人生.1
「危ない!!」
そう叫び、俺は全力で走り全力で手を伸ばした。
伸ばした手は小さな男の子を突飛ばし、その直後に俺の身体は車が突飛ばした。
小さな男の子は擦り傷をしただろう。
だけど、俺はそんなものでは済まされず、、、、、、、
死んでしまった。
その日はいつもの1日だった。
飲食店で働く俺は始発で仕事に行き、一時間ほどサービス残業をしてから夕方くらいに家路に向かった。
夕方ともあり小学生もランドセルを背負ながら楽しそうに道を歩いている。真っ直ぐ帰るのだろうか?
今日日携帯ゲームがすでに出回っている世界では、外で遊ぶ子供は珍しいだろう。
かくいう俺も家に帰ったらゲームを少しする予定だ。
結婚はしていない。安月給の職場でそんなに出会いもなく、高校卒業して地元を離れて一人暮しでバイト三昧だった俺は友達も少ない。
「どこで失敗したかな?」なんてことは1日1回は思ってしまう。
だけど、過去に戻れる便利な道具◯◯◯マシーンがあるわけではないので、結局考えるだけ無駄だろう。
そんな、変わらない毎日で嫌気をさしていた俺は、思考を切り離しただ歩いていた。何も考えずに歩いていた。
そのおかげだろう。
いつも通る公園の近くの歩道を歩いていたらボールを追いかけている小学生低学年そうな男の子に目が入った。その男の子は走って道路まで転がったボールを追いかけている。
「危ないなぁ~。」
それはまるで他人事のように見ながら呟いた。
実際問題他人事である。
「車が来たらどうす?!」
次に呟いたことがまるでフラグをたてたかのように車が走ってくるではないか。
まだ50メートルほど先だが減速する様子が見られない。
「危ない!!」
とっさに叫んでみたが自分に言われていることを自覚せずにゆっくりとした動作で男の子はボールを拾う。
気づいてないのか?!
なんて思った直後は俺の身体は男の子に向かって走っていた。
男の子は走っている間ももボールに夢中で気づいていない。
車が走ってくるまでその間数秒。何もかも考えてなかった。
ただ男の子を助ける事しか頭になかった。
だからだろう。
男の子を右手で突飛ばした時、俺は自分の事を考えてなかった。
突飛ばした後の事を考えてなかった。
右手に当たった男の子の感触の後、
俺の身体には車の感触、地面の感触、そして痛みを一瞬感じて、、、、、
俺は意識を失った。