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第1話 殺戮者の生誕

2作品目です。1作品目とは真逆の雰囲気の話です。

 日本がある地球とは別のある世界では、剣と魔法で世界が成りっていた。その世界の名は「ジョアー」。変った名だと思われるがある地方での言葉では「遊戯」という意味らしい。


 その世界は大まかにわけると六つの国に分かれている。一番栄えているのが人族、それに敵対するのが魔族、人族に嫌悪感を抱くのが獣人族、人族と獣人族の国の間に挟まれながらも閉鎖的な態度を続けているのがエルフ、島国の鬼族と同じく島国の魚人族。


 この世界はこれらの国の微妙なバランスで成り立っている。そして、そんな世界のある場所、言うなれば人族の国の近くにある大森林。名を「アルディリア」、別名「死者が住む森」。この名の由来としては、勝てるという概念すら吹き飛ばす凶悪で凶暴な魔物が日々弱肉強食の争いをしているという。


 それ故に、この森は大抵の人は近づかない、近づくのは自殺願望者だけだ。その森の奥、つまりは中心部に向かうほどレベルが高い魔物が住んでいるのだが、そんな森の中心部に近いところに一人の少年がいた。


 少年は地面に寝転がっていた。そして、顔に落ちてきた木の葉で目を覚ました。視界に広がる森は薄暗くほのかに光が刺す程度で、視界はあまり良くない。冷たい空気がどことなく肌に触れる。


 少年は自分の姿を確認した。比較的きれいな服装だった。どこもそこも破けたような跡はない。にもかかわらず、少年の近くには丁度体の大きさに近い地面を抉ったような跡があった。


「うぅ、............ここは......どこ?それに.......僕は一体.......」


 その瞬間、頭痛がした。まるで万力に絞められたかの如く。その痛みに思わず頭を抱える。自分自身が何か思い出すのを拒んでいるかのようだ。気づけば手も小刻みに震えている。


 少年は軽く汚れを払うとそばにあった木を支えにして立ち上がる。周囲を見まわすが、木が多すぎるせいであまり遠くは見渡せない。


 またここがどの場所に位置しているかを示すようなものは当然ない。そのことに心がキュっと縮む。


上を見る。どの木も相当に高くて、枝が無数に広がり、葉に覆われている。まるで自然で出来た檻のようだ。


 すると、遠くからグゥルルルルといううなり声が聞こえたような気がした。なるほど、檻は檻でも獣がいる檻か。


 その環境、一人であるという状況が少年の恐怖値をどんどん高めていった。一人が怖い。唸り声が怖い。周囲が怖い。心がさらに縮んでいくようだ。


 だが、ここでじっとしていてもしかたがない。移動して食料でも探さなければ死んでしまう。少年は周囲を警戒しながら、地面の削り跡に沿って歩き始めた。


 少し時間が経ち、少年は落ち着きを取り戻し始めた。気が付けば地面の抉られた跡は遥か遠くまで続いている。いったいどこまで続いているのだろうか。


 確か自分が寝ていた位置がこの跡の終わりだった。ということは、この跡をつけたのは自分なのだろうか。だとしたら、自分の体がキレイなのはおかしい。疑問は抱きつつも歩みを進めた。


 歩けば歩くほど、森の妙な静けさが少年を包んでいく。地面も木の根が張り巡らされているように浮き彫りになっている。跡を沿っていると何かがきらめいた。


 それのある場所に向かい少し地面を掘るとエメラルド色の宝石をつけたペンダントを見つけた。だが、その宝石は割れていてどこか薄暗く感じる。


「......うぅ......ああ」


 頭痛が先ほどより強まった。少年は苦悶の表情を浮かべる。断片的に何かの記憶が流れる。自分を取り囲むように半円になって並ぶ自分と同い年の少年少女たち、それから鎧を着た兵士たち。それにあれは.....うぅ、あぁ、また頭痛がする。よくはわからないがとても思い出したくない。


 少年はとりあえずペンダントをポケットにしまうと再び歩き出す。

 

 それから跡を辿っていくほど抉れ方が大きくなっていた。そろそろ跡ができた始まりに近いのかもしれない。


 そして、始まりにたどり着くと大きなクレーターができていた。自分は相当遠くから飛ばされてきたようだ。


「......うぅ、あああああああぁぁぁぁぁぁ!」


 激しい頭痛がした。痛い痛い痛い痛い!その時、少年の記憶がフラッシュバックした。


『違う違うんだ! 俺じゃない! 俺はやってない!!』


『......もう諦めろ――――――。諦めてくれ......。』


『だから俺じゃない! 何かの間違いだ。』


『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい......うぅグスン、言うしかなかったの。こうするしかなかったの。』


『俺は......俺は違うんだ......――――――、何か言ってくれ』


『......―――――。――――――は殺したんだよ』


『全ては我が主のために、面白く踊ってください』


『期待してるよ、―――――――――。僕の愉悦のために』


「うわああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 少年少女たちに攻め立てられる自分の姿が、嘲笑う教皇が、全てを失う元凶を作った神が鮮明に蘇る。


 少年は頭を抱えながら森全体を轟かせるような叫び声をあげた......おも......い......出した。思い出した。全てを!どうしてこうなったかを!どうしてここにいるのかを!そうだ、あいつらが!あいつらが!信じてくれさえいればこんなことには!そして、あのクソ野郎どもが僕を!!


 少年はがっくりと肩を落とすとそのまま地面にへたり込んだ。少年の顔は絶望したかのようにひどく暗い顔をしている。


もうどうでもいい......あいつらがどうなろうが。全員死ねばいい。僕は生きたい。ここはおそらくあの森だ。なら、一刻も早くこの森を出なければ。


「グルルルルル」


「ひっ!」


 うなり声が聞こえる。自分が叫んだ時に引き寄せてしまったようだ。そのことに少年は口に手を当て息をひそめるようにその場を離れた。


 少し歩くと目の端で跳ねる何かをとらえた。その方向を見ると、一本角を生やしたウサギであった。赤い目を除けば、可愛らしい見た目だ。


少年は思わず無害だと思って警戒心を緩めてしまった。それがいけなかった。その瞬間を待っていたかのように一角ウサギは身を屈め飛び跳ねるモーションをかける。


その瞬間、少年は身の毛もよだつ程の恐怖感に襲われた。


 少年は体が慣らす警告音に従って横っ飛びをした。すると、一角ウサギが少年が先ほどまで立っていた位置に向かってものすごい勢いで飛び出し、風を切るすごい音を立てた。


 一角ウサギは巨大すぎる大木に風穴をあけ、そのままなぎ倒した。木が倒れた時の振動が少年に伝わる。あの時感じた直感は正しかった。


すると、一角ウサギはギョロリと少年の方を見る。少年は先ほどの光景をフラッシュバックし、思わず身を縮めた。その時、ガサガサとすぐ近くから音が鳴ると茂みからさらに複数体の一角ウサギが現れた。


「ひっ!」


 少年は走りだした。今だけは風になったかのように走って走って走って逃げて逃げて逃げた。横にある木が次々と後ろへと流れていく。


あの攻撃スピードには対応できないし、丸腰の今では接近戦は出来ないし、僕の魔法は接近戦には向かない。とにかく今は距離を取らなければ。


 すると、一角ウサギが弾丸さながらの速さで飛んでくる。それを少年は木を遮蔽物にして避けていたが、そのほとんどが意味をなさない。むしろ木が倒れてきて危ない。 


「ハア、ハア、ハア........ん、あ、ハアハア」


 呼吸が辛い。のどが渇く。足が重い。視界が僅かに霞む。地面が根に覆われているため、時折転びそうになる。


「!」


 意識が朦朧としてきた中、正面からもうスピードで何かが向かって来る。少年は咄嗟に横に飛ぶとその何かは巨大な熊であった。


その熊は少年を通り過ぎると少年に向かって弾丸のように飛んいた一角ウサギを口で捕らえ、かみ砕いた。そして、その他の一角ウサギは爪で切り裂いた。鮮やかにも惨たらしい血が宙に舞う。


 一角ウサギを咥えた熊は「次はお前だ」と言わんばかりの鋭い目を少年に向ける。その瞬間、少年は体が告げる警戒音に身を任せるままに走り出した。


足の重みも、体のだるさも関係ない。今は死にたくない。すると、熊は一角ウサギを咀嚼し、ゴクリと飲み込むと少年を追いかけ始めた。


 少年はある木と木の間を通り抜ける直前に両手を合わせ、そして通り抜けた直後、一瞬だけ後ろを向いてそれぞれの手で木に触った。すると、木と木の間には一本の太い糸が張られる。


少年はそれを確認すると再び後ろを振り返ってそのまま走り出した。


 熊は糸に向かって突っ込むと口当たりに引っかかった。その糸は熊の顎を切り落とそうとくい込んでいくが、あえなく引きちぎられ、熊は少年に向かってもの凄い勢いで追いかけてくる。


「グルルルルル......ガア"!」


「!!」


 いつまでも逃げ続ける少年に熊はいら立ちを覚え始めた。そして、口を開くと少年に標準を合わせ、巨大な火球を吐き出した。次々に発射される火球に辺り一面が火の海と化すし、周囲の空気を灼熱へと変えていく。


「.....クソ、まずい!」


 その時、火球によってなぎ倒された大木が少年の進路を妨害するように倒れこんでくる。そのことで、少年は一時的な進路変更を余儀なくされる。


その一瞬が命取りだった。少年の背後からはもうすでに火球が迫っていたのだ。それを避けるために、少年は手に魔力をため込むと右斜め前の大木に向かって糸を伸ばす。


そして、大木に巻き付けた糸を思いっきり巻き戻して自分をその大木へと引き寄せた。その刹那、左側から火球が通り過ぎる。


「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 直撃こそしなかったが、それでも放たれた火球の熱波によって左腕は大やけどを負った。もう左腕は焼けただれて感覚がない。そのくせ意識が飛びそうなほどの激痛が走る。


左腕を見れば吐きそうだ。少年は唇を噛み意識が飛ばないように堪える。その光景を熊はほくそ笑むと速度を上げて追いかけてきた。


「クソクソクソ!......あ!」


 ズザサ――――――――――――ッと少年は足をもつれさせ、転倒した。すると、熊は少年のもとにたどり着くと強者の余裕というべきかゆっくりと距離を詰めてくる。その熊に少年は震え、よろめきながらも立ち上がり、少しずつ後ずさりをする。


「く、来るな......」


「グガアアアアアアァァァァ!」


「!」


 熊は凶悪な爪で少年を一気に切り裂いた。だが、間一髪というべきか、幸運の女神が微笑んだというべきか少年は咄嗟に後ずさりしたときに石につまずいたおかげで、致死に至る攻撃は避けられた。


しかし、胸にかけて大きく切り裂かれ、目の前で血が舞う。そして、少年は切り裂かれた衝撃で吹き飛ばされ、背後にある大木に強く打ちつけられた。


「う......うぅ......」


 少年は痛みの中、意識を朦朧とさせる。自然と涙もこぼれてくる。これで終わりなのか。この世界に来て何にも役に立てなくて、みんなには見捨てられ、クソ教皇に騙され......。


 そして、少年は霞んでいく光に手を伸ばしながら、意識を落とした。


**********************************************

「......うっ、ここは?」


 少年が目覚めるとどこかの洞窟であった。少年はまず生きていることに驚きを感じたが、生きていることを安心することはなかった。


それは少年の手元に多くの骸があるからだ。血で色づいたであろう黒ずんだ地面もある。今襲った熊はいない......がそれも時間の問題だろう。


 気づけば痛みがない。痛覚が死んだのか、もしくはもう死が近いのか。そう思うと空気も冷たく感じてくる。


 この世界に来てろくなことがなかった......きっとアレを聞いてしまったのがすべての始まりだろう。それで僕は口封じとして嵌められた。


だが、みんなが僕の言葉を信じてくれれば、きっと違ったのかもしれない......が今更思っても仕方ないか。ああ、ダメだ。頭が絶望で染まっているのに、考えただけで腹が立ってくる。怒りと憎しみで心が染まっていきそうだ。


『オレに任せろ』


「!」


 声が聞こえたような気がした。少年は周囲を見回したが、誰もいない......もしかして自分の声とでもいうのだろうか?少年がそんなことを考えているとそいつは考えを読み取ったように告げた。


『理解が早くて助かるよ』


「!......お前は......僕なのか?」


『ああ、そうだ。オレはお前。お前はオレ。そして、オレは長い話が嫌いでな単刀直入に言う、オレに身を委ねろ』


「......どうして?」


 少年がそう聞くともう一人のそいつはその問いにほくそ笑んだような気がした。そして、悪意のこもった声で少年に答える。


『お前、殺したいだろ?』


「!......お前、何を言って―――――――」


『本当は殺したいんだよなぁ?お前を裏切った仲間を!お前を騙したあの教皇を!!お前を陥れたこの世界の神を!!!』


「........」


『だから、オレが存在しているんだ。もう一度言うが、オレはお前でお前はオレだ。この意味わかるよなぁ?』


 少年は何も答えられなかった。全ての意味と感情を理解していた。そして思い出される記憶は不信、恐怖、絶望。ああ、委ねれば楽になるのか?......いや、委ねてもきっと楽にはなれないだろう。

 

 少年の瞳が黒く染まっていく。絶望という色で染まっていた瞳は悪意という色で。

 

 この先辿る道はきっと地獄だ。それも最下層の最下層を歩くだろう。赤く染った地面の上をただ一人で歩いていくのだろう。そこには痛みしかない。歩んだ先は破滅。

 

 少年の体から闇のように黒く、藍色に近い青が混じったオーラが溢れてくる。すると、骸が怯えるようにカタカタと動き始めた。


 この身は復讐という炎に焼かれ、自身を焼き尽くすだろう。跡形もなく、誰の目にも触れず。


 傷跡は残るが左腕、そして胸の傷が癒えていく。オーラが増し、骸がさらにガタガタと震えだす。


 俺は自ら生み出した罪によって確実に死ぬだろう。


 少年はゆらゆらと立ち上がる。


 それでも俺は......


『それでもオレは......』


「『この世界の神を殺してやる!!』」


 少年は高らかに吠えた。大気が震えた。大森林が震えた。殺気が周囲を支配した。悪意によって醜く歪んだ悪意の顔は、この先の破滅の未来を想像して笑っているかのようだった。


「さあ、神殺しの始まりだ」


**********************************************

『スキル 超回復、不屈、凶気、火傷耐性、魔力操作 が解放されました』



『覚醒魔力 全て俺の糧となれ(スキルイーター) が解放されました』

面白かったら評価、ご感想、ブックマークなんでもどうぞ。


それではまた次回

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[一言] 「世界」の自己主張が激しいですね。 読みづらい文章でなかなか読み進まず、ここで断念してしまいました。 頑張って読めなくてすいません。
[良い点] 感想遅れて申し訳ない。読み直しました。 まえの感想が個人的に気に入らないので、うよみなおしてます。文体が感情を感じて、かなり好みです。わたしはこういう文体がすきなんだなぁ、と痛感しました。…
2019/11/25 08:48 退会済み
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