予兆
「この世界にはこの世界の理がある。その理を超えるものだけが神と呼ばれる存在なのだ。しかし、神ですらその理を超えてはならない。なぜなら、その理を超えてしまえば神ですらこの世のものと無くなってしまうからだ。
ルマス・アルマルーニ」
世界というものは矛盾だらけだ。最強と呼ばれた伝説の剣が案外脆かったり、神が作ったとされる月が宇宙人が作ったとか言われる。こんな無茶苦茶で屁理屈な世界は俺は嫌いだ。
この本だってそうだ。世界の理を超えるものが神。しかし、その理を超えれば神ですらこの世のものとは無くなってしまう。ではこの世に神という存在は存在しないということになる。
この世は矛盾で出来ている。
「ねぇ?叶聞いてるの?明日駅前にできたクレープ屋さん行こうよ」
彼女は僕が小学生だった頃からの幼馴染。東雲 蒼だ。生徒会にはいっていてクラスでは結構な人気者の彼女と、あまり人とは関わりをもたない影的な存在の俺という他者から見たら凸凹な幼馴染にみえるだろう。
「遠慮する。明日は図書館に行く予定なんだ。他を当たればいいんじゃないか?俺と行っても楽しくないだろ?」
「私は叶と行きたいから、叶を誘ってるの!図書館に行った後でもいいからさ!ね?行こうよ!」
蒼は俺にだけは諦めが悪い。彼女なりには俺に友達ができて欲しいのだろう。だがそんなモノ、俺には存在しなてもいい。信用できるのは自分ただ1人だけなのだから。
こうなったら蒼はめんどくさいのでその要求に応えるか無視するかしか選択がない。まぁ、無視したらその後は後で面倒なので一応了承する。
「やった!じゃあ明日お昼の1時にいつもの駅前で待ち合わせね!遅れたらクレープは叶の奢りだからね!!!」
「あぁ。わかった。」
いつもと変わらない日々。空はつまらない青一色。理不尽すぎるこの世界。
だが、それは誰も予想できない俺の。睦月 叶の。新たなる世界が始まる予兆だったのかもしれない。