ミリィ嬢、君は……
主人公の会話文を「」から『』に変更することにしました。
一日2話投稿しているけど、どんどん文字数が減っている気がする。
入学式からあけて次の日、早速授業が始まった。
義務教育となっているこの学校で教えられているのは、王国言語、算数、魔法言語、体育の4教科で、一日に2教科ずつ行われる。
初日最初の授業は、王国言語である。
王国言語と言っても、この国や隣国のアドウィカルズ王国のようにこの地に王国はいくつもあり、もちろん習っているのは自国の言語だ。
渡された教科書には、各68種になる文字表やその書き方から、勧善懲悪モノの物語、この国の王国史が記されており、国語と歴史を混ぜたような分野だ。
「えーと、υ υ υ……」
『わざわざ口に出さなくてもいいんだぞ?』
「うるさいなぁ」
「なにがですか?ミリエラリアさん」
「え、あっ。何でもないです!」
「そうですか。では口より手を動かしてください」
「はい……」
教科担当の先生に注意され、少し周りからは笑う声が聞こえてきた。
『ミリィ嬢、外では私の言葉に返したら駄目だといっただろう?』
「ふんっ」
『うおっ!だから弾くなって。まったく、最近の若い奴は……』
ミリィ嬢は昨日からずっとこの調子である。私の声に反応して周りから奇異な目で見られるのを何度も繰り返して、そろそろ学習してもいいころだと思うのだが。
その後もただただ文字の書き方の練習だけで、これと言って面白いことはなかった。
ほぼ流れ作業と化していた王国言語の授業が終わると、20分という長めの休憩時間を挟んで次の授業が始まった。
「ここに一本の枝があります。ここにもう一本違う枝を加えると、全部で2本になります。これを式で表すと〔1+1=2〕となります。この〔+〕の記号は……」
ぼさぼさの髪をした男性教師が、見た目に反して足し算の意味について噛み砕いて丁寧に説明している。
私のときはどうだっただろうか……。たしかあの頃はまだ周りに世話をするものが居た気がする。でも教わった記憶はない。
マルクス少年のころは皆それぞれ小さい頃に家庭教師を雇って勉強をしていたようで、学校が始まったときには既に加減乗除を覚えていた。
「5人で遊んでいる所に2人お友達がやってきました。全部で何人でしょう????えっと、いち、にい、さん、しい、ごお、で2人だから……いち、にい。えっと3人だ!」
『7人だよ。何で減っているのさ』
「あれ?でもほら、3人」
『折り返して指を開いていったのに、そのまま折った人数だけ数えるからだよ。分からないなら両手でやったらどうだ?』
「えーと……あれ、7人だ。あれ?」
『はぁ~』
ミリィ嬢は控えめに言ってあまり賢い子ではない。
比較対象が自分とマルクス少年しかいないのだから多少は仕方がないと思うのだが、それでも一桁の加法が分からないのは些かどうかと思ってしまう。
しかし4,5人ほど彼女同様解けなかったものがいるようで、この国の子供の水準が低すぎるのか、私の思う水準が高すぎるのか疑問が残る。
「9本だ!」
『6本だよ。あと授業中は静かにした方がいい』
この子が私の事を内緒に出来ているのはただの偶然だったのではないだろうか。
朝出かけて、学校が終わるのは昼過ぎである。そこから皆、家族の手伝いや簡単な仕事、遊ぶ者や勉強する者とそれぞれの生活に戻る。
ミリィ嬢はというと、
「ほらミリィ、これをここにやって」
「えっ、あれ?」
「……」
女子3人、河原で花冠を編んで遊んでいた。マリー嬢に文字通り手取りで教えてもらっているのだが、手を離されると数秒後には既に違う動きをしていた。それでもマリー嬢は笑ってまた教えているのだから凄い。一種、尊敬に値する。
ようやく出来上がったころには、一番に編み上げたロナ嬢はどこから取り出したのか布を広げて横になり、本格的な睡眠に入っており、それじゃあ2人はこれから何をするのかと思えば、その布に入って一緒に眠ることにしたようだ。
仕方がない、一つ、見張りでもしておこう。
実際に何かが来ても何も出来ないが、起こすぐらいの事は……どうだろう?起こせる自信はないな。
まぁ、夜には予習復習をきっちりさせるつもりだし、今は好きなだけ寝かせておこう。