第120話 生み出されし戦闘狂
キレッキレです(2回目)
読んで下さりありがとうございます(≧∇≦)
朱里はわけがわからなかった。ふと目の前を向けば、銃口を向けたクラウンがいて、そして―――――――撃たれた。
わけがわからなかったのは朱里に限った話ではない。その周囲にいるリリスも、カムイも突然のクラウンの行動に理解が追いついていなかった。
朱里は額に打ち込まれた魔力によって吹っ飛んでいく。そして、無反応のまま背中から地面へと倒れていった。
それから、ピクリとも動かない朱里の様子にリリスは焦ったように告げる。
「く、クラウン!? あんた、何してんのよ!? 朱里とは和解したんじゃなかったの!?」
「まだ和解はしてない。ことを荒立てないように収めただけだ。それに安心しろ。橘はまだ死んではいない。というか、殺すはずもないだろう。今までの行動が全て無駄になる」
「なら、何をしたっていうんだ?」
「これは言霊魔法という特別な魔法が付与された銃だ。そして、その魔法は自身が念じた言葉も魔力として射出出来るとリゼリアが言っていた。なら、感情だって同じだろう。だから、俺は自身の持つ感情を言語化して与えてやった」
「ねぇ、それってまさか......」
リリスはその言葉を聞いた瞬間、思わず嫌な予感がした。ようやくクラウンの本質が見えて来たと思えば、どうやら変わってしまった部分もそう簡単には変わりきらないらしい。
「ああ、そのまさかだ」
朱里はむくりと上体を起こしていく。まるでゾンビが蘇るように腕や首をだらんとさせながら、胸を張って。
そして、その状態のままだらんと顎を大きく上に向け、気持ち悪く立ち上がっていく。片手に一つの銃を持ちながら。
その異様な光景にリリスとカムイは冷汗をかき始めた。すると、クラウンは手に持っているもう一つの銃を渡していく。
朱里はそれを空いている手でキャッチするとそれぞれの手の指を引き金に合わせた。その時、クラウンは言葉を告げる。
「凶気だ。俺のとっておきの一品のな」
「あひゃひゃひゃひゃひゃ!」
「「!」」
朱里は天を仰いで狂ったように笑いだす。その目は完全に気が狂っている様子を物語っている。そして、両腕を左右に伸ばすとその状態のまま引き金を引いた。
その銃口から射出された魔法は両端にいた魔物の頭を的確に射抜いていく。それから、そのまま背後の魔物を十数体ごと蹴散らしていく。
「気分はどうだ?」
「最っ高!」
「殺れそうか?」
「当たり前」
「なら、お前のすべきことは?」
「皆殺し!!」
朱里は狂った笑いをしながらクラウンの横を通り抜けていく。そして、両手を前に向けると二つの銃口から風の魔法を放っていく。
すると、その風の弾丸はまさに銃弾のような形をしながら、螺旋状に気流を作っていく。それから、大気を切り裂きながら、二体の魔物をヘッドショットしていく。
そして、そのまま二体の魔物に近づくとその頭を踏み台にしていく。その勢いでバク宙すると背後から襲ってきた魔物に風穴を作っていく。
朱里はその地面に上手く着地するとすぐに横へ転がっていく。すると、朱里が着地した位置には突然氷の柱が出現した。
「当たるかよ!」
朱里は三白眼のような瞳で空中にいる魔物を見る。そして、すぐにお返しとばかりに氷の銃弾で頭を打ち抜いていく。
またもう片方の手では銃を脇の下から通して後方に撃ち込んだ。それから、背後に向かって後ろ回し蹴りで吹き飛ばす。
横から爪を出してきた魔物には半身で避け、その腕を両腕で掴む。そして、一本背負いで地面に叩きつけると頭に銃口突きつけて、引き金を引いた。
「あひゃひゃひゃひゃ! もっともっとかかってこいよ! 私を怒りと怨嗟で呪い殺してみろよ! 私はそんなのじゃ死なな......い......」
朱里は頭の中がスッキリするように凶気で出来た曇りが晴れていく。簡単に言えば、言霊魔法の効果が切れたのだ。
その効果は持って数十秒。それは人によって個人差がある。そして、朱里が効果が切れたタイミングはまだ多くの魔物が周囲を囲んでいる(空中にもいる)状況。
朱里はそのことに目を白黒させた。同時に複雑な気持ちにもなった。
それは先ほどの人格が変わったとしか思えない行動。その記憶がしっかりと残っているのだ。そして、素に戻れば今にも食い散らかしそうな魔物がうようよいる。
朱里は咄嗟に思考した。今打開できる最適解を。一番いいのは全体を一斉排除することだが、そんな魔法はなく、それができる魔道具もない。
「なら、もうあれしかないのか.....」と朱里は思わず苦悩する。しかし、もう時間はない。一体の魔物が前に出たのを皮切りに周囲の魔物が動き始めた。
「もうなるようになれ!」
朱里は考えた末、最も取りたくない行動に出た。それは自身のこめかみに銃口を突き付け、引き金を引くということ。
そして、脳内でイメージするは先ほどの狂った人格―――――すなわち、凶気。
「あひゃひゃひゃ! 脳汁溢れ出るー! テンション、アガッてきたー!」
朱里は再び天を仰ぎながら狂った笑いをした。そして、今にも襲いかかってくる魔物を最小限の動きで近い魔物から撃ち殺していく。
そして、一体の大きな魔物の上に乗るとクルっと一回転。背後の空中にいる魔物を撃ち落とした。それから、バク宙しながら地面の敵を撃っていく。
「かかってこいよ!」
朱里はクラウンさながらの不敵な笑みを浮かべるとすぐに構えていく。二丁魔力銃でありながら、近距離戦闘もこなしていく、言わばガンカタの構えだ。
それを朱里は自然と行っている。まるで最初から知っていたかのように。
朱里は両腕を伸ばすと目の前の敵を撃ち殺す。そして、腕を開きながら両端の魔物も撃っていく。さらには、腕を組むように交らわせるとそれぞれ脇の下から背後の魔物を撃っていく。
「......チッ。全然アガり足りねぇ......とそうだ!」
何かを閃いた朱里は周りを見回しながら、魔物を撃ち殺しながら、あるものを探していく。
そう、それは―――――――
「こんな屈強なエルフ、やっぱ聞いてねぇぞ!」
「つべこべ言うんじゃないわよ! クソ、面倒ね!」
二人の男女の魔族だ。「いちいち魔物を相手するよりもその主を倒せば手っ取り早く終わるんじゃないか?」と考えた朱里は狂気的な目を二人に向ける。
そして、女の魔族へと標準を合わせると躊躇いもなく引き金を引いた。すると、その銃口から射出された雷の弾丸はまるでレールガンの如く高速で飛んでいく。
そして、その弾丸は女の背後から頭を撃ち抜いた。女は何が起こったのかもわからないまま、前のめりに倒れていく。
その光景を目の端を捉えていた男の魔族は咄嗟に背後を振り返った。するとそこには、不敵な笑みをかべている朱里の姿が。
「このクソ女がああああ!」
「あはは」
男は片手に持った剣を上段に構えながら、もう片方の手で魔法を連続で炎の魔法を放って近づいていく。
しかし、朱里は的確にその魔法を氷の弾丸で相殺させていく。そしてさらに、一歩ずつ歩みを進ませながら。
そのことにさらに怒りを感じた男は額に青筋を浮かべながら、力任せに剣を振るった。その攻撃を朱里は左手の銃で剣の腹を叩いて弾く。それからすぐに、右手の銃で右腕を撃ち抜いた。
「あがっ!」
そしてさらに、素早く戻した左手の銃で左手を撃ち抜いていく。そのことに男は思わず痛みの声を上げながら、後ろへと後ずさる。
「!」
だが、咄嗟に右手を朱里へ向けた。その時、朱里と目が合った。その瞬間、男は身が縮こまるような冷たい恐怖に襲われた。
それは男を見ていた朱里の目。その目はまるで路傍の石を見るかのように感情のない目であったからだ。
「ぐふっ!」
その瞬間、男は朱里に腹を蹴飛ばされて、地面の上に寝転がった。するとすぐに、朱里に両肩を足で踏みつけられながら乗られる。
そして、銃口を顔面へと向けた。
「ま、待て! わかった! すぐに撤退するから、命だけは生かしてくれ!」
「なにそのつまらない回答は? 襲ったんだから、襲われる覚悟もあるんでしょ? 殺そうとしたから、殺そうとされるんでしょ? 命乞いとか無様すぎるんだけど」
「くっ......この......」
男は怒りで顔を歪ませながらも、その感情を堪えていく。今はまだその時でないように。
「俺の仲間は俺を含めて三人だ。そして、見た限りだと生き残っているのは俺一人。そして、この魔物達は俺達の指示で動いていた。だから、ここで俺を殺せば、統率がなくなって散り散りにどっか行くぞ」
「う~ん。それは面倒だね。せめて目に見える範囲の魔物は全て殺しておきたいな~」
「だろ? でも、俺を見逃してくれれば、もうこれ以上戦う必要も無く、さらに魔物は全てこの森から撤退していく。どうだ?」
「う~ん」
朱里は思わず男から目を離して、右手の銃を顎につけながら考える。その瞬間、男はニヤリとした。
そして、片足を大きく振り上げるとそのつま先から紫色の液体がついた刃が飛び出した。それから、そのまま朱里の背中を襲っていく。
「でも――――――」
「あああああ!」
「私は戦いたいしー。それに、逃げられる前に魔物を殺せば結果変わらないから却下」
朱里は左手の銃で素早く男の両足を撃ち抜いていく。それによって、男は思わず痛みに叫び暴れた。
しかし、不思議と朱里の体は石像の如く微動だにしない。というか、なぜか重く感じる。
すると、そのことに朱里は答えた。
「良かったー。念のため重くなるように言霊も撃ち込んでおいて。どう? 痛くても動けないでしょ?」
「~~~~~!」
そう言った朱里の右手の銃は自身の横っ腹へと突きつけられている。男が別のことに意識を取られているのを見抜いていたのだろう。
そして、朱里は不敵な笑みで男を見るが、すぐにがっかりしたような表情をする。
「あーあー、怯えてもう声も出ないか。なら――――――バイバイ」
そして、朱里は男の額に風の弾丸を撃ち込んだ。
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その光景を遠くから見ていたクラウン、リリス、カムイ。その内リリスとカムイは頬をヒクヒクとさせていた。
そして、リリスは思わず尋ねる。
「ねえ、クラウン。まさかメンタルを鍛えたのってこうするためじゃないわよね?」
「...............違う」
「間がなげぇぞ」
リリスとカムイは頭を抱えた。目の前で高笑いする朱里の姿はまさしく戦闘狂であったからだ。
クラス バーサーカー 朱里




