向かって奥へと突き進むことしばらく、クラウンはまたしても突然立ち止まった。


 そして、真っ直ぐと続いている道を眺め続けている。その道をカムイとシュリエールも同じして眺める。すると、その道へと五人の人物が現れた。


 それは当然リリス、ベル、エキドナ、朱里、そして――――雪姫である。


 リリスはクラウンの存在に気づくと「やっぱいるわよね」と思いつつも、すぐに声をかけようとする。


 だが、クラウンの険しいような顔を見て思わず思いとどまった。そして、クラウンに向けていた視線を雪姫へと移していく。


 雪姫もまたどこか罪悪感に駆られたような暗い顔をして俯いている。雪姫へと向けているクラウンの視線から逃げるように。


「雪姫なら大丈夫」


「!......そうだね」


 だがすぐに、雪姫の手へと朱里の手が重なる。そして、朱里は穏やかな表情で雪姫へと言ってのける。そんな朱里に雪姫は少しだけ不安が除かれたような顔で返答した。


 それから、雪姫は軽く深呼吸すると一歩、また一歩とゆっくりと足を進めていく。


 不安、恐怖、緊張、その他の様々な感情を一緒くたにしながらも、勇気を持って少しずつクラウンへと歩み寄っていく。


 そして、少しだけ遠くの距離で雪姫はクラウンへと声をかける。


「仁......だよね?」


「ああ、そうだ。また会うことになったな」


「私は会えて嬉しいよ。ずっと......ずっと会いたいと願っていたからね。その願いが叶ったんだから。仁も元気で、無事で本当に......良かった」


「!」


 雪姫は思わず顔をくしゃくしゃにするように泣き始めた。そして、滝のように溢れ出る涙は顎から滴り、地面へと雨のように降り注いでいく。


 それから、ついに手に持った杖を地面へと落として顔を両手で多いながら、しゃがみ込んだ。その姿から聞こえるのは「よ"か"っ"た"」と繰り返し言っている言葉のみ。


 そんな雪姫の様子にクラウンは驚きと混乱が同時に襲ってきた。それは一体どの雪姫が本物なのか分からなくなってきたからだ。


 本物なのは自分を処刑へと追いやった冷酷な言動をした雪姫なのか、それとも今目の前で泣きじゃくっている雪姫なのか。


 だが、一番知っているのは後者の雪姫の方だ。だからこそ、聞いてみたいこともある。


「雪姫......お前は俺を憎んではいないのか? あの夜に俺は憎しみのままにお前を全力で拒絶した。そのことをお前自身が一番理解しているはずだ。なのに、どうしてそんなに泣くんだ?」


「......当たり前だからだよ」


 雪姫は涙を拭うと杖を持って立ち上がる。そして、更にクラウンとの距離を詰めていく。


 その行動にクラウンは思わず後ずさりしそうになる。だが、気持ちで踏みとどまってその場で雪姫が歩いてくるのを待った。


「私にとって仁が一緒にいて、無事であることは当たり前なんだよ。だから、たとえ仁が私を拒絶しようとも、私が拒絶しないのも当たり前」


「......」


「泣いてしまうのは嬉しいからだよ。嬉し泣き。それは仁とたとえこういう風にでも再会出来たことが嬉しいんだよ。生きているっていう何よりの証明になるしね」


「わからない。俺はお前がわからない。雪姫、お前は何者なんだ? どうしてそんなことを今になって言うんだ。その言葉を俺が求めていた時はもっと前だったはずだ!」


 クラウンは思わず声を荒らげる。両拳は強く握られており、クラウンの顔は混乱しているようにも見えた。


 太陽はやがて天辺まで昇っていくと隙間なく周囲に光を届けていく。それは路地裏とて例外ではなく、まるでクラウンと雪姫にスポットライトを当てるかのように二人だけを照らしていく。


「わかってるよ。その言葉は私自身が一番わかってるの......」


「!」


「でも、嬉しさの方がどうしても込み上げてくるの。もう私には止められようもないの。けど、もちろん、あの時にしたことをそのままにしておくことはしない。それは仁にタダで許されようとしているのと同じだから」


「本当に......どっちなんだ......」


 クラウンは苦悩した。あの時に感じた雪姫の印象と今の雪姫の印象はあまりにもかけ離れている。体が瓜二つの別人であると言われた方がとてもしっくりとくるぐらいだ。


 だが、幼馴染であった自分だからこそ分かる。この雪姫へとは本物であるということに。だからこそ、整理がつかない。するとその時、雪姫のセリフが脳内へと再生された。


『仁、私は仁のことを信じていたのに......こんな事しないって。でも、仁は違うんだね。どこから間違っちゃったんだろうね』


 今の雪姫とは似ても似つかない突き放すようなセリフ。その言葉を冷たく、平然と押し付けられた。その時の雪姫は酷く冷たい目をしていた。


「仁、少しでいい。少しでいいから、私の話を聞いて......お願い」


「!」


 すると、クラウンの頬に冷えたような何を感じた。それは雪姫の手であった。その冷たい手はクラウンの動揺した思考を一時的に止めてみせた。


 それによって、クラウンの視界は少しずつクリアになっていく。そして、気づけば赤く泣き腫らした雪姫の顔がすぐ近くへとあった。


「仁、私は先に誓うよ。もう仁を見捨てたりなんかしない。裏切ったりなんかしない。その事だけを信じて。私の信用は私自身が積み上げていくから」


「......」


「私はね。今も後悔してとても苦しいよ。でも、それは自業自得だから仕方ないとわかってる」


「何が......言いたいんだ?」


「私は仁との縁を切りたくないということだよ。最後に会った時、仁は私との縁を切ったと言ったけど、どうか少しでもいいから思いとどまって欲しいの。その縁は私が責任をもって修復していくから」


 クラウンは思わず押し黙る。それに対する回答が見つからなかったからだ。前までならすぐに拒絶したであろうが、今は存外そうは思わない。


 それは感情に振り回されていないせいなのか、それとも自分の心が変わってきたせいなのか。それとも、そのどちらとも違うのか。


「だから、言わせて欲しいの......仁、本当にごめんなさい。そして、ここで仁を支えると誓います」

互いにドロッドロに心中複雑なんでしょうね


新作を投稿しました。良かったら読んでみてください!(≧∇≦)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ