武器屋
朝御飯を食べ終わり、宿屋の外に出る。
雲一つ無い快晴で、絶好の散歩日和と言ったところだろうか。
「よし、まずはギルドに行くとしよう」
「そういえば、ギルドのシステムってどうなっているんですか?」
「あ、えっとな。ギルドは判るよな」
「一様判りますけど……」
「で、その下にグループと言う存在があってだな」
「グループ?」
「まぁ、一言で言えばグループと言うのは数人から数十人単位のギルドみたいなものだ、でそれをまとめるのがギルドと言う存在だ」
「じゃあ、今日、ギルドに行く理由は……」
「その、グループを作りに行くんだ」
「ダニー、それ本当?」
「あ、ああ、そうだけど。てかリリー、いきなり出てこないでよ」
「あ、ごめん……」
「それより、ちょっとおまけがあるんだ」
ダニーはニヤニヤしながら話す。
そのまま三人はまっすぐ街の中心にある冒険者ギルドへ向かう。
道の途中にある建物の殆どがレンガで出来ているか、木造だった。
陸は周りを確認するが、どうやら鉄筋コンクリート造りの建物は一つもない。
気になってダニーに聞いてみるが、「鉄筋コンクリートとは?」と聞かれたため、この世界ではビルみたいな建物は見つかることは無いだろう。
街の中心に近付くにつれ、段々と人通りも増えていく。するとリリーがダニーの後ろに隠れてしまう。
陸は、リリーが人見知りだったことを思い出す。
「おい、隠れるなよ……。まったく……」
「だって……」
「はぁ、まあいっか」
ダニーがため息をつき、呆れた顔で言う。
それを見ながら陸は、クスッと笑う。
「なんだ? 笑ってんのか?」
「いや、二人が凄い仲が良いなって」
「そうか?」
「え?」
不思議そうな顔をしてダニーとリリーが陸を見る。
二人でそんな行動をしてきたため、 どうしていいかわからず困惑してしまう。
そんなことをしていたらリリーが何かを見つける。
「ダニー、あれがギルド?」
リリーが指差しして言う。
陸は、リリーの指差した方を見る、すると周りの建物と比べると、少し大きめなレンガで出来た、建物があった。
二階辺りにある看板には、冒険者ギルドと書かれていた。
三階建てだが、それより大きく見える。
正面にある扉からは色んな人が出入りしていた。
ダニーは躊躇無くギルドの中に入って行く、その後ろで隠れるように歩くリリー。
陸はうわぁ、こんなのあるんだ、と思いながら中に入る。
ギルドの中に入る。
ダニーは奥の方にあるカウンターに座って、受付の人と何か話していた。
リリーは、……また、ダニーの後ろに隠れている。
「では、この内容で登録します」
「ああ、よろしく頼む。それと、どれくらいで終わる?」
「今からだと大体……一時間から二時間くらいですかね」
「ああ、そうか……。じゃあ、他のとこに行っていてもいいかな?」
「構いませんよ。戻ってきた時に、先程渡した紙を受付に渡せば大丈夫です」
「わかった」
「では、これで、失礼します」
そう言って、受け付けの人はカウンターの奥に入って行った。
それを確認したダニーがカウンターを離れ、店の外に出る。
陸は、あれ? もう出るの?とした感じでダニーの後を追う。
「さて、次は……あそこに行くか」
ダニーが指差しして言う。
その先には、看板に武器屋と書かれた建物だった。
「いらっしゃい」
ゆっくりと、店の扉を開く。
武器の点検をしている、店長らしき、小太りの男性が大きな声で、出迎えてくれた。
店の中には、沢山の武器や防具がところ狭しと並んでいた。
「うわぁ、凄い品揃えだ」
「凄いでしょう、この街の中では一番大きいんですよ。あ、私はこの店の店長をしているラムジと申します」
ラムジは、片手に大きなスパナみたいなのを持ちながら、話す。
その目は、まるで新しいおもちゃを見た、子供みたいだった。
「で、今日は何をお探しで?」
「ああ、俺たち三人の武器が欲しいんだ」
「なるほど。で、どのような物が良いでしょうか?」
「どんなのがあるんですか?」
陸は、周りの武器を見ながら尋ねる。
ラムジは武器を一つ一つ持ち、説明する。
「まずは、短剣と長剣ですね。まぁ、言わなくてもわかると思いますけど」
「そうだな」
「で、これの派生型がこの奥の棚に並んでいます」
「どれどれ、…………」
奥の棚を覗いたダニーの動きが止まる。
「あれ? ダニーさん? どうしたんで……」
陸も奥の棚を覗く。
すると、とんでもない位の武器が並んでいた。
店の入り口に並んでいた武器はほんの一部だった。
同じように棚が五列以上ある。
もう、何て言えばいいかわからない。
見えた武器だけで数千種類、大きさの違うやつも数に入れれば、数万には、なるだろう。
いったい、どれだけ大きい店なんだかと思う、陸と、ダニーだった。
ただ、なにが面白いんだろうと思うリリーを除いたら……。
「ははは、みんな同じ反応をするんですよ」
ラムジは豪快に笑い、店の中を案内する。
「どんな用途で、使うかでも結構変わってくるんですよ。例えば、普通に戦うのであれば、こういう長剣。魔力を込めることのできる、タイプの剣。他には……」
棚から武器を出てくるだけ取り出す。
既に出てきただけで、長剣、短剣、なぜか刃が五本も六本もついているやつ、弓、謎の棒、その他もろもろ、これで十種類も出てきた。
しかし、棚からどんどん武器を出しているのに、まったく崩れる様子が無い。
もうなにも言うまい、というか言うだけ無駄だろう。
「で、あと、色んな人が使うんですが、武器を魔法化するのがあります」
「お、それにするか」
確かに、魔法だといつでも取り出せたりするから、メリットは大きいと思うが、どうやるんだろう。
陸は確認のため、魔法の本を取りだそうとしたそのとき。
「さらに武器魔法を使うと、自分でも武器を作れるんですよ」
「「え?」」
陸とダニーは驚きを隠せない。
けど、やっぱりリリーは、何をしているんだろうと思っていた。
「やっぱりそうなりますね。まぁ、もう少し中を見てからでも構いませんよ」
「わかった、そうしよう」
陸とダニーは自分に合う武器を探しに行く。
触ってみたり実際に使ってみて自分に馴染むか試してみる。
「これは、こう持った方が楽だと思いますよ」
「あ、ほんとだ」
「で、少しここに魔力を込めて降り下ろしてみて下さい」
言われた通り、陸は剣に魔力を込め、ゆっくりと降り下ろす。
すると、降り下ろしたところに、魔法の刃が現れ、そのままゆっくりと壁に向かって進む。
刃は、壁にぶつかると、光の粒子になり、フワッと消えてしまった。
「おー、なんだこれ」
「魔力の込めかたによって、攻撃方法も変わります。攻撃方法も自分の自由に出来ますし、そうすれば、固有魔法に繋がります」
「あ、そういうのも固有魔法に入るんですか?」
「はい。ただ、自分のオリジナルの攻撃に限りますが」
「例えば、自分で武器を作った場合は……」
「あ、その場合、固有魔法になりますね」
陸は、それを聴いて自分で武器を作ることにした、その方が自分に馴染みやすいと思ったからだ。
ダニーは既に別の武器を、決めている。
リリーについては、具現化魔法で武器を作れるから無くて大丈夫とのことだ。
だったら、みんなの分も作ればいいってなるが、どうやら、出した本人しか使えないとのこと。
「では、武器の作り方を説明します」
そう言って、店の奥に案内する。
奥には魔方陣が書いてあり、いかにも魔法を使ってます感があった。
「まず、この魔方陣の端に手を置いて、自分の思う武器のイメージを込めて魔力を込めて下さい」
陸はそう言われて、手を置き、魔力を込める。
加減がわからないが、ラムジは「全力で大丈夫です」と言ったため、とりあえず出せる分だけの魔力を込める。
そうすると、魔方陣が静かに光り始める。
五分ほどすると、光っていた魔方陣の中心に武器の一部が現れる。
まだ、ほんの一部で、どんな武器かわからない。
「では、仕上げに移りましょう」
そう言って、ラムジは魔法陣に手を置き、魔法の詠唱を始める。
「汝、召喚者の意思に従い姿を見せよ……通常魔法――『武器創成』」
次の瞬間、ラムジの体が光る。
そして、姿を現そうとしていた武器は、陸の体に吸い込まれるようにして消えた。
「これで終了です」
「あ、これでいいんですか?」
「はい、後は魔法を使えば出せるはずです」
陸は、魔法の本を取り出し、武器の項目があるか確認する。
すると、新たなページに武器魔法の説明が書いてある。
内容は、武器魔法の発動方法。
武器魔法は自分のオリジナルの武器の場合は固有魔法に、その他は通常魔法に分類される。
固有魔法の場合は、発動時レベルを決めて発動することができる。
レベルは1から5まであり、レベルに合わせて、武器の形やパワーが変わる、その代わり魔力の消費量も比例して上がる。
「なるほど……」
「試しに使ってみますか?」
「出来るんですか?」
「はい、あちらで使用可能になっています」
ラムジは笑顔で案内する、武器屋として新しい武器が見れるのが嬉しいのだろう。
あちらとは、言われたものの、とてつもなく大きいこの店では、かなりの距離がある。
「はい、では試しに使ってみてください。あ、まずはレベル1でお願いします」
「あ、わかりました。……こんな感じかな固有魔法――『武器召喚レベル1』」
手を広げながら魔法を発動させる。
すると手のひらに拳銃みたいな形をした武器が現れた。
見た目からオートマチックに見える形をしている。
「……これは、拳銃?」
「おおー、これは……初めて見る形ですね。それに剣みたいに切るようなところが無い。弓みたいに弦も無い。一体どういうことでしょう」
「これの弾は無いのか……あ、もしかして、ラムジさん、ここで使ってみても大丈夫ですか?」
「? 構いませんよ。私はこの武器の性能が気になりますし」
ラムジはきょとんとして答える。
陸は、一つ思い浮かぶことが有った。
この拳銃に必要な弾が無い、つまりこれで攻撃するとき、弾がいらないということ。
弾は魔力から取るのではないか、逆に言えば、魔力を込めれば込めるほど、ものすごい攻撃力になるのでは?という疑問が湧いていた。
結果は……正解だった。
用意されていた的に向かって一発だけ放つ。
だが、予想以上に少ない魔力でも相当な攻撃力になるらしい。
本来であれば、壊れることの無いはずと言われていた、的が粉々になってしまった。
やっちゃったと思う、陸だった。
「おー、レベル1でこんな威力ですか……ならちょっと外で試したほうがいいですかね」
そう言ってラムジは店の外にある練習場に場所を変える。
その間、陸はこの武器は拳銃に近いもので本来は別の物なのではないかと、思う。
なぜなら、最初の一発の時に、パッチっと静電気みたいなのを感じた。
しかも、煙が一切出てこない。
「では、レベル5にしてみて下さい」
仕方がない、こういうものはやってみないとわからない。
そう思うしかない。
陸はため息をついて、もう一度魔法を使う。
今度はレベル5にして。
「うわ!?」
手を広げて、魔法を唱えたその瞬間、いきなりごっそりと魔力が減る。
どうやら、レベル5の場合相当な魔力を使うらしい。
が、一様、無事に完成したらしい。
長さは、一メートル五十センチ位で、形としては拳銃ではなく、先端から一メートル位まで左右に平行になるようにして金属の棒があるだけであった。
「おー、さっきとまるで違いますね」
「陸、これは一体?」
「わ~、カッコいいなぁ」
三人が同時に色んなことを言う。
「これは、……レールガン? でも……ここにコイルが巻いてある、てことは……」
陸は何かの本で読んだレールガンと特徴が似ていることに気づく。
そしてコイルが巻いてあることからコイルガンの機能も、持っているのではないかと推測できる。
「とりあえず、使ってみます。皆さん、離れていて下さい。これは僕もどうなるかわかりません」
そう言って、三人を少し離れさせる。
そして、少しだけ魔力を込め、引き金を引く。
そしてさっきとは違いドンという音をたて、的が粉々どころか、消え去ってしまった。
「うわぁ、なんだこれ」
「だ、ダニー……ど、どういうこと?」
「素晴らしい、こんなもの見たことがない。ますます興味が湧いてきました」
驚きを隠せないダニーとリリー、逆にテンションが上がってきているラムジ。
その反応も何となくわかる。
恐らく、レールガンなんてこの世界ではチートに近いかもしれない。
そもそも、レールガンとは、二本のレールと電源を使い、砲弾を飛ばす。
電力が強ければ強いほど強力になる。
最近では十キロの砲弾をマッハ八で飛ばすこともできるらしい。
だが、その分だけ莫大な電力を使うが、これについては、魔力が電力と同じ作用をするらしい。
ちなみに、コイルガンはコイルと電流を使う。
レールガンとの違いは、電力がそこまで必要でもない。
そして、陸の出したレベル1の時はレールガンではなくコイルガンの状態であった。
「えーと、陸、その武器は一体どういう効果があるんだ?」
「あ、……多分、弓をかなり強化した方向でいいのかな。ただ、弓とは基本性能が違うと思います」
「そうか……。その武器もお前の居た世界のやつか?」
「そうだと思います。ちょっと違いますけど」
ダニーはなにかを納得したようで他のレベルのも見ようと言ってきたため、試してみることにした。
レベル1 オートマチックガン(コイルガン)
レベル2 散弾銃
レベル3 ショットガン(レールガン)
レベル4 マシンガン(レールガン)
レベル5 スナイパーライフル(レールガン、コイルガン)
となっていた。
ここまでの結果で普段使うのはレベル1だけの方がいいだろうとのことになった。
それも相当使う魔力を制限して。
「では、そろそろギルドに戻るか」
「わかりました。また、いつでもお待ちしていますよ」
そう言うとラムジは店の扉を開ける。
さすがだ、動きが慣れている。
そうして三人で店の外に出る。
ちなみに、会計は既にダニーが済ませてある。
「よし、じゃあギルドに行ったあとは何処に行こうか」
そう言って次に行く場所を考えていると、後ろから声が聞こえる。
五人組で、全員がガッチリとした装備で、長剣を持っていた。
「そこの三人組、止まれ。」
「なにか用かな?」
「さっき、武器屋で買ったものを差し出せ、さもないと……」
「さもないと……。なんだって」
ダニーが顔色一つ変えずに五人組の方に話しかける。
どうやら武器を奪っていく盗賊らしい、それを確認すると、なぜか、街の外で決着をつけるようになってしまった。
盗賊との距離は大体十五メートル位だ。
しかも、周りに野次馬が一杯。
「全力で来い、武器泥棒さん」
「ふざけるな! あとで後悔しても知らんぞ」
一人が青筋をたてながら言う。
「リリー、一番右のやつをやれ、殺さない位にな。陸、お前が左の二人だ、出来るだけ時間を掛けて倒すように。俺は中央の二人だ」
「ダニー、わかった」
「は、はい」
そう言ってダニーは一歩前に出る。
それに合わせるようにリリーが魔法の詠唱をはじめる。
陸にとって、この世界では始めての実践、しかも魔物ではなく盗賊。
どこまでやっていいのかわからないが言われた通りに武器を出し、動く。
「では、本当に強いか試さしてもらうぞ」
ダニーがそう言うと、盗賊たちがものすごい顔をしている。
苛立ちを隠しきれないらしい。
それに合わせるように野次馬達が歓声をあげる。
「さぁて、陸、お前にとって始めての実践、楽しまなくちゃ損だ!」
それを聴いて盗賊達が一気に走り出す。
「ふざけるな! お前ら、構わん、殺してしまえ!!」
「「「「うぉおおおおお!!!」」」」