第10話 弱者が吠えるな
本来ここで一日おき投稿にする予定だったんですが、1作品目より好調の滑り出しで読者も意外と多かったのでこのまま投稿していきたいと思います(アア......ストックが.....(;^ω^))
興味ない方は本編どうぞ
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超私事なんですが1作品目と2作品目で両方とも本気なんですが、熱量が違うといいますか、ぶっちゃけ「神逆のクラウン」の評価の方が嬉しかったりします。なので......
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クラウンとリリス、ロキは森を出て数日、順調な旅を続けていた。だが、それはある異常事態を無視してのことだ。
「グルルルルル......ガウゥ!」
「うぜぇ」
「ガァ――――――!」
「消えろ」
クラウンは襲ってくる魔物を刀の感触を確かめながら、一撃で切り伏せていく。だが、これも異常事態が発生した三日間で通算で百体を超える。
しかも、日に日に増して魔物が襲ってくる数が増えてくるのだ。正直、クラウンにとっては何も問題ない相手だが、全然強くなれる気配がしないので殺すことを若干飽き始めている。
「.....で、魔物ホイホイはいつまで続くんだ?」
「知らないわよ!それにその言い方なんかやめて!」
この魔物が呼び寄せられるように襲ってくるという異常事態はリリスが発端なのだ。それもリリスが中心的に狙われる......実は、リリスはこの原因が分かっている。
その原因というのはサキュバスの特性である催淫効果だ。それによって魔物たちが発情し、我先にへとリリスを狙いにやってきているのだ。
本来なら、リリスはこうなる前に母からもらった薬を飲んでいるのだが、今はその薬がない。それもクラウンに出会った後という良すぎるタイミングで。
リリスの母は時より予言めいた発言をしていたことがあったので、ワンチャン謀られたと思っている。
「はあはあはあ......」
リリスは荒く呼吸をする。その催淫フェロモンを抑えるのに相当の力を要しているのだ。だが、本来はそれはサキュバスならコントロールするのは当たり前のこと。なのだが、その催淫をコントロールをするには貫通する必要があるわけで......
「はあはあはあ.....やばい......」
そんなことできるはずないのだが、やらなければこのままぶっ倒れてしまうというある種究極的な二択を迫られている。だが、もうそんなことを考えている時間が――――――――トンッ。
リリスは首筋に走る衝撃とともにそのまま意識を落とした。
「う......ん.....」
「起きたか」
「ウァフ?」
リリスが目覚めると後頭部にモフモフな感触を感じた。ロキの毛並みだ。ロキは「大丈夫か?」といった感じでリリスを見つめる。
リリスは起きるとふと自分の感覚に気づいた。そう、催淫フェロモンが収まっているのだ。なぜかはわからない。もしかして気絶したから? なら、誰が......って一人しかいないか。
「あんたが催淫にかからなくてよかったわ」
「......当然だ」
「なによ、その妙な間は? もしかしてあんたもかかってたの?」
「.......」
クラウンは何も答えなかったが、どうしてかその沈黙は肯定的捉えられた。だとしたら意外である。復讐に全てをかけている男がそんなものにかかるなんて......いや、これはむしろ異常なのではないか?
生物とは危険な目に会うと子孫を残そうと行動するという。それで言えば、クラウンは死の森で数か月は暮らしている。だとしたらそういう本能的なやつは強いはずだ。
......違う。忘れていた、私の催淫効果は私に対して好意がないと成立しない。悲しい話だけどクラウンはそもそも私を信用していない。
だから、かかるはずもないのだ。だとするとあの間は答えるのがめんどくさかったぐらいか。
そう思って若干へこんでいるとクラウンが口火を切った。
「俺的に考えてみたが......お前のその特性は興奮状態の時に無意識に発動するんじゃないか?」
「なら、私があの時興奮していたと?」
「それにも幅広い意味があるだろ。お前はあの時、薬がないことでパニックになったそれが原因じゃないかってことだ」
「なるほど、そういうことね。それは一理あるかもね」
「だが、それはデメリットでしかない。戦闘は基本、興奮状態だ。戦闘中にそうなったら支障でしかない」
「だから、この先の男を引っ掛けてでも捨てろと?冗談じゃないわ」
リリスの返答にクラウンはため息を吐いた。この強情な女、使えるかと思ったが、とんだじゃじゃ馬だ。切り離すことも考慮しといた方がいいかもしれない。
一方、リリスもため息を吐いた、言いたいことは分かる。それは今後の戦闘に大きく響く可能性があることぐらい。
でも、無理なものは無理だ。理屈ではどうしようもならない時もある。だけど、自分のことを考えていてくれたことや起きるまで待っていてくれたことには少し好感を感じた。
「体調戻ったなら行くぞ」そう告げるとクラウンは一人でに歩き出す。リリスは大きく伸びをすると立ち上がって、クラウンの横に並び歩く。
「なんだかんだで悪い組み合わせではなんだけどな~」と思いながらロキはやれやれとした顔をすると二人の後を追う。そして、しばらくすると村が見えてきた。ただし、その村からはいくつか煙が上がっているが。
「どこもそこも物騒ね」
「弱者が何をしようと関係ない」
クラウンは鋭い目つきでそう言うとその村へと向かった。もちろん、助ける為では断じてない。ただ、その道を辿れば王都に繋がる道があるという理由だけだ。
そして、村に入ると見える範囲で多くの人が怪我や刺されたり、切り殺されていたりして死んでいた。また、この場にいる全員が老人であった。
多くの人がクラウンたちの存在に気づいたが、その異様な存在に誰も声が出せなかった。その中を、クラウンは悠然と歩いていく。すると一人の老人が動き出した。
「お旅の人よ、無理を承知でお願いする!どうか攫われた村人を助けてくれ!」
「無理だと分かっているなら、話しかけるな」
老人はクラウンの目の前で土下座しながら必死な形相でお願いするが、クラウンは老人を一蹴するとそのまま歩き始める。
だが、老人も引けなかった。若い者のほとんどが攫われ、若い女はまず間違いなく性奴隷として売られることを知っているから。
だから、たとえ自分の誇りや命を捨ててでもこの村を守るために、若い者たちの未来を守るためにこのチャンスを逃すことは出来なかった。
「ま、待ってくだされ!お願いだ、助けてくれ!わしらは老いぼれ故に弱い!盗賊相手では何もできんのだ!だから―――――――――」
「あぁ?」
「!......あがっ」
これまで何を言ってきても無視してきたクラウンだが、ある言葉に過剰に反応すると老人の顔面を鷲掴みにした。そのことに老人は思わずうめき声を上げる。
「弱いだと?それお前らの責任じゃねぇか。」
「あ、あががっ」
「挙句の果てに、そのつけを俺に払わせる気か?ふざけんな!」
「う、うぐぅ」
「お前らは己の弱い立場に甘んじた!お前らは己を弱いと受け入れた!......それがこの運命を生んだんだ。さっさと諦めることだな」
クラウンは老人を投げ捨てると再び歩き出そうとするが、諦めきれない老人はその足を掴んだ。その表情はただ諦めきれるかといったものだった。
クラウンのイライラが募っていく。虫唾が走る。仮面で表情は見えないが、その目は怒気が籠っていた。そして、老人の方を向くと叫んだ。
「いい加減にしやがれ!生き恥が!お前らの望みはたったいま終わったんだ!お前らが弱いせいでだ!弱いのは恥で、罪で、死だ!そのことを認めやがれ!」
「......頼む助けてくれ」
老人はただ一言そういうとクラウンに目を合わせ続けた。この望みを運命を掴み取ろうと。
クラウンが怒髪天を衝きそうになった時、右肩にそっと手が置かれた。その手を辿るとなぜかリリスが悲しそうな瞳で見ていた。
そして、左側ではロキが癒しを与えるようにそのモフモフな毛並みを擦りつける。
「助けろというのか?」
「そうは言わないわよ。ただ、盗賊を狩っていたらたまたま人質がいたならいいでしょいいでしょ?それにもう何を言っても不毛なだけよ。」
「クゥン」
「......チッ。わかった」
わざと聞こえるように舌打ちをすると右足を軽く振りかぶった。そして......
「ゴキッ!」
「あああああぁぁぁ!」
「それが代償だ。それで済むだけありがたいと思え」
老人の掴んでいる腕をへし折った。老人は思わず苦しみの声を上げる。あまりの非人道的行為に周りの老人も一言言ってやろうとしたが、クラウンのひと睨みで恐怖に引きつった顔をしながら押し黙った。
「ロキ、匂いがわかるか?」
「ウォン」
「そうか、案内してくれ」
クラウンたちは盗賊を追って歩き出した。
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「ははははは、今日ほどツイてる日はねぇぜ!」
「あの村にこんな若い女がいるとは盲点だったんな」
馬車を引いている男二人は馬鹿笑いしながら、荷台に積んでいる若い女たちを見る。攫ったそのほとんどが10代、20代であるため、見るたびにやたらと股間が疼く。
「なあ、一人ぐらいやっていいよな?」
「バカ言うな。ボスにバレたらことだぞ」
「いいだろ?ボスは若い男の方の荷台にいる。バレなきゃ大丈夫だって、そうだろ......なぁ!」
「おう、やっちまおうぜ!」
「お前は堅物なんだよ。一人ぐらい減ったってバレやしねぇって」
「さ~て、どいつが一番反応が良さそうかな~」
一人の男の掛け声で馬に乗ってその馬車に並走していた男たちは一斉に喜びの声を上げる。各々欲望のままに言いたい放題だ。そして、制止していた男も遂に折れ、馬車を道脇へと止めた。
「そんじゃあ、俺はコイツ」
「俺はこっちだな」
「あ、俺も俺も」
男たちが各々の好みのタイプの女を指さしていく。指をさされた女は揃って抵抗もせず、暴言も吐かず絶望の表情を浮かべた。もうこの運命を受け入れているかのように。
男たちは協議した。選んだ全員をやってしまえば、さすがにバレる。そして、多数決の結果、一人の少女が選ばれた。
この女性の中でとびっきり可愛くいかにもボスが好きそうな顔だちをしている。本当にやっていいのか?いや、多数決の結果そうなったんだ。とびっきり味わってやろう。
「こっち来るな!」
「へへへ、そんな固いこと言うなよ。」
若い女は必死に睨んで追い返そうとするが、男たちにとってはどこ吹く風。周りの女たちはその若い女の辿る末路をすでに想像してしまっているのか暗い顔をしている。
「いや、離して!」
「そう言って、離す俺たちだと思うか?」
男の一人が若い女を捕まえるとそのまま押し倒す。若い女は必死に抵抗するが、拘束された手では何もできなかった。
そして、絶望を突き付けんとばかりに四方八方から抑え込まれる。それから、強制的に股を開かされる。
若い女は涙を流しながら必死に叫んだ。
「誰か、助けて!お願い!何でも言うこと聞くから!」
「なら、俺たちの言うこと聞いてくれよ。安心しろ、嫌というほど男の味を教え込んでやるから」
「......そうか。なら、先に俺が教えてやるよ」
「え?」
その言葉が聞こえた瞬間、顔に何かがかかった。そして、それは液体のようでやがて口に流れてくると鉄っぽい味がした。
そして、ふと気づく。目の前にいる男の口から刀が飛び出ていることに。それから、その後ろに見知らぬ少年が立っていることに。
その少年クラウンは「きたねぇな」と呟きながら、男の後頭部から刀を引き抜く。周りの男たちは未だ状況が読めていないようだ。それはそうだ。音もなく突然現れて、男を刺し殺したのだから。
「どうだ、刀の味は?これこそ男の味ってもんだろう?」
「な、なんだおま――――――――――」
別の男は言葉を言い切る前に頭が地面に落ちた。周りの男たちは言い表しようもない恐怖に襲われた。
そして、蜘蛛の子を散らすように我先にと逃げていく。だが、すぐに全員走りの体勢から動かなくなった。
「な、なんで動かない!?」
「何かが絡まってるんだ!」
「ご明察。これは俺の糸だ」
クラウンはそう言いながら一人の男を糸で引き寄せようと地面に無理やり伏せさせてそのまま踏んだ。
「がはっ」
「どうした?苦しいか?」
クラウンはニタニタと笑っているような声色を出しながら、男の胸をぐりぐりと痛みを味わわせるように踏みしめる。これを見ている攫われた女性たちは思った。なによりも危ないのはあの男だと。
だが、逃げることはしなかった。一応、今は味方側だし、それに逃げても意味がないと分かっているから。
「なんだ?その引きつった顔は?それがあの女で見たかった顔なんじゃねぇのか?」
「ち、ちが......がはっ」
「違わねぇだろ?盗賊どもは強者で、女ども弱者だろ?そして、強者であるお前らは己の欲望のままに、愉悦のままにあの女を恐怖と絶望で染め上げたかったんだろ?」
「う、うぐっ」
「なら、喜べ!お前は今、恐怖を味わっている。俺という強者の存在でなぁ!」
クラウンはそっと右手を上げるとパチンと一回指を鳴らした。その瞬間、声もなく頭が落ちる。踏んでいる男を残して。
男はこれ以上にない程、顔を青白くさせた。その顔にクラウンは目を細める。
「......それが絶望だ。俺が味わった。お前が味わわせたかった......な!」
クラウンはそう言うとその男を踏み潰して殺した。
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『凶気が 2 上がりました。現在の凶気度レベル 5 』
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