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ミリィ嬢の一日

今回は一日の流れを書いてみました。1つ1つ取り上げていくと長くなるので端折って書きましたが、ちょっと会話少なめかも。

 ミリィ嬢の勉強メニューも特訓メニューも出来上がってしまっている私はすることもなく彼女が起きるのを待っていた。


 初日は話しやすいようにと寝るときも彼女の首にかかっていたのだが、あっちへこっちへと動かされ、仕舞いには彼女に潰され、痛い訳でもないが面倒なので枕の横に置いてもらった。


 それでも偶に寝ぼけて振り回されるが。


 マルクス少年のころは魔力の籠ったもの(おもちゃ)があったためそれを弄って暇を潰していたのだが、今回目覚めた時には何も残ってなかった。全て吐き出したのか、魔力として生命維持に使われたのかは分からない。


 なんでもいいから欲しいところだが、平民の子供にそれを要求するのは酷な話だろう。精々、彼女が成長するまで待つことだけだ。


 「う~ん……んんあ……」

 『おい、涎!垂れてる垂れてる!』




 二度寝をされる前に何とか起こし、洗面所に行ってもらう。


 「あははははは……」

 『笑い事じゃないぞ!まったく、次からはもう少し離しておいてくれ』


 彼女の唾液にまで魔力は通っているのは予想外だったが、そんな汚いおもちゃは必要ない。


 「これでよしっ!」

 『本当に大丈夫だろうな?臭くないか?』

 「臭くないもん!」


 だといいが。




 彼女が起きたのは7時で馬車が7時半なので30分の時間があった。その間に水回りや着替え、朝食を終える。


 300年ほどの時間が経つとこの世界でも多少の技術は進歩するようで、平民の彼女の家でも精製水具なるものがあり、それにより水洗トイレになっていたり、飲み水や顔を洗う水も井戸水ではなかった。


 精製水具は照明具と同じくそれ自体が魔力に既に魔力と魔法陣が組み込まれており、誰でも発動できるものだ。これらを自動魔具という。


 これらは定期的に交換の必要があるのだが、ではなぜ魔導具ではないかというと魔力が外部供給なため、庶民が普段使い出来る質の魔導具ではよほど魔力操作の優秀な者でないと劣化しやすく、その内正確に発動しなくなる。しかし利用者は金を惜しんで限界まで使うだろうし、そうすると事故が起きやすいからだ。




 出発の時間がぎりぎりになったため、慌てるように走って馬車乗り場に向かうと既に他の人たちは集合していた。遅刻したわけではないので悪くないのだが歩いてでも間に合うようにミリィ嬢には行動してもらいたい。


 馬車に揺られながら彼女たちはしょうもない話に興じて街まで向かう。街から一番遠いものは朝5時起きらしく眠っている者もいた。


 街までは原っぱがつづくだけで何もない。天気がいい日は遠くにある別方向の村が視えたりもする。


 30分ほどすると街の馬車乗り場につくのでそこでおり、歩くこと10分、ようやく学校に辿り着く。


 朝礼まで時間があるため教室でも話していると、周囲がミリィ嬢の話をしているのが聞こえた。


 「あっ、破壊姫(はかいひめ)だ」

 「ほんとだ、破壊姫だ」

 「しっ、声デカいって殺されるぞ?」


 ……昨日の一件からだろう、ミリィ嬢は破壊姫と呼ばれるようになったらしい。しかし一つ物言いたい。姫でいいのか?確かに整った顔をしているが姫って感じは一切ない。髪を伸ばして服を変え、拘束魔法でも使って動かないようにすれば多少はそう見えるかもしれないが……


 「いつもブツブツ変なこと言ってるよな」

 「ちょっと気味悪いよな」

 「変なこと言うなって、呪い殺されるぞ?」


 独り言の方は変わらずの評価だ。破壊姫はまぁ実力がありそうだしいいが、こっちは何とかしないとな。


 「魔法言語の授業はダメダメだったじゃん」

 「でも昨日の【身体強化(あれ)】、騎士とか冒険者じゃないと出来ないらしいぜ?」

 「俺らを騙して、こっそり殺されるんだ!」


 ほう。それは良い情報だ。ところで最後の君、ミリィ嬢は誰も取って食ったりはしないよ?


 「どけ、邪魔だ」

 「あっ、ルーク様」

 「す、すみません」

 「こ、殺される……」


 ルークが彼らの話を遮ってわざわざ彼らの間を通る。うわぁ、かなり睨んでる。


 「あー、でもあれだよな。かわいいよな!」

 「うんうん、ちょっと天然なだけだよね」

 「可愛すぎて殺されるわ~」

 「……」


 あっ、さらに険しい顔になった。


 ちなみに興味がないのだろう、ミリィ嬢の耳にはマリー嬢たちの声しか入っていないらしい。良い耳してるよな。




 2教科受け終わって家に帰ると、12時を過ぎたあたりになるので昼食をとる。それから食器洗いや庭の手入れなど手伝う。この時間はマリー嬢たちと遊んだり宿題をみんなでする時間に変わることも多い。


 夕方になると母上殿に頼まれて父上殿を迎えにいく。彼女の父上殿は厩務員とよばれる馬の世話や調教を行う仕事らしく、よくよく考えれば共働きではない上に庭まであるのだから平民の中でも裕福な分類になるのかもしれない。


 夕食をとってお風呂に入ると念入りに首飾りから水を拭き上げる。周りの華の形のフレームや紐は【状態保存】の魔法が書き込まれているので錆ないと思うのだが、しっかりやってもらいたい。


 夜になると部屋の照明具を付けて勉強の時間だ。教材がないので教科書を繰り返しやったり、口頭で問題を出したりしている。もう一周したら指なしで計算させよう。


 「8-□=3だから8-3で、ええと」


 昨日の今日だがこの程度の虫食いなら問題ない。学校では両辺の移動は習っていないのだが。




 彼女の集中力が切れかけた頃に勉強を止め、次は彼女の好きな魔法の特訓に入る。


 特訓は魔力を私と循環させたり、教科書に書いてある魔法陣書き写させたりする。


 魔力の循環のは徐々にパスを狭くして通させたり、彼女の器の限界量で循環させたりパターンを変えて行う。

 魔法陣の紙への書き写しは私がその都度、採点している。魔法陣の意味は半分ほどしか理解していないのだろうが、正確に描ければ問題なく動くし、これが出来るようになれば彼女だけの()()がある。


 【身体強化】の特訓は彼女が来週からというので来週から行うつもりだ。今日明日は昨日のアレのせいで身体に負荷がかかっているはずだし。




 ミリィ嬢が好きな魔法の特訓で取り戻した集中力が再び切れたところで切り上げて、就寝させる。現在夜の10時。きっちり9時間睡眠だ。


 結局昨日と同じ位置に置いて、私に文句を言わせる暇もなく彼女は眠りにつく。


 ……この寝つきの良さは一種の才能だろう。


 



 なんにせよ、ミリィ嬢魔法師化計画は着実に進んでいる。


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