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隠し事

 誰もいなくなった岩場でダニーはポツリと立っていた。


「どうしたらいいんだろうな……」


 ダニーは力の無い声で言った。


「……いつまでもこうしているわけにはいかないか」


 そう言ってダニーは小屋の扉を開けた。

 そしてそのまま椅子に座ったまま寝てしまった。




*************




「……朝か、また椅子で寝てしまった」


 ダニーが目を覚ました。

 周りを見ると猫のように丸くなって寝ているリリーと、寝袋の中で寝ている陸の姿があった。

 

「……とりあえず朝飯でも作るか」


 そう言ってダニーはキッチンに立ち、フライパンを手に取った。


「あれ? 唐辛子がない。……昨日使いきったんだっけ?」


 ダニーは、キッチンの周りを見て、ため息をつきながら小屋の扉を開け、雪の積もった岩場を歩く。


「冷えるなぁ、ちょっとこれはおかしいな」


 白い息を吐きながら雪の感触を確かめながら昨日の夜のことがあった場所を眺める。

 特に変わったことがないが、雪の中に小さな箱があった。

 

「この箱は……。オリーブの……」


 ダニーはそっと箱を開ける。


「懐かしいな、いつもこの箱の中に何があるかびくびくしながら開けていたよな……」


 ボソッと呟きながら中を見る。が中に入っていたのは、何も書いてない紙が一枚あっただけだった。

 それを見てダニーはクスリと笑い、紙をコートの内ポケットに入れて歩きだした。


「さて、早くしないと二人が起きてしまうから、急ごう」





*************






 岩場と森の境目のところに行くと、きれいな花が咲いていた。赤く、燃えるように咲いていた。


「……ここにリリーを連れてきたら……、いや……考えないようにしよう……」


 ダニーは苦笑いしながら魔法をかけた。すると、花が、赤く光る玉になって地面にストンと落ちた。


「これでよし、帰るか……と、その前に何しているんだい? 昨日来た王国警備隊の三人?」


 ダニーは森の中にある木の一本に向かって魔法を放つ。

 魔法が木に当たる瞬間、木の陰から、昨日ダニーを襲った三人が現れた。


「……何のようかな?」

「ま、待ってください。違うんです」

「そうです、話を聞いてください」 

「隊長から伝言を預かっています」

「……オリーブから?」


 ダニーは不思議な顔をして警備隊の三人を見る。

 三人はビクビクしながらオリーブからの伝言を伝える。

 伝言を聞いたダニーは手の上で魔法をかけ、出来上がった袋を三人に「絶対見るなよ」と言って渡す。


「確かにお預かりしました」

「昨夜は本当にすいませんでした」

「気にするなよ、俺も少し疑問が解けたしな」


 ダニーは笑いながら話す。その姿を見て三人は助かったというような顔をして森の奥に消えた。

 

「……さて、帰らないと本当にヤバイ。ってか、今何時だ? ……やば!」


ダニーは急いで小屋へ向かう。





*************







「……起きているかなぁ?」


 ダニーは頭を掻きながら小屋に入る。まだ二人とも寝ていた。

 それを見てダニーはほっと一安心して料理の続きを作った。

 

「……ダニー、おはよう……」

「あ、おはようリリー。よく寝れたかい?」

「……うん」

「なら良かった、とりあえず顔を洗ってきな」

「……は~い」


 リリーは半分寝ているような顔で洗面所に向かい顔を洗った。途中何度か、ものが落ちるような音がしたが、ダニーは気にせず、せっせと料理を作るのだった。


 五分ほどするとリリーがシャキッとして戻ってきた。そしてそのまま椅子に座りダニーに話しかける。


「ねえダニー、ちょっと良い?」

「なんだ?」

「……陸、起こさなくていいの?」

「疲れているだろうからもう少し寝かせるからな」

「そこまで疲れているの?」


 リリーは不思議そうな顔をしてダニーを見る。

 ダニーはリリーの方を向きながら話し始める。


「そうだよ、大体魔法の無い世界から来て、いきなりここは魔法の世界です、って納得できるか?」

「……? どういうこと?」

「じゃあ、リリーがいきなり魔法の使えない世界に行ったとしたらどうする?」

「……ダニーに助けてもらう!」


 リリーの答えに少し気の抜けるダニー、とりあえずわかりやすく陸の周りのことを説明する。


「はぁ、……じゃあ俺がいなかったらどうする?」

「……不安、だと思う」

「だろうな、それにこの世界の常識が使えないとしたらどうする?」

「常識? 何があるの?」

「例えば、陸の住んでいた世界には魔法や魔物も無い世界、それに人種は人間族、それしかいないそうだ。 つまり陸の住んでいた世界ではリリーのように獣人がいないんだ」

「……本当!?」


 リリーは驚いた表情を見せる。それの顔を見てようやく納得したかと思うダニーだった。


「それでよくビックリせずにいられるね」

「そうだね。だから余計に疲れるかも」

「どうしてわかるの?」

「……昔、似たような友達がいたんだよ」


 ダニーは外を見ながら静かに言った。それを見てリリーは、これ以上聞かないほうが良いかなと話題を変える。


「ダニー、料理手伝おうか?」

「お、そうか。じゃあこれを皿に盛ってくれないか」

「は~い」


 ダニーが明るくなったのを確認してリリーは皿に料理を盛っていた。その間にダニーは陸を起こしにいった。




「陸、起きろ!」

「……へ?」

「朝だぞ!」


 陸は何が起こったのかわからないまま叩き起こされた。


「……今、何時ですか?」

「えっと、……八時半」

「うわ、学校に遅れる! 急がないと――」

「まて、寝ぼけたまま動くな、それと学校は無いぞ」


 飛び起きた陸の肩をダニーがつかんで止める。陸は止められてようやくここがどこだか理解する。


「とりあえず朝飯にしようか。そのあとで魔法の練習をしようか」

「わかりました」


 そう言ってダニーと陸は椅子に座り、朝飯を食べた。





*************





 昼過ぎ、陸はダニーに教わりながら魔法の特訓をしていた。

 周りに積もっていた雪がだんだんシャーベット状になってきている上でダニーは陸が使えそうな魔法を色々と教えていた。

 そのうち陸が使える魔法のタイプがわかってきた。

 魔法の属性は光属性が一番得意でなおかつ攻撃系とすこしだけ精神系も使えるらしい。

 ちなみにリリーは水属性の具現化系と回復がとくいだそうだ。


 一通り終わらせた二人は明日からの予定を話していた。


「明日からちょっとした冒険をするぞ」

「冒険?」

「ああ、軽く魔王を倒そうかなと」

「……え? 軽く?」


 いきなりのことに陸は驚いていた。

 さらっと言うことじゃない、と思っていたが、とりあえずのんびり力をつけながら行こうと話すためOKしてしまった。


「で、明日はどこへ?」

「ここから一番近い港町、【プエルテ】だ」

「どれくらい離れているんですか?」

「えっと、歩けば三日くらい」

「結構遠い……」

「まあ、気にするな。結構早く行く方法があるんだよ」


 ダニーは笑いながら注意事項を話す。


「一番気を付けないといけないのは盗賊だ。あいつらは結構面倒だしな」


 しばらく話している間に、日が沈みかけていた。

 するとリリーが夕飯が出来たと言って呼びにきた。


「二人とも、出来たよ!」

「わかった、リリー、先に小屋に入っていな」

「は~い」


 リリーが元気よく返事をして小屋に戻る。

 それを見てからダニーが陸に話しかける。


「なぁ、陸。ちょっと聞いていいか?」

「え?」

「お前は元の世界に戻りたいか?」

「…………戻れるなら、戻りたいけど」


 陸は不思議そうな顔をしながら答える。ダニーの顔を見ると少し悲しそうな顔をしていた。


「どうしたんです?」

「いや、な、昔お前に似ているやつがいたんだ。そいつはいつもいろんなことを一人で抱え込んでしまっていたんだ」

「…………」

「本当のことを言ってみな。自分のことだ、気がついていないかもしれない。ちょっと考えてみろすぐ答えが見つかると思うぞ。特に今のままだったら――」

「本当は……、帰りたい……。でもどうやったらいいかわからない……」


 陸はうつむいて、聞き取れないくらいの声で自分の思いを伝えた。

 それを聞いてダニーは一つの解決方法を示す。


「帰る方法ならあるぞ。一つだけな、ただ――」

「え? あるんですか?」


 興奮ぎみに陸はダニーに聞く、ダニーはようやく本当の気持ちを言ってくれたと安心して続きを言う。


「ちょっと待て、確かにあるけど……相当難しいぞ、条件が整わないとね」

「そうなんですか……」

「まぁ、だから魔王を倒すんだよ」

「どういうことですか?」

「そのときのお楽しみ」


 ダニーは不思議な笑顔を浮かべながらしゃべる。

 それを見て陸は、少し心の中の不安が無くなったような気がした。


「じゃあ、ダニーさんも何かあるんじゃないですか? みんなに隠していること」

「魔法を使っているな」

「やっぱり気づいちゃいますか」

「まあな、精神系の場合、心の中を覗かれているみたいなんだよ」

「なるほど……じゃなくて、質問に答えてくださいよ」

「……そうだな、これから行く場所に関係しているからな。そこで話すか……」


 ダニーは静かに喋った。しかし納得しないような顔で陸は話す。


「せっかく言ったのに、ダニーさんもいってくれないと――」

「おーい、料理が冷めちゃうよ~」

「しまった、すっかり忘れていた」

「右に同じく……陸、急ぐぞ」

「了解!」

 

 リリーが小屋の扉に立って叫んだ。それに気づいた二人は笑いながら小屋に走り出した。

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