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星の欠片  作者: 透明人間りんね。
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プロローグ:はじまり

 「じゃあ、お疲れ様でーす。」

 ようやくバイトが終わって、外に出る。明日もバイトだ。いい加減疲れてしまう。

 真横を自転車が風をきって通りすぎていく。風さえない蒸し暑い夜には、こんな弱い風でもありがたい。もはやじっとしているだけでも汗が流れ出てくる。

 「明日はー朝ーじゅーいちじーからー。」

 リズムに合わせて明日の予定を歌う。音痴であることは無視だ。人はあんまりいない道だから、気にしない。気にしたら負けだ。明日を含めて十一連勤だ。辛い。

 「あー、電車いっちゃったよ。」

 ぴっと改札にICカードを通した瞬間、軽快な音楽と共に電車が遠ざかる音が聞こえる。次のがくるまで待機が決定した。

 しかし、最近暇で暇で仕方ない。否、アルバイトのお陰で現実世界では暇ではないのだが、なんだか心が暇で暇で仕方ない。なぜだろう。何かに支配でもされているのか。それとも疲れているだけなのだろうか。

 「なんでかなー。」

 仕方がないのでケータイゲームを開く。王道の某会社の某ゲームだ。あのポケットに入るサイズのモンスターのやつ。アニメの主人公あれ肩にのせてるけどあれ結構すごいよな。十歳とは思えない肩してるよ。俺があれやれって言われたら、本気で拒否する。肩が死ぬこと間違いなしだよ。

 画面の中で暫く町を散策していると、蝉の声に混じって電車のアナウンスが響く。周りを見れば、たった一人だったホームには、会社帰りのサラリーマンや酔っぱらいが集まっていた。手に持った携帯やパソコンから、各々目を止まろうとしている電車に移している。俺自身も画面を見ていたが、これだけの人が画面を見つめている姿ってちょっと異様だ。

 最寄の駅まで四駅だけだが、あまりに空いているので座ることにした。シートの向かい側には、明らかに酔っ払ったおじさんが、寝息をたてて倒れ込んでいる。あそこまでぐだんくだんになっている人物を見ると、俺はああはなりたくないなとつい、思ってしまう。

 見慣れた景色が勢いよく通りすぎていくのを横目に、ゲームをセーブする。別のゲームじゃちゃんとセーブしないと、もぐらに怒られるくらい重要な行程だ。

 ゲーム機を鞄にしまうと、あと二駅にまで近づいていた。

 次の駅につくと、目の前で寝ていたおじさんが急に目を開き、寝ていたとは思えないえらい速さで降りていった。ボルトも顔負けだ。

 ぷしゅーと間抜けな音を出しながら、扉が閉まる。

 そのまま一分もしない内に、自分の降りる駅がきた。鞄を背負いなおし、ホームに降り立つ。同じく降りた数人にならい、階段をステップを踏むように降りる。

 改札を出ると、バイトの最寄よりは賑わった町に出る。飲み屋街が近くにあるせいか、酔っぱらいも多い。

 家に帰る道は、そことは正反対なので、そちらに背を向ける。その途端、脇腹に違和感を覚えた。

 押された、と思った。

 「うわっ」

 間抜けな声と一緒に、地面に倒れこむ。誰かの足に頭をぶつけた。申し訳ない。

 押された方に顔を向けると、でかいなにかを持った誰かがそれを勢いよくふりかぶったところだった。

 男や、女の、叫び声が遠くに聞こえる。

 頭が以上に熱い。しまったな。明日もバイトなのに。たぶん家で母さんが晩ごはん用意してたのに。

 意識がどんどん遠くなるのがわかる。視界もぼやけてはっきり見えない。さっきまであんな鮮明だった叫び声さえ朧気だ。

 目の前が黒くなっていく。意識もどんどん黒くなっていく。

 ああ、もうダメだ。

 「…だれか、たす、け……」

 ――意識が消えた。

読んでくださりありがとうございます!よろしければ評価とかなんか待ってます!

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