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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第5章 道化師は憎む

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第111話 朱里の決意

どこもそこもグラグラグラグラ~


読んでくださりありがとうございます(*^-^*)

 時間は深夜近くといった頃、夜空が見える少し開けた場所では女子会を終えたリリス、ベル、エキドナの三人が座っていた。


 その場には朱里はおらず、リリス達の計らいによってエルフ内では客人として扱われているため、空き家の一室でロキとともに眠っている。


 リリスは食事の際に聞いた朱里の過去を振り返っていた。


 というのも、リリスがあの時過去のことを聞いたのは、朱里の寝言を聞いていたからだ。もっと言えば、朱里が寝言を言うように魔法で操作したのだが。


 そして、その当時の朱里が言ったであろう言葉を寝言で聞いていたので、それをより詳細に聞こうと思ったのだ。


 それでいざ聞いてみれば......内容は実に生々しいものであった。ただ過去であったことを言葉にして聞いていただけなのに、まるでその場にいるような空気にさせられた。


 それだけ、壮絶な話だったということなのだろう。人が変わったかのような朱里ともうその時から人でないだろう教皇、無力で弱い存在のクラウン。


 まるでその場に自分がいないことが悔やまれるようだった。自分がその場にいれば変わっていたかもしれない。


 しかし、所詮は仮の話だ。その当時に戻れるわけではないし、戻ったからといって本当に変えられるかもわからない。


 朱里が変わったのはおそらく教皇が何かしたからなのだろう。しかし、朱里の話からだけでは何をしたかはわからない。


 そして、それを知っている張本人はクラウンに殺された。だが、クラウンはその教皇だった者はどこかで生きていると言っていた。


 全く頭がこんがらがることばかりだ。クラウンの過去には触れられたけれど、朱里が話し終えた様子からはまだ何かがありそうだ。


 しかし、朱里はそのことを話したがらない。いや、もしくは覚えてないのかもしれない。それは体がその記憶を思い出さないようにしているのか、それともそもそも記憶に残っていないのか。


 あくまで朱里の出来事はクラウンが陥れられた絶望の始まりにしか過ぎないということだろう。その状態でクラウンと正面から向き合うのはまだ危険だ。


 リリスは思わず頭を抱えた。これでどうやってクラウンを説得すればいいのだろうか。少なくとも余計なことが発展するような気しかしない。


 すると、そんなリリスにエキドナが声をかける。


「そんなに考えこんじゃだめよ。私達がクラウンを何とかしようとしているのに、その前にクラウンの過去のことで潰れてしまったら元も子もないじゃない」


「わかってる、わかってるけど......どうして声をかけたらいいかわからないのよ。久々よ、こんなことで悩むなんてね」


「それだけ主様のことを愛してるです。そうでなければ、そんなに苦悩することはないです。もっと誇っていいことです」


「ベルからそんな言葉を聞く日が来るなんてね。それに、愛してるとかそんなこっぱずかしいことをね」


「ふふっ、ベルちゃんには清らかな言葉から床の上での嬌声まで教え込んであるからね。ベルちゃんは本を読む機会が多かったから、呑み込みが早くて助かったのよ」


「絶対いらない言葉が8割でしょうが。けどまあ、私が無意識に考えるということはそうなんでしょうね。全く、サキュバスが聞いて呆れるわね」


「ふふっ、愛に形はないものよ。誰が誰を好きになろうと、愛そうとそれはその人の自由。本来、縛ること方がおかしいのよ。だから、もっと素直になりなさい。今この場で愛を語ろうとバカにするものはいないわよ」


「......そうね。確かに私は私だものね。でも、愛を語る気なんてないわよ。恥ずかしい」


「あら、残念」


 エキドナはリリスの反応を見ると笑った。すると、隣にいるベルも頬を柔らかくしフワリフワリと尻尾を揺らしていく。


 そんな二人を見てリリスも思わず口角を上げてしまう。そうだった。一人で考えるのもバカらしいほど、今は大切な仲間がいるではないか。


 もっと頼っていいのだ。二人もなんとなく頼られたそうにしてるし。そう考えると自然と力が入っていた肩も楽になってくる。


 すると、エキドナがリリスへと声をかけてきた。


「そういえば、あんな言い方で良かったの? 私達はせっかく朱里ちゃんから旦那様の過去の一端に触れたわけだけど」


「仕方ないじゃない。自分の本音を私達伝手で言ったとして、それがクラウンの心に伝わるはずないじゃない。直接言えない時点で、クラウンから見れば弱者と見なされてもおかしくないわ。そして、弱者はクラウンがもっとも嫌う者よ。何が起こってもおかしくない」


 リリスは横になった。そして、額に右手首を乗せながら、夜空の星々を眺めていく。それから、左手でその星を掴むかのように宙に浮かした。


「朱里自身が変わらないとダメなのよ。恐怖を受け入れる勇気をね。人のことを言える立場かどうかはわからないけど」


**********************************************

 太陽の光が木々の葉を輝かしく照らしていく。そして、マイナスイオンとでも言うべき涼しさがこの森を包んでいく。


 そんな翌朝、朱里は木に寄り掛かりながら、木陰で座っていた。そして、ただぼんやりと少し遠くに見える集落を眺めている。


 というのも、今は見ることに集中していないからだ。考えることは一つ。昨日リリスに言われた言葉に関してだ。


 自分はどこかのタイミングで海堂君に雪姫の捜索をお願いしなければならない。しかし、それが非常に怖いのだ。


 本来ならあの時のお願いは海堂君への説得の込みの内容だった。だが、自分の急いだミスによって違う形に捉えられ、最悪の結果となった。


 正直、どうやって声をかけたらいいのかわからない。なぜなら、「次に会ったら殺す」的なことを言われたのだ。


 そして、大親友の光坂君とも殺し合いを始めるほどに変わってしまった仁を自分がどうやって説得できるというのだろうか。


 考えても考えても迷走は止まらない。何か考えを浮かべては否定し、浮かべては否定する。海堂君の気持ちを考えたら、どうしても受け入れてくれるようには思えないのだ。


 朱里はスッと三角座りをする。そして、その膝に顔をうずめてため息を吐いた。


 頼れる人がいない。一番の友達もどこかへ消えてしまった。もう心が疲れてきているのが、自分でもハッキリとわかる。


 誰か、誰でもいいから話し相手になって欲しい。


 するとその時、朱里に声をかける人物がいた。


「ん? お前さん、こんな所で一人でうずくまって何してんだ?」


「え?......あ、その考え事を少し......それで確かカムイさん? でしたよね。私に何か用があるんですか?」


「いーや特に。だがまあ、そんな恰好してるところを見てしまえば、声をかけるのが普通ってもんだろ。というか、よく俺の名前を知ってたな」


 カムイはそう言いながら、自然と朱里の隣へと座る。そして、気さくに笑みを見せる。すると、その表情に朱里は思わず顔を赤くさせた。


 なので、朱里はその表情が見られないように顔を合わせないようにした。するとしばらくして、隣からいい匂いがしてくる。


 そして、朱里は思わず見てみる。すると、カムイが草団子のようなものを美味しそうに食べている光景が目に入った。


「ん? 食いたいのか? いいぞ」


「え、いや......その......頂きます」


 朱里はカムイから草団子を一つ貰うとそれを口に運んだ。よもぎのような味に、甘く口に広がていく餡。それが頬が落ちるように美味かった。


 すると、カムイが横から「美味いだろ?」と笑みを浮かべながら言ってくる。そのチャラチャラし過ぎず、気さくな感じでお兄さん的な印象は朱里にやや深めに刺さった。


 なので、朱里は熱を帯びる頬に対して深く考えないようにした。とはいえ、相変わらず顔は逸らし気味だが。


 そしてまたしばらくすると、カムイは朱里へと話しかける。


「それで? リリス達に何か言われたんだろ? わかる範囲だったら何か言ってやれるかもしれないから、良かったら言ってみてくれ。まあ、大概クラウンのことだと察しはつくがな」


「......そんなにわかりやすいですかね。その通りですけど」


「わかりやすいというか、1つしかないというか。まあ、そんな感じだ......お前さん、もしかすると人を探してんだろ?」


「!」


 朱里はその言葉を聞いた瞬間、咄嗟にカムイの顔を見た。すると、カムイの顔はどこか哀愁が漂うな表情だった。


 その表情が意味することは1つ。カムイも同じ目的であるということ。それが分かると朱里は思わず願った。


「あ、あの! 急なお願いなんですけど、海堂君に人探しのお願いを頼んでくれないでしょうか!」


「海堂?......ああ、仁のことか。そんでそのお願い......なるほど、そういうことか」


「あ、あの......」


「そうだな。結論から言えばノーだな」


「!......どうしてですか?」


 朱里はカムイの言葉を聞いた瞬間、思わず聞いてしまった。その言葉が納得しかねたからだ。とはいえ、この態度が頼む側の態度でないことは重々わかっているが。


 朱里のその質問にカムイは癇に障ることもなく、そっと話した。


「お前さんは怖いんだよな.....クラウンのこと」


「......はい、怖いです」


「けどな、案外怖いのはクラウンだって同じなんだぜ?」


「どういうことですか?」


 朱里はカムイの言った意味がわからなかった。あの襲撃の時も、響と戦った時も、自分と会った時も人とは思えない狂気的な目をしていた。


 そんな仁が自分達に対して恐怖していたとでも言うのだろうか。それはとても信じられる内容ではない。


「これは少なくとも俺が出会った時のクラウンの印象だ。あいつはな、今自分の運命を狂わせた神を殺そうと動いている」


「神を?」


「ああ、そうだ。そして、それに対するあいつの覚悟は本物だ。それだけは変えられない。だがな、それだけなんだ。お前さん達には殺すだのなんだの言ってるが、存外そんな感情は持ってねぇんだよ」


「それじゃあ、恐怖を抱いてるって......」


「それはあいつがお前らとどう向き合えばいいかわからないでいるんだ。本当はお前さん達がした行動は何かの間違いじゃないかって思ってる。でも、それよりも憎しみの方が勝っているだけなんだ。だからこそ、敵である神の、それも使いになったと聞いたら、その憎しみが先行しちまったに過ぎない。それをどうかわかって欲しいんだ」


「......」


 朱里はその言葉を聞いて思わず黙り込む。そんな朱里の様子を見ながらカムイは話を続ける。


「そんな簡単にそう思えないのはわかってる。でも、接し方がかわらないから、あいつはそっちの方向に逃げてしまうんだ......あいつは確かに強い。でも、心はそれほど強くない。だから、お前さんにはどうかあいつの言葉を受け止めて欲しい。受け止めたうえであいつにお願いをするのなら、きっとうまくいくはずだ」


「......どうしてそこまで?」


「どうしてってそりゃあ―――――――仲間だからだ」


「!」


 その言葉は朱里に深く刺さった。「仲間」それは言い換えれば絆を持った人達とも言える。


 そして、海堂君とはもとの世界から来た「仲間」。立場は複雑になれど、そこだけは不変の事実。


 朱里は軽く深呼吸をした。しかし、未だ恐怖は大きい。すると、そんな朱里を見かねたカムイは朱里の手を掴んだ。


 そのことに驚き、顔を赤らめる朱里をよそに指で手のひらをなぞっていく。そして、書いた字は......


「鬼?」


「そう、鬼だ。たくましく、勇敢である種族の名だ」


 カムイはニコッとした笑みを見せる。すると、朱里は書かれた手のひらを口へと運び、飲み込んだ。そして、立ち上がる。


「朱里、少し用事が出来たので外します」


「おう、頑張れ! 上手くいっても、いかなくてもまた草団子奢ってやるよ」


「はい、ありがとうございます! では、行ってきます」


 そして、朱里は仁の元へと向かって行った。

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