雪の中で
陸は、さっき見たときには無かったページがあることに気づいた。
早速見ようとしたら、ダニーがご飯の用意ができたと、言われて、本をリュックにしまい、ダニーたちの居るところへ向かう。
「オーイ、陸、こっちだよ~。リリーが作ってくれたよ~」
「は、恥ずかしいから、い、言わないで!」
「ははは、……あれ? でもこんなにたくさんどうやって?」
陸はテーブルの上にあるたくさんの料理を見て、どうやってこんなにたくさんの料理が作れるのか考えていた。
「リリーの使える魔法に結構便利なのがあってね、まぁ細かい説明はまたあとで」
ダニーはそう言って、ご飯を食べ始めた。
陸は少し不思議な顔をしながら取り敢えず食べてからでいいかと思いながら、どうしてダニーが洞窟の中で陸を見つけれたのか、何で陸が魔法を知らない別の世界から来たとすぐに納得したんだろうかと、考えていた。
この世界の料理は元の世界とはまた違う色や形、味をしていた。陸は一つ一つ確認しながら料理を口に入れる。
まるで毒がありそうな色をしているが、ものすごい美味しいものがあったり、この世の物とは思えないような料理があったりした。
陸は、ダニーとリリーが美味しそうに食べていたからこの世界では当たり前なのかと思いながら異世界の料理を食べた。
料理を食べ終わる頃には、日が沈み、キレイな星空が見えた。
ダニーが途中で焚き火をしていたため、明かりは確保できていた。
「さてと、では、さっき話せなかったところをやろうか」
ダニーが火の調節をしながら喋り出す。
「リリーの使える魔法は基本的に攻撃系ではないんだ」
「攻撃系ではない?」
陸は首をかしげる。
ダニーは陸に魔法の系統を教える。
攻撃に特化した攻撃系魔法、回復特化の回復系魔法、物質を生成する具現化魔法、何でもありの便利系魔法、相手の精神を操作できる精神系魔法、空間をいじれる空間系魔法。
魔法の系統はまだ他にもあるらしいが説明が面倒という理由でリリーの魔法の説明をした。
リリーが得意なのが具現化魔法のひとつで、描いた絵を作ることができる魔法、だが食材は無理らしい。
「そんな便利なのがあるのか……」
「その代わりリリーは攻撃系が苦手なんだよ」
「なるほど……ところでリリーさんは?」
陸はリリーがいないことに気づいて辺りを見ると、そこにはさっきまでは無かった小さな小屋が出来ていた。
辺りが暗くてよくわからなかったが、大きさ的に本当に寝るだけといったサイズだが、見た目がものすごく豪邸といった感じだった。
「……ダニーさん、もしかしてこれって」
「……何度このデザインをやめろと言ったことか」
ダニーが呆れた顔をして小屋の方を向いて。
「通常魔法――『エネルギーショック』」
「――! ダニーさん、何を――」
陸は慌てて小屋に向かうが、それより早くダニーの放った魔法が小屋に当たる。
ドンと大きな音をたてて煙が充満する。
三十秒もすると、煙はなくなりダニーの姿が見える。
すると、ダニーは困惑した表情で、小屋を見る。
その姿を見て陸も小屋を見るとそこには、傷ひとつ無い小屋があった。
「やっぱりダメか……」
「な、何で……」
「それはな……俺よりリリーのほうが魔力が強いんだよ……」
「え!? でもダニーさんのほうがランクは上のはず……」
「使える魔法の数が違うんだよ、リリーはあと少し魔法が使えればもっと上のランクを目指せるんだけどなぁ~」
ダニーは苦笑いしながら話す。
「あ、でも……」
「ん? どうした?」
「このままだとリリーさんの魔力が切れたりしません?」
「ああ、それについては大丈夫」
ダニーは魔法についての説明にいくつか例外があることを教えた。
魔法によって、発動中は魔力が減るタイプと、発動時に魔力を使うタイプがある。
リリーの魔法のタイプはほとんどが、発動時に魔力を使うのが多いらしい。
「ざっとこんなもんかな、なにか質問はあるかい?」
陸はさっき、夕飯を食べている時に思ったことを言おうかどうしようか悩んだが、また後でいいかと思い、特にないと答えた。
陸とダニーは火のそばで水を飲みながら話をしていた。
しばらくすると、雪が舞ってきた。
ものすごい大粒の雪だった。
「え? 雪? 夏じゃないの?」
「ははは、ここは夜になるとものすごく冷えるんだよ、風邪引くなよ」
「そんなのありですか」
気づいたらうっすらと雪が積もってきた。
ダニーはそろそろ寝るかと言って、焚き火の火を消して、リリーの作った小屋へ入った。
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「あ、この中がものすごい暖かい……」
「……リリー、この中暖めすぎだろ」
「確かに…… ところで、リリーさんは?」
陸は小屋の中をぐるりと見る。テーブルがあって、水道やキッチンもあった。ベットの上で丸くなって寝ているリリーの姿もあった。
「疲れたんだろうな……」
「! だ、ダニーさん!?」
「驚くなよ……」
いきなり、後ろからダニーの声がした、手にはコーヒーを持っていた。
「コーヒー飲むか?」
「え? いいんですか?」
「というか作りすぎた、飲め」
「あ、はい」
ダニーは椅子に座りコーヒーを飲みながら、明日からの行動の予定を話す。
明後日にはここを出て、一回物資の調達に街へ行くらしい。
明日は魔法の練習をしてくれるらしい。
「ところで、リリーさん、寝ているところを見ると猫みたいですね」
陸がそういうと、ダニーが少し笑いながら返事をした。
「猫みたいではなく、こいつは、猫だぜ」
「へ?」
「おっと、また説明しないとか」
この世界では、いくつか人種があるらしい。
人間属、モンスターの血を受け継いでいる人種、魔族、獣人族。
大きく分けるとこんな感じらしい。
「というわけで、リリーは獣人族の猫系というわけだ」
「なるほど、獣人か……」
陸はそこで納得をした。
「とは言っても、正式には猫じゃ無いんだがな」
「え?」
「リリーは獣人族のなかでも最強種のライオンなんだよ……」
「…………どういうこと?」
陸は頭にはてなマークを出しながらダニーに尋ねる。
この世界に着てから新しいことばっかりで何がなんだかわからなくなってきた。
「……陸、また明日話すからそろそろ寝るか……」
ダニーがそういうと、陸は一番近くにあった寝袋の中に入り、そのまま寝てしまった。
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ダニーは二人が寝たことを確認したら起こさないよう静かに小屋の扉を押して外に出る。
すると、辺り一面雪で真っ白になっていた。
「……積もるのが早いな」
そして、一番近くにあった、岩に腰掛けて今日あったことを思い出す。
十分ほど考え事をしていると、急に後ろから何かの気配がする。
「!? 誰だ!」
ダニーが後ろを向くと顔にガスマスクをつけていて、腕には【王国警備隊】の文字が書かれた紋章を着けている、白い服を着ている人が三人ほど立っていた。
「王国警備隊……どうしてここに」
「我が主よりの命令です。今日の午後、この周辺に現れた人を確保せよ、とのことです」
「ほ~、どこで知ったんだい」
「黙れ、おとなしく差し出しなさい、さもないと――」
警備隊の一人が口を開く。
だが今の一言がダニーの癪にさわる。
「さもないと……、なんだって? 俺たちは物じゃ無いんだぞ、わかってんのか」
「ぐ……、貴様……」
ダニーの威圧に警備隊の三人が少し怯む。
だがいっこうに帰ろうとしないためダニーは着ていた黒いコートを脱ぎ、白い髪が露になる、白い髪の先端一センチ位が、緑色をしていた。
「お前ら、俺たちのことをどれくらい知っている」
「……き、貴様に……教えることなど……」
「ああ、わかった、じゃあこうしようか」
次の瞬間、警備隊の一人が三メートル位離れたところにある岩に吹っ飛んだ。
残りの二人は一体何が起こったかわからずにダニーの方を見る。
ダニーは笑顔で警備隊に話しかける。
「さあ、もう一度言う、俺たちのことをどれくらい知っている?」
「わ、わかった」
一人が口を開く。
「一人はリリー・ベン・サブリナ、もう一人は異世界人、だがお前だけはわからなかった」
ダニーはそこまで聞くと、さらに警備隊を煽るようなことを言った。
「で、何がしたいって? 王国警備隊さん?」
さっき吹っ飛ばされた一人が起き上がり、二人の警備隊の間に入る。
「貴様、木属性使いか」
「……半分正解……かな?」
ダニーは魔法の属性を当てられて少し驚いていた。
少し触っただけで属性を当てれるのは珍しいからだ。
「だったら問題は無い、行くぞ」
「「了解!!」」
警備隊の三人は掛け声と共に三方向からダニーを攻撃しようとした。
「いくら強いからってこれではたまらんだろう」
「……そうかい」
ダニーが少し笑う。ものすごく不気味な笑顔だった。
次の瞬間、ダニーの髪の先端の色が緑から青色に変わる。
「なんだ?……………まずい!逃げ――――」
警備隊の一人が叫んだ瞬間、ダニーの周りを水の壁が覆う。
それに触れた瞬間三人が一気に地面に叩きつけられた。
「貴様、多重属性持ちか」
ダニーの周りの水がなくなりダニーが姿を見せる。
ダニーの髪の色が青ではなく黒に変わっていた。
「そうだとしたらどうする?」
警備隊の顔から血の気が失せた。
このままだと十秒後には生きていられるかわからない状況、今すぐにここから逃げ出したい気持ちで一杯だった。
「二度と目の前に現れるな」
「ひぃぃ――」
「ダニー、それくらいにしなよ」
「た、隊長!」
不意に警備隊の後ろから声が聞こえる。
その声を聞いた瞬間、警備隊が安堵の表情を見せる。
「久しぶりだね、……ダニー」
「お前が隊長とは偉くなったな」
「確かに、君は弱くなったんじゃない?」
ダニーは近くにあったコートを着て話す。
相手の場所はわからないが確実に近くにいる、そう思って会話している。
「とりあえず、こちらの仲間は帰らしてもらう。その代わり異世界人を追いかけるのはやめる。どうかな?」
「わかった」
「契約成立だね、ダニー」
声の主はそういうと警備隊の三人を帰らすと、ダニーと少しだけしゃべっていた。
「ダニー、またゆっくりと話ができるといいね」
「……そうだな」
「……あの頃に戻りたいよ、くだらないことで笑っていたあの頃に……」
そう言うとダニーのそばにふわりと誰か現れた。
勇者の服を着て、金色の長い髪をした。女性だった。
そして、ダニーにボソボソと話すとその場から姿を消した。
「次に会うときは敵同士、それを忘れずにね」
「まて、敵同士ってどういうことだ、オリーブ!」
「またね、……ダニー」
ダニーが大急ぎで辺り一面を確認するがあるのはごつごつした岩だけだった。
「どこまで、俺の先に行くんだ、急ぎすぎたらダメだぞ、それを知っているのはオリーブ、お前自信だろうに」
ダニーは雪が降っている空を見ながら呟く、しかしその声は誰にも届くことは無かった。