第117話 亡者の楽園 クレイロータス#4
キレッキレです
読んで下さりありがとうございます(≧∇≦)
空中で立っているクラウンが見据える天井には張り付いているカメレオンがいる。そのカメレオンは全長30メートルぐらいあり、目をギョロっと左右違う方向を見渡している。
「クラウン、助かったわ。そうよね。あ、あれが現実なわけないわよね......はあ」
「そうね。やっぱり、ヤるなら現実よね。夢は所詮、夢。捕らわれすぎた夢は身を亡ぼすってことね。夢は掴んでなんぼだもの。ただまあ、残念であることには変わりないわね」
「たくさんの主様の筋肉に囲まれていたのに......」
「ルナがせっかくデレてくれたのに......」
「はいはい、気持ちを切り替えなさい。実現した方が何倍も嬉しいはずよ」
リリスは(自分のことを棚に上げて)切り替えを促すように2回手を叩く。すると、その言葉に渋々納得したベルとカムイはその夢が壊れた憎しみをぶつけるようにカメレオンを見た。
「リリス、引き離せ」
「了解よ」
クラウンが支持するとリリスは超重力をカメレオンの場所に発生させた。その重力に耐えかねたカメレオンは地面へと叩き落される。
そこへクラウンが真下へ落ちるように空中を蹴り、抜いた刀を突きの体勢で構えた。そして、カメレオンの胴体に着地するとともに突き刺した。
「ギシャアアアア!」
「あれほどの夢を見させてもらえたのだもの。今度は私が夢を見させてあげるわ。永遠に覚めることのない夢の中へね」
エキドナは竜化(闘)へと変化するとカメレオンに近づいていく。そして、胴体を拳で殴り上げる。
すると、先回りして空中に待機していたロキが一瞬でトップスピードになりながら、そのカメレオンに突っ込んでいく。
そして、そのままタックル。すると、ロキが衝突した部分から曲がっていくようにカメレオンの胴体は変形していく。
それから、カメレオンが吹き飛ばされた先にはベルが待ち構えていた。ベルは手に短剣を持たず、左手を前に突き出して、右手を軽く引いている。
「獣牙流牛の型――――――――壊塊」
「ギジャア"ッ!」
カメレオンは吹き飛ばされながらも、体勢を立て直すと胴体を丸めていく。そして、勢いよく回転しながら、尻尾をベルに叩きつけた。
その攻撃に対して、ベルは冷静に見極めながら、左手で尻尾をいなしていく。また同時に手を掌底の形にしながら、手のひらを上に向けた。
そして、その手でカメレオンを打ち上げる。その瞬間、カメレオンは胴体を揺さぶられるようにしながら、天井付近まで飛んでいき、死に体になった。
「行くぜ。天元鬼人流――――――――紅蓮大刀」
カメレオンの丁度真下辺りにいたカムイは両手で持った刀を頭上に掲げた。すると、その刀身から炎が溢れ出してくる。
その炎は真っ直ぐ天井に向かって伸びていくとその形を巨大な刀身へと姿を変えた。炎の熱波は空間全てに熱を伝えていく。
そして、カムイはその刀を死に体のカメレオンへと振り下ろした。その攻撃を危険だと判断したカメレオンは舌を横の壁に向かって咄嗟に飛ばした。
それから、その粘着質な舌先を壁につけると自身の体を引き寄せさせた。その行動によって、カメレオンは攻撃から逃れることが出来たが、尻尾は切り落とされた。
すると、カムイの刀は地面に着いた瞬間、一気に炎の壁を作り出すように燃え盛る。その炎によって、カメレオンの尻尾は焼けて消滅していく。
「あぶねぇから消しておくぜ」
カムイは刀をサッと振るうと先ほどの炎の壁はまるで最初からなかったかのように沈下した。
「ギシャアアア!」
カメレオンは横の壁に這いつくばるとクラウン達を威圧すように叫び声をあげる。またすぐにキラキラとした紫色の煙を吐き始めた。
その煙はやがてカメレオン自身の姿を隠し、煙が晴れた頃にはカメレオンの姿はそこにはなかった。
クラウンはすぐに<気配察知>で周囲を探るが反応はない。何らかの認識阻害の魔法でも受けているのかもしれない。
また起こった変化はそれだけでは無かった。地上にいる全員の目の前に集合してきた煙が人の形をして現れたのだ。
その姿を見て全員が目を見開いた。なぜなら、その人物は各々が関係する人物であったからだ。
一人は黒髪でやや幼さが残るイケメンの男、一人は妖艶な雰囲気を醸し出す女、一人は優しさが滲み出てくる老剣士の男。
また、一人はまだ小学生ぐらいの水色の髪をした少年、一人は額から2本の角を生やした青髪の男、そして2匹の黒いオオカミ。
その人物はクラウン、リリス、ベル、エキドナ、カムイ、ロキのそれぞれに関わる重要人物であった。
つまりはクラウンの親友であり、リリスの母親であり、ベルの祖父であり、エキドナの息子であり、カムイの親友であり、ロキの生まれの両親である。
そして、それらは無言でわかりきったようにそれぞれに向かって襲いかかってくる。そのことに全員が歯噛みした。
「クソがああああああああああ!」
『狂気度が 10 上がりました。現在の狂気度レベル 75 』
クラウンは思わず叫んだ。どこまで人の記憶でおちょくれば気が済むのだと。そのせいでクラウンの僅かに開いた蓋はさらにその開きを大きくした。
そのため、クラウンからは禍々しい殺気が漏れ出てくる。しかし、そんなことを気にすることもなく、響の幻影は剣を振るってきた。
クラウンは咄嗟にその剣を受け流す。すると、刀から触れた感触と重みを感じた。ということは、これはただの幻影ではないということ。
「消えろ」
クラウンは剣を流した隙を突いて、一気に切り上げた。すると、響の幻影は霧散していく。だが、一定の距離で再び復活した。
つまり相手は無敵の存在。一方的に攻撃でき、消すことは出来ない。消すためには本体を潰すしかないということ。
「どこだ!」
クラウンは気配で周囲を探っていく。しかし、すぐに憎悪で目の前が真っ暗になるように思考が闇に沈んで集中できない。
その間にも響の幻影は容赦なく襲いかかってくる。その幻影は剣を振り下ろすと斬撃を放ってきた。
その斬撃を刀で振り払いながら、自ら剣戟へと持っていく。その方が無駄な動きをしなくて済むので、体力と魔力ともに温存できるのだ。
周囲ではリリス達がそれぞれの大切な人達と苦しそうな顔で戦っている。それがたとえ幻影であっても辛いのだ。
ともに思い出を共有してきた人達だから。
それに攻撃したとしても意味はないし、大切な人を傷つけているということで心がすり減っていく。この状況が長引けば、心が折れる可能性だってある。
クラウンはそのことに関しても歯噛みしていた。すると、背後から鋭い殺気を感じた。なので、咄嗟に半身で避けると透明な何かが、クラウンの横を通り過ぎながら響の胴体を貫通した。
その光景を見てクラウンは思わず刀を握りしめる。そして、眉間にはさらにしわが寄り、目つきは増々鋭くなっていく。
「逃すか!」
クラウンは咄嗟にその透明な何かを掴んだ。すると、さらに巨大な何かが自分に向かって飛んでくる。
知っている。その何かはカメレオンだと。おそらく擬態のような能力を使っているのだろう。それもほぼ透明に近い。
だが、僅かに空間が歪んでいる。それさえ見えてしまえば、もう見失うことない。いや、もう逃さない。
「おらああああ!」
「ギジャアア!」
クラウンはタイミングを合わせると右足で蹴り上げた。すると、その衝撃で擬態が取れたカメレオンは舌を掴まれたまま、真上に飛んでいく。
「リリス!」
「あんただけは絶対に許さない! 嬲るなんて言わない! すぐに蹴り殺す!」
般若のような顔をしたリリスは、クラウンに振り下ろされたカメレオンを脚部に重力を纏わせながら、重い一撃を加えていく。
「ベル!」
「抉りキルです!」
リリスの一撃とクラウンの遠心力で勢いを増したカメレオンはベルへと迫っていく。すると、ベルは短剣を持ちながら、待ち構えた。
そして、短剣を突き出してカメレオンを受け止めるとそのまま抉るように切りながら、回転してきた方向に流していく。
「エキドナ!」
「殺すわ!」
目つきを鋭くして激しい威圧感を放つほどにガチギレしているエキドナは爪を立てるように手を構える。
そして、下から上へと抉り削るように思いっきり振るった。その瞬間、カメレオンの胴体は丁度エキドナの手の大きさほどに肉が消えている。
「カムイ!」
「俺にとって友がどれだけ傷つけられることが屈辱的なことか知ってるか? 知らないなら、教えてやるよ。その身をもってなあああああ!」
カムイは顔に青筋を走らせると右手にもった刀を大炎上させた。そして、叫び声のまま巨大な炎の斬撃を飛ばしていく。
クラウンはその斬撃に合わせて再びカメレオンをぶつけるように振り下ろした。そして、直撃した瞬間、カメレオンは全身を炎で包まれていく。
「ロキ!」
「ウォン!(殺す!)」
クラウンはその斬撃に負けないように振り下ろすと地面へと叩きつける。そこへ喉を唸らせるロキが<斬翔>で多数の巨大な斬撃を衝突させていく。
「ロキ、俺の分も残しておけよ?」
そう言ったクラウンは一度刀を鞘へとしまった。そして、ゆっくりと近づいていく。だが、その一歩一歩はまるで大気の震えを感じさせるように重々しかった。
目の前に燃えているカメレオンがいるというのにも関わらず、この空間は極寒のように冷え冷えとしていた。
そして、カメレオンの前に立つと右手を柄に触れて、軽く構える。
「塵一つ残さず死ね」
クラウンは抜刀して僅かに刀を左右へと動かすと鞘へと収めた。その時間は2秒とない。だが、それだけで十分だった。
刀がカチンと音を空間に響かせた瞬間、カメレオンの胴体は音もなく塵となり、その塵は炎で消えて亡くなった。
またカメレオンの胴体が消えたと同時に少し遠くの位置の地面から芽が生えてくる。そして、その芽はすぐに急成長していき、1本の極太な蔦になった。
そして、その蔦は天井を貫通している。どこまで続いているかはわからない。だが、おそらくはオーブがある位置だろう。
その光景を見て全員が疲れたようにため息を吐いた。
良かったら作品の表情、ブックマークお願いします(≧∇≦)




