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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第5章 道化師は憎む

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第105話 依頼

一度でいいからエルフに会いたい人生であった......


読んでくださりありがとうございます(*'ω'*)

 クラウンが目にしているエルフの姿はほぼ想像通りの姿をしていた。なので、比較的驚きは少ないが、それでも感動のような感情は確かにあった。


 エルフと言えば、男の憧れとも言えよう。現実離れした容姿に可愛らしさもありながら、美しさもあり、それが見事に調和している。


 なので、多少は見惚れるぐらいは許してもらいたい。なぜなら、もとの世界からのちょっとした憧れなのだから。


 だが、そんなクラウンの思いと裏腹に自体は悪化していく。それはクラウン達他種族を見たエルフの一人が叫んだからだ。


「全員に告ぐ! 他種族が仲間を使ってここまで攻めてきたぞ! 女、子供はすぐにこの場を離れて避難を! 男はすぐに武器を手に取ってこの地を、聖樹を護れ!」


「「「「「おおおおおお!」」」」」


 エルフ達は素晴らしい団結力で素早く迎撃態勢に入っていく。一部の女、子供はすぐさま家に隠れ、その他は全員が矢をつがえて構えている。


 正面から、側方から、吊り橋(頭上)からと様々な位置から。もし、この状態で一斉に矢でも放たれたら、さながら矢の雨となり得るだろう。


 すると、正面から弓兵の間を割って、一人の老けた男が現れた。とはいえ、基本的にエルフが16~20ぐらいの見た目であるためで、その男は少しほうれい線がある程度の違いだが。


 その時、カトスがその男に向かって叫んだ。


「族長、少し話たいことがあります!」


「それはその者達の要求を聞けということだろう? なら、それは出来ん。そやつらが同胞を殺し、お前を人質に聖樹に向かおうとしているのは一目瞭然だからな」


「殺し......本当なのか?」


 カトスは族長の言葉に耳を疑った。それは可能性としてはあり得ることだからだ。


 カトス自身は確かにクラウン達に攻撃した。その場合、当然殺されることわかっていた。そして、攻撃に使った矢で、逆に攻撃にあったカトスは木から落ちた衝撃で気を失った。


 そしてその間、クラウン達に起こされるまで記憶が全くないので、その間に一緒にいた仲間が殺したという可能性も浮上してくる。


 だが、それだと助けた後の行動がわからない。助ける自体の行為は相手を利用しようという狙いも読み取れるが、だとしたら食事のような懐柔する行為をするだろうか。


 全く否定出来るわけではないが、それでもその時に悪意のようなものは感じられなかった。ただ純粋に聖樹に用があって訪れただけで、エルフを脅かそうという目的が含まれているように感じなかった。


 また、この森が魔物に襲われている時の話をした時も盗み見た反応では関係があるような表情をしてなかった。


 なので、カトスはそのことについて尋ねる。すると、それに対し、クラウンは答えた。


「俺は逃げたお前の仲間を殺すためにわざわざ追いかける労力など使わない。無駄だからな」


「......本当みたいだな。なら、少し待っててくれ」


 そう言うとカトスは族長へと顔を向けた。


「族長、仲間が殺されたというのはいつですか?」


「昨日の夜のことだ。この森を巡回していた仲間が帰って来ん。それに、お主と一緒にいた仲間もな。まあ、お主の仲間はまだ巡回中だとしても、昨日の夜の時点で殺された仲間がいるのは確かだ。今朝、遺体が発見されたからな」


「待ってくれ、僕たちは基本的に遠距離()でしか攻撃を仕掛けない。それに近づかれても魔法があるし、魔物にやられるほど弱くはない」


「だが、現に遺体が見つかったのもまた事実。ここ最近のこの森への魔物増加といい、しかもその魔物が結界をすり抜けてくる辺りといい、人為的なのは明らか。そして、我々の精神を摩耗させて遂に攻め込みに来た......そう考えるのが普通だと思うが違うか?」


 族長は最後の言葉を告げると同時にギロっとした目を向けた。その目にカトスは思わず怯むように後ずさる。


 そしてしばらく、この場に無言で静寂な時間が流れた。そして、その時間が長くなるたびにこの場の空気が険悪になっていく。


 エルフはもう黒だと思っているのか弓の弦を強く引いている。狙いはもちろんクラウン達。


 するとその時、痺れを切らしたクラウンがカトスの前に出る。


「はあ、時間の無駄だ。俺達はただ聖樹に用があるだけだ。魔物なんぞ送り込むぐらいなら、自力で向かう」


「ほう、どうやら嘘ではないようだ。なら、それをどうやって証明する?」


「俺達が魔物がここに侵入できないように結界を張ってやる。その対価として俺達は聖樹へと入る権利をもらう」


「それだけで対価が聖樹へ入る権利とはいささか不釣り合いにも感じるが、魔物を全て討伐してくれるのではダメなのか?」


「この集落に行くのも、正規のルートでなければ行けないようになっていることは知っているし、聖樹へ行くのもそうであろうということは予想がつく。それで、森へと魔物を殺しに出てお前らに締め出されたら、俺達は聖樹へと行くことはおろか、集落すら行くことが不可能になる......そこまでバカだと思うな」


 クラウンは威圧的に族長へと言葉を返した。その際、殺気を出しているわけではないが、その瞳は見ただけで人を殺せそうな圧力を放っていた。


 その瞳を正面から受けた族長は冷汗をかきながらも、冷静な面持ちで見つめ返していた。そして、そのままクラウンへと近づいていく。


 それに対し、クラウンも近づいていく。それから、両者ともに向かい合うように立った。


「どうやら、本物のようだな」


「本物? どういう―――――――――」


 クラウンが言葉を言いかけた瞬間、族長は恭しく頭を下げ始めた。しかも、気づけば他の全員も同じく頭を下げている。


 クラウンはそのことに思わず目を見開く。そして、「どういう意味だ?」とばかりに後ろを振り返ってカトスを見るが、カトスもただ「どういう状況?」といった表情をしている。


「お待ちしておりました。救世主様、どうかこの森をお救い下さい」


「「「「「は?」」」」」」


 クラウンは思わず頭を傾げた。


***********************************************

 場所は移り族長宅、そこで机を挟み族長とクラウン達が向かい合うように座っていた。そして、机には赤い透明な液体が入ったコップが置かれている。


 クラウンはそのコップを手に取ると口に含んだ。どうやら毒とかは入ってなさそうだ。ということは、単純に家に招いただけらしい。


 すると早速、コップを机においたクラウンは族長へと話しかける。


「それじゃあ、まずお前らの態度がなぜああなったのか聞かせてもらう」


「先ほどは無礼な真似をして申し訳ありません。ただ試す必要があったのであのような態度を取らせてもらいました」


「試すって何を?」


「あなた方が本物の救世主かどうかです。実は数百年前に一人の女性がこの地に訪れまして、その際別れ際に『救世主がこの地を救ってくれる』と言ったのです。そして、その救世主の情報が黒髪で左目に傷を負った少年を筆頭とした男女5人組であるということ」


「「「「「!」」」」」


 族長の言葉に全員が思わず驚く。なぜなら、聞く限りその情報は自分達でしかありえないからだ。特に黒髪で左目に傷という情報は。


 この世界では黒髪はかなり珍しいのだという。もっと言えば、いないと言っても過言でない。故に、黒髪であるクラウンはかなりの数から絞られる。


 加えて左目に傷を負っているとばれば、もう特定できるぐらいだ。それで被る人物はそうそういない。


 また同時にカムイ以外の全員はその情報をもたらした人物が誰であるかはもはや確定に近い状態でわかっていた。


 その人物とはおそらくリゼリアのことだろう。リゼリアは現在の世界の神をどうにかしようとずっと前から動いていた。


 それに神の存在を明確に知っている人物は少ない。少なくともその中に人族はほぼ含まれない。そして、現在に至る予知できる人物と言えば予知魔法が使えるリゼリアしかいないだろう。


 「まさかこんなところまで予知しているとはつくづく侮れない存在だな」と思わざるを得ないクラウン。


「それでなぜカトスだけそのことを知らなかったんだ?」


「カトスだけではありません。カトスと共に一緒に送り出した仲間もです。彼らはその女性が去った200年後、つまりは数年前に別の集落で拾ってきた子たちなのです」


「その集落はどうなったです?」


「焼き滅ぼされていました。惨い状態でしたよ。魔物に生きたまま食われたり、人型の魔物に犯されていたりと見るに堪えない光景ばかりでした。ですが、正直わけがわかりませんでした。その当時から魔物除けの結界は張ってあり、聖樹の神聖な雰囲気でこの森はほぼ魔物が寄り付かない安全の土地であったにもかかわらず」


「その日突然一つの集落が襲われていたということね」


「そういうことです。そして、今も少しずつ数を増やしております。また、時折自力でここに至る魔物もいる始末でしてとても困っているのです」


 族長は暗い顔をしながらうなだれる。その姿だけで見えぬ苦労や辛さが見えてくるという感じだ。それだけ精神的にやられているということなのだろう。


 するとここで、カムイは族長に聞いた。


「そういえばなんだけどよ、エルフはどうして聖樹を護ってるんだ? その聖樹がこの土地を護っているのは知ってるけどよ、森だったらどこにでもあるじゃねぇか。それにお前さん達の強さなら他の森で開拓も出来るはずだ」


「それは思っている以上に単純な話ですよ」


 族長は赤い液体を一口含むと答え始める。


「気持ちの問題ですよ。我々は聖樹を護るよう聖樹から生み出された存在という逸話があります。ただその逸話を護っているだけです。それに聖樹から魔物に襲われない安全な土地、豊かな果実や植物の実りと様々な恩恵を受けているので、自然を愛する我々としては聖樹を蔑ろにできないだけです」


「良い話じゃない」


「だからこそ、救世主様達の力が必要なのです。私達では森を傷つけてしまうと魔法行使を躊躇ってしまうことがあります。ですが、それを続けていけば滅びるのは魔物ではなくこちらでしょう。だから、どうか我々に力を貸してください!」

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