プエルテへ出発
「では、出発しますか」
ダニーが体を伸ばしながら言う。
「で、どうやって行くんですか? 朝のんびりしすぎたせいで、もうすぐ昼になりますけど」
「ダニー、私、ご飯食べたい!」
「ああ、わかった。二人同時にしゃべるな」
あきれた顔をしながらダニーは歩き始める。
二人は置いていかれないように急ぎ足でダニーの後を追いかける。
「じゃあ、目的地に一時間で着く方法を試すか」
「あれ? 三日位かかるって昨日言っていた気が……」
「抜け道があるんだよ」
そう言ってダニーが向かった先は大きな洞窟の入り口だった。
ダニーは袋の中からランタンを取り出し火をつけて洞窟の中へ入り、奥に向かっていく。
「うわあ、真っ暗、それにすごい数の魔物がいますよ」
「どれくらいこの中にいる?」
「この近くにはあまりいないけど、奥に行けば行くほど数が増えてますね」
陸は感じた情報をストレートにダニーに伝える、すると笑いながら「それでこの中の道のりはわからない?」と言ってきてようやく何がしたいのか理解した。
「つまり、これを使って出口まで行くと」
「出来るか?」
「一様わかりますけど……」
「まあ、関係ないけど。もっとずるい方法を使うけどな」
「え?」
「そもそもここがどこだかわかるか? 何か見覚えがないか?」
「?」
そう言いながらさらに奥に進んでいくすると不自然な出口があった。岩が溶けるように穴が開いていて外を見ると大きな草原に向こうに岩場があった。それを見て陸はようやくここはどこだか納得した。
「ここか……」
この世界に来て迷子になった洞窟、そしてここで初めて魔物に出会いダニーに助けてもらった。もしかしたらここから元の世界に戻れるかもしれない。だが今ずっと待っているわけにもいかない、それよりこの世界でやれることだけやろう。
昨日、ダニーと話して決めた目標を強く心に刻む陸だった。
「では、抜け道を使うぞ」
「ここで?」
「それより、ご飯食べたい!」
「それは後で」
「……なんで……」
リリーがふてくされながら歩く。
するといきなりダニーが小さな羽を出す。
「それは?」
「これか? これは洞窟で迷った時に使うやつ。これを使うと、洞窟の出入り口で行ったことのある所を選んでワープする。普段は迷子になったり、怪我をしたときに使うだが、今回はこれを使うぞ」
「ってことは……」
「俺の近くにいろよ……」
陸とリリーがダニーの近くに行く、ダニーはそれを確認して、羽から手を離す。すると、フワフワと地面に落ち、いきなり光って、地面に二メートルくらいの魔方陣が現れた。
「では、プエルテへ出発!」
**************
洞窟の出入り口にたどり着く。
最初に入ったところとは違う、場所で目の前に高さ五メートル位の城壁が見えた。そして中央に城門があり二人の門番が見張っていた。
「うわぁ、大きいなぁ」
「さて、入るか」
三人は城門を通り街の中に入る。すると、正面には活気に溢れている商店街があった。
そこを通り、先に宿屋に向かう。
街の北側にはたくさんの宿屋があり、様々な人が街の中を歩いていた。
ダニーはたくさんある宿屋の中で一つ選び、そこに泊まることにした。
「見つけた。ここにしようか」
「ここは?」
「俺が昔から使っているとこ、来るのは二年ぶり位かな」
そう言って宿屋に入る。
ダニーは宿屋に入って右側にある受付の前に立ち、受付の人に何かを耳打ちしてしばらくすると、受付の奥の方から誰かが現れた。
「久しぶり、いつになったら来るのかずっと待っていたのに」
「ごめんごめん、最近色々とあってね」
「もしかして後ろの一人が……」
「察しがいいね」
そこから先は小さな声で話していたため、陸は聞き取れなかった。
そして、話し終わったらしく、泊まる部屋に案内される。
「えーと、301だから、ここかな」
ダニーは部屋の鍵を開け中に入る。
部屋は少し大きめで三つの部屋に別れていた、のんびりするには充分だった。
「夕飯でも作るか。リリー、陸、手伝え」
「はーい」
「わかりました」
*************
夜、九時を過ぎたころ。
陸は宿屋の中にあった大浴場に行ってきて、ちょうど帰ってきた。
「大浴場、行ってきましたよ。二人はどうするんですか?」
「おかえり。リリーはここのシャワーで、俺は後で大浴場に行ってくる」
ダニーの声が奥の部屋から聞こえる。そして、手招きして陸を呼ぶ。
「ちょっと来て。面白いものが見えるぞ」
「?」
すぐに向かうとそこには綺麗な星空と沖の方に船の光が星空に同化して言葉にできな位の景色があった。
「うわぁ、凄い。こんな景色見るのは初めてだ……」
「確かに、これこそ港町って雰囲気が好きなんだよね」
「……ところで、リリーさん何しているんですか?」
「ん? これ? 今、絵を描いているの」
そう言いながらリリーはじっと絵を描く。
「そうだ、明日は行くところがたくさんあるから気を付けろよ」
「え? どこへ?」
「えっと、……冒険者ギルドに食材を買いにいって、……何するんだっけ? まあいっか……」
ダニーは誤魔化しながら大浴場に行って来ると言って部屋を出てしまった。
それを見て陸とリリーはくすりと笑っているのであった。
「あれは……逃げたってことですか?」
「ダニーはね、昔からあんな感じなんだよ。誤魔化す時はどこかに逃げようとするの」
「ははは、……昔からっていつ頃からです? というかダニーさんとリリーさんは今いくつなんですか?」
「あ……、それ言うの忘れてた……」
ひょっこりとダニーが顔を出して申し訳無さそうに言った。
「「出た」」
「……出たってお化けじゃないんだし。それと、年齢だが俺は今、二十二。リリーが十九だ」
「なんか、さらっと言うべきじゃないですよね……」
「す、すまん。あと、出会ったのは俺が十四の時だ」
「陸は何歳なの?」
少し怒っている陸にいきなりリリーが質問してくる。
「えっと、今、十八才ですね」
「あっ、そうなんだ。意外だな」
「へ~、私より年下なんだ~」
「……僕、何歳に見えます?」
「少なくともリリーよりは年上だな」
「なるほど……」
「……俺は大浴場に行って来る。じゃ……」
なぜか納得してしまった陸、そしてまた部屋を出ていくダニー。
「やっぱり、仲が良いですね。じゃないとこんな感じに話せませんよ」
「そうかな? ……そうかもね」
「兄弟みたいって良いですよね」
「うん!」
のんびりした雰囲気、陸は今までこんな雰囲気を体験してないと思った。
いや、体験したかもしれないが、予定と言うものに縛り付けられ、自由と言うが中身は時間を気にしたり、やらなくてはいけないものばかりの色々で気がつかなかっただけかもしれない。
気付いたらリリーはすでにすぐそこのベットで寝ていた。
そして後ろから声が聞こえる。
「陸、なにのんびりしているんだ」
「うわ! ……なんだ、ダニーさんか」
「なんだって俺はお化けか」
「いや、そういうわけではないんですけど……」
「ならいっか。……というかもうすぐ十一時だがいいのか?」
「え? もうそんな時間ですか」
慌てて時間を確認して、陸はベットに寝転がりそのまま夢を見る。
それを確認したダニーは少し作業をするかと言って隣の部屋に行き、ごそごそとなにかをするのであった。
**************
夜中二時過ぎ、陸は目が覚めてしまった。
時間を確認してから、水を飲みに行こうと隣の部屋に行く。
するとこんな時間まで作業をしている、ダニーの姿があった。
「……あれ? ……ダニーさん、こんな時間に何しているんですか?」
「ん? ああ、ちょっと明日使うものをな。それより、お前こそ何しているんだ?」
「あ、ちょっと目が覚めちゃったから水でも飲もうかと」
そう言って水を取りに行く。キッチンに備え付けられたコップを手にして水を入れまたダニーの方に行く。
「ダニーさんは寝ないんですか?」
「俺か? 俺は普段三十分位しか寝ないぞ」
「え? 三十分?」
「こら、声が大きい。今何時だと思っているんだ」
「……すいません」
「まぁ、驚くのも無理はないか。……昔からの癖でな、いつどこで何が起こるかわからないところで過ごしたせいで、睡眠時間も短くなってしまったもんで気付いたら、三十分寝れば大丈夫な体になってしまったんだ」
「……そうなんですか」
「まぁ、慣れだな。この事もちゃんと、どっかで話さないとだな」
ダニーは作業をしながらしゃべる。
陸は、しばらく話していたら、眠くなってしまいベットに向かう。
隣のベットではリリーが寝言で「もう食べれないよ……ふふふ」なんて言っていたためくすりと笑いながらまた、夢の世界へと落ちるのだった。
そこまでをすべて見ていたダニーはため息をつき考え事をする。
「ようやく寝たか……、凄い人見知りのリリーがあそこまで普通に会話できるとは……。まぁそれがあいつの良さなんだろうな……。今頃になってあいつの気持ちがわかる気がする、『自分の気持ちは誰かに言え、そうしたら楽になる』か……だがそれを言っていいのかどうか……」
蚊の泣くような小さな声で呟く。
「本当の自分を見せたら誰も近寄らなくなってしまう、こんな力要らないよ……。でも……もう押さえきれないかも……。……ちょっと外に行くか」
さっきまでやっていたことを終わらせ、フッと部屋を出ていった
**************
外は大きな満月が見え、月明かりだけでもどうにかなる感じだった。
ダニーは城門の外に行き、洞窟の入り口の近くまで来た。
「ここだったら気づかれないかな……」
「そうかもね」
後ろから声が聞こえる。そこには動きやすい服で腰に短剣を付けた、長い金色の髪をした女性が立っていた。
「脅かすなよ、オリーブ」
「ごめん、結構今いるところの警備が固くてさ。まぁ、絶対今日辺り来ると思っていたからね」
「また、あの魔法か?」
「やっぱりバレるのね」
「そりゃそうだ、一体何年前から一緒だったと思っている」
「えっと、今、二十二だから……十二年位前?」
「もうそんなになるのか……、時が経つのは早いな」
「そうだね……あ、この前はごめん、部下の前だとどうしても……ね」
「まぁ、そうだろうな」
二人は近くの岩に腰掛けて、しばらく話す。
「ところで、陸って言ったけ? あの子に見つからないように力を使えばいいじゃん」
「……それがな【魔力検知】を使えるんだ。おまけに属性もバレるからな」
オリーブは「そりゃ無理だね」と笑う。同じように、ダニーも笑う。
「わかった!」
「? どうした?」
「あの二人に本当のことを言う方法が」
「どうやって?」
オリーブはニヤニヤしながらダニーの方を向く。そして、そっとダニーに耳打ちする。
「なるほど、そうするか。……よし、やろうか。」
「ね、ちょっと後になるけど」
「そこは仕方ないな」
「うん。……てか、そろそろ戻らないとかな」
「そうだな、じゃあ、またな」
「うん、またね」
そう言って二人は別々の方向に帰った。この後、二人が考えた計画が国を揺るがす大事件に繋がることは、まだ誰も知らない。
**************
朝、日が昇るころ、陸が目を覚ます。まだ、リリーは寝ていた。
重いまぶたを開いて隣の部屋に行くと、ダニーがキッチンで朝御飯を作っていた。
「お、やっと起きたか」
「やっとってまだ六時前じゃないですか」
「あ、ほんとだ」
呆れた顔をして、陸は、自分の荷物を確認する。この世界に来た段階で魔法の本が現れたため、他の物もあるか確認のためだ。
答えはなにも無く代わりに魔法の本の中に、【魔法の種類】と書いてあった。
「ダニーさん、ちょっといいですか?」
「なんだ?」
「またこの本のページが増えたみたいです」
「……なんて書いてあるんだ?」
「【魔法の種類】と書いてありますね。内容は……通常魔法、特殊魔法、固有魔法の説明と書いてあります」
「あー、わかった。後で説明する」
陸は例のページをダニーに見せる。ダニーはフーッとため息をつき、一瞬動きが止まったあと、料理を手伝えと言う。
「もうそこまで出るのか……」
「え? もうってどういうことですか?」
「えっとな、魔法には種類があってだな……」
「種類って属性以外にあるんですか?」
「あ、そこもか」
ダニーはとりあえず頭から説明をする。
魔法には、属性以外にも種類がある。
通常魔法は一番凡庸的な魔法が多い。
特殊魔法は通常魔法の強化版だが、ランクC以上の人しか使えない。ランクを決めるときにはこの特殊魔法が使えるかどうかで決まることがあるらしい。
固有魔法が一番癖のある魔法で人によって違うため一概にこれとは言えないらしい。
もう一つ、属性ごとの究極魔法があるらしいが使える人は限られているらしい。
属性の種類は今のところ五種類くらいあるらしい、火属性、水属性、木属性、光属性、闇属性。だが闇属性だけが特殊で、魔族のみというらしい。
「と、ここまでは判るか?」
「い、一様判ります」
「大丈夫じゃない気がする、陸、お前の頭から煙が見えるぞ……」
「だ、大丈夫です。いきなりだから覚えるのが大変なだけです」
「それが大丈夫じゃないんだがな……、まぁとりあえず朝飯にするか」
「了解です……」
「じゃあ、リリーを起こしてくるか」
ダニーは隣の部屋に行き、リリーを起こしに行く。
それを見ながらまたややこしいことになったなと思う陸だった。