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石になって三百年!  作者: トースター
プロローグ
1/18

〇〇卒業

久しぶりの投稿ということで、異世界転生モノをやってみます。

さて、サブタイの〇〇に入る文字は以下のどれでしょう?

1 高校

2 童●

3 人生

 人とは何なのだろうか?


 僕こと、遠山(とおやま)翔啓(しょうけい)は世間一般からすると天才に分類される。しかし、その世間一般とやらは自らとは違う『異物』を人とは扱わないのだ。『そいつの名前=異端な部分』と表せば分かりやすいだろうか?つまり異端こそがその者の存在を表し、その存在が異端になるのだ。


 ……。


 まぁ、この式に僕を当てはめるとこうなる。



 『遠山翔啓=魔法界最大の怪物OR気狂いの人形遣い』



 周囲から人形遣いと言われているが、正確には違う。私が作っているのは『人』である。彼女たちにはAIとはまた別の、自立した魂が宿っているのだ。


 あれは2年前のことだった。16になった俺はといってもそれまでと何も変わらず、入学初日に登校免除され、僕以外誰も住んでいない研究施設(自宅)で、人体と魂の作成、定着の実験を行っていた。

 出来るだけ魔力伝導効率、魔力保持率の高い素材を集めて溶かし、幾重もの術式を刻みながら人の形を模っていく。そこまでの理論には自信があったが、流石に生命創造ともなると緊張した。ここで失敗すれば、素材の厳選にかかった6年間が水の泡と化すのだ。これらの最上級の素材で駄目だった場合、また理論からの見直しとなる。


 そうして作られた最初にして最高の『人』が茉弥(まや)だった。人とは思えない程に整った顔と艶やかな黒髪をもつ自分と同じ背丈の少女は、一糸纏わぬ自分の姿に恥ずかしがる様子もなく、無機質な目で周りを見渡していた。


 「やぁ、君の名前は茉弥だ。そして僕の名前が遠山翔啓。翔啓と読んでもらって構わない」

 「……」

 「言語能力と主な言語は書き込んだはずだが、理解できないか?それとも聴覚が正常に機能していないのか?」

 「……モンダイ、アリ マ セン」

 「ふむ。まだ体が馴染んでいないのかな?とりあえずそこで待っているといい。今から衣服を作成しよう」

 「……リョウカイ シ マシ タ」




 それからの一年間は全ての時間を彼女の世話に費やした。初めは与えられた知識と実際の行動との差異に手間取りながらもこちらの要求通りに行動していたが、3ヶ月も経つと外部に売る用の魔法の研究に開発側として参加するようになり、半年が過ぎようとするころには徐々に感情というものが芽生え始めていた。


 そして遂には、自らを作り上げた方法……生命創造の改善策、つまり完璧に見えた僕の理論を、僕を超えるだけの存在になったのだ。

 その方法を利用して作成すれば初めから感情を持った『人』が出来あがる。


 もともと経過観察に一年を費やそうと思っていた僕は、その期間が終わったころから様々な新しい『個体』を作り上げていった。

 『個体』と表している所から察するものもいるかもしれないが、作ったのは人だけでなく、動物、魔物、魔族、精霊、知識ある物インテリジェンス・アイテム等々、魂を持つものなら手あたり次第、無遠慮に行った。


 「ねぇねぇ、翔啓」


 そしてこうやって昔を振り返っている今も作っている。


 「翔啓ってば!」

 「うん?どうした、茉弥」


 今は術式を刻み込んでいる段階で目を離せないが、いつの間にか茉弥が近くに来ていたようだ。


 「もう昼時だったか?先に食べてもらってかまわないぞ」

 「……うん。あ、えと、「おなかすいたーっ!」……」

 「ほら、(くれない)が我慢できないって言ってるぞ?僕ははこの子が出来上がってからいただくから気にしないでいい」

 「……分かった」

 「ねーさまっ!おなかがぺこぺこ!」

 「うん、紅。先に食べてよっか」

 「あれ?しょうけいにーさまは?」

 「翔啓は忙しいから後でだって」

 「わかった。にーさま、あとであそぼうね!」

 「あぁ、時間が余ったらな」


 飛び込んできた紅を連れて茉弥が部屋を後にする。現在の彼女は研究の手伝いよりも下の子達の世話を優先して任せている。今や150人近い数の子達を育てていけているのは、半分は彼女のお蔭と言えるだろう。


 「さて、早く完成させてひと眠りでもするか」


 様々な個体を作り上げているが、どれも一般のそれとは一味違う。彼女たちには僕に匹敵するほどの能力をそれぞれ身に宿している。炎魔法特化、索敵特化、精神魔法特化、料理特化etc……もちろんそれ以外も人並みには出来るが、そうすることで強い個性が生まれやすいのだ。唯一、茉弥は何も特化していないのが彼女は比較的平凡で、しかし皆のまとめ役となっている。彼女は最初の個体で成長を重視したため、様々なものを魔力として吸収できる能力はあるのだが。


 また新しく誕生した緑で半透明な体をしたスライムは目を覚ましたようで周囲をみている。


 「ここは……?」

 「おはよう。君の名前は(あんず)だ。そして僕の名前は遠山翔啓。気軽に翔啓と呼んでもらって構わない」






 「……」

 「?どうしたの、まやおねーちゃん?」

 「……ううん、何でもないわ。さっ、昼食にしましょう。紅ちゃん、皆を呼んできて」

 「はーい!」


 「……」







 最近は騒がしくなった僕の研究施設も静かになる深夜。



 下半身の付け根に強い刺激を覚えて僕は目が覚める。何事かとそちらを見るとそこには生まれたばかりの恰好で跨る茉弥がいた。


 「あ、やっと起きた」

 「な、何をやっているんだ。茉弥」

 「えへへぇ、茉弥ね。翔啓の子供が欲しいの!」

 「わかった。また朝になったらから作るからどいてくれ」


 何か引き金をひいてしまったのか、甘ったるい雰囲気が一変する。


 「また……また、作るの?」


 彼女の変化に虚を突かれた僕は、しかし茉弥が僕を魔法で拘束する。


 「な!?」

 「また私を蔑ろに……」

 「何をするんだ茉弥、放すんだ!」

 「嫌だよ、これを解いたらまた私を見てくれなくなる」

 「そんなこ「あるよ!」……」


 茉弥の様子がおかしい。どこか書き込まれている術式に異常が発生したのだろうか。

 一先ず、すぐにでも拘束の魔法を解かなければと思い、全力で魔法を行使する。しかしビクともしない。いや、これは……っ!?


 「(かなで)の拘縛魔法……」

 「そうだよ。奏ちゃんが得意だったやつ」

 「何で、茉弥が……」

 「何でだろうね?当ててみて翔啓」


 「ほら、こんなに騒いでいるのに誰も来ない」


 「茉弥と翔啓のふたりだけ」


 「他は誰も居ない」



 そう言われるとそうだ。普段ならこれだけ騒がしければ誰かしら顔を見せてくる。それがないとすると、いや、戦闘や隠密に特化した者もいたんだぞ。だが……。



 「皆を、殺したのか」

 「ううん。はずれ。正解は皆、食べちゃったの」

 「食べた?」

 「うん、こう、ぱくぱくぅって」


 そういいながら、抵抗する僕の魔法を魔力に還元して自身の身体に取り込んでいく。どころか、僕の服まで魔力に変換されて彼女に取り込まれる。


 「食べるたびに皆の力も貰って、あと腹立たしいんだけど、翔啓への気持ちや独占欲もどんどん強くなっていったの」

 「なっ……」

 「だからね、これからは二人っきりなの。ずっと、二人っきり。ずっと」


 再び魔法を構築して抗おうとするが、すぐにまた魔力に還元されて吸収される。


 茉弥の顔が近づいてきて、そして口の中を蹂躙される。


 精神魔法の気配もしたが、深く考えることは出来なかった。


 リリリっと電話の音がなっている気がする。


 誰だこんな夜中に非常識な。


 だがどうでもいい。




 あれからどれだけ経ったのだろう。


 自分が誰なのかも思い出せない。




 そうして僕は静かにいや怪物、気狂いらしく狂気に犯されながら死んでいった。


 奇しくもその日、同級生は高校に最後の登校をしていたのであった。

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