勘違い/解決策
すこし前回と似た流れになっちゃった気もする。
さて、ミリィ嬢の魔法の特訓が始まったわけだが、やることは簡単である。
まず、私がミリィ嬢から漏れ出る魔力を出来るだけ取り込み、その魔力を纏めてミリィ嬢に送るというものだ。
体内に特異的に魔力の濃い部分が出来れば気づくだろう。
特訓が始まって3日目、私は変化に気付いた。。
『漏れ出る魔力量が増えている?』
「えっ」
私のこぼした声に、ミリィ嬢が不安そうな顔をする。
少し様子を見ようと特訓を止めて休憩していると、段々漏れ出る量が減って普段と変わらなくなった。
ではもう一度やってみるとどうなのかと試したら、再び漏れ出している量が増えた。
『ミリィ嬢、魔力は感じられるようになったか?』
「う、ううん……どうしたの?」
『少し考えるから待ってくれ』
「うん……」
ミリィ嬢は魔力が漏れ出ているのに気づいていない。ということは無意識に漏れ出している?しかもここまで濃い魔力を送り続けたが何も感じなかったらしい。ということは……
『そういえば、人並みの魔力しかないのに一日中漏れ出れいるのもおかしいのか』
「なんかわかったの?」
『あぁ、どうやら少し勘違いをしていたようだ』
「勘違い?」
『ミリィ嬢、君から魔力が漏れ出しているのは魔力の練り込みが甘いからではない。いや、甘いことには間違いないのだが、主な原因は別にあるのだ』
「な、なに……?」
『それは君の魔力受容量が極端に狭いのだ!』
「魔力受容量?」
『うむ。普通、個体の無意識化で生み出す魔力量とその受容量では受容量の方が多いのだが……わからんか。あー、つまりな、魔力がこのコップの中の水だとするだろう?するとみんなはこれのように、コップの中に水が全部入るんだ。そして水がコップ一杯になったら入れるのをやめる。これが普通だ。でもミリィ嬢の場合は水の量が同じだがコップの方がかなり小さい。そこに皆と同じ量の水を入れたらどうなる?溢れて水が漏れ出るだろう?それが今の君なんだ』
「えーと」
『これでもわからないか……簡単に言うとミリィ嬢、君が魔力を体内に溜められる量は他の人より極端に少ない上に、あふれ出ている状態に慣れてしまっているせいで魔力生成が止まらないってわけだ』
「そうしたら、どうなるの?」
『うむ』
『ミリィ嬢単独では、ほとんど魔法は使えないな』
「えっ……あ……っ!」
『あーもう、泣くな!単独ではって言ったろ?手段が無い訳じゃない』
少し面倒に感じる。彼女は泣く癖も付いたのだろうか。
「ううっ……魔法、使えるの?」
『使えるとも。私が魔力の保管を、コップになればいい』
「……」
『少し他の者とは魔法形成の形が異なるが、特訓次第で一定以上の魔法は使えるようになるだろう』
「……」
『まぁ、魔力を感じられるようになるのは最低条件だがな』
「……うん。がんばる」
『あぁ、頑張ってくれ。あと、それについても一つやってみたいことがあるのだが……』
「ミリィ……大丈夫?」
「えっ、うん。なにか変かな?」
「……いつもより、疲れてる……?」
「あははは……、うん、ちょっとやること多くて。ありがとねロナちゃん」
「休む……?」
「大丈夫だよ!」
私はロナに指摘されて、ショーケイの言っていた通りだ!と思う。
『いいか、君の周りは常に魔力が漂っている空間になっている。そしておそらく君の身体にも全身に無意識で動かせる程度の魔力が巡っているはずだ。これは【身体強化】の基本になっているものだ。つまり常時軽く魔法を使っている状態だな。これらは全部無意識で行われており、他の魔力の濃さの差も人より小さい。だから魔力に気付かなかったんだ』
彼の言葉は難しくてよくわからないけど
『だからこれから3日……いや、確実性を重視して5日間、君の需要量を超えた魔力の全てを私が取り込もうと思う。おそらくこれまでに比べて動きづらかったり、疲れやすくなったりするだろうから、気を付けること。そして5日目の最後に君にもう一度、さっきまでやっていた魔力を送る特訓をしよう』
いい人(石?)なのはわかる。
「なんだか体がそわそわする」
『うむ。それが魔力のない状態だ』
「ショーケイ、ありがとう」
『うむ。その言葉は4日後に改めてしっかり聞くとしよう』
ちょっとにムッとするけど。




