魔法の世界
あのとき、入った扉が続いていたところは、とても大きな洞窟の中だった。
洞窟の中に入ってからリュックの中から懐中電灯を取りだし、三十分位散策をしていたが、どこにも出口がなく、扉があったところに戻ってきた。
そしてリュックの中からおやつを取り出そうとして中を除くと、入れた覚えのない、大きな本が入っていた。
「なにこれ?」
本のタイトルは、『魔法の使い方』と書いてあった。
最初のページには、魔法は、念じれば使える、そして最初の魔法が書いてあった。
ただ、最初のページ以外は真っ白で読めなくなっていた。
「なんだ使えないじゃん」
そう言って、本をリュックにしまった。
他の方法がないか考えていると、後ろから不気味な声が響いた。
「え? 誰の声?」
後ろを見ると、小太りで右手に大きなこん棒を持ったゴブリンが三十メートル位離れた所にいた。
そして、その奥から緑色の玉が飛んできてゴブリンに当たった。
ゴブリンはそのまま吹っ飛び、ビー玉くらいの小さな光の玉になって砕けた。
誰か奥から現れて喋り出した、暗くて誰だかわからなかった。
「よぉ、大丈夫か?」
「あ、はい」
「なら大丈夫だ。取り敢えず、ここを出るぞ」
「え?」
「通常魔法――『エネルギーショック』」
すると、洞窟の壁がドンと音をたてて大きな横穴が空いた。
「さあ、出るぞ」
「は、はい」
***************
「よし、外に出れた。では、自己紹介としようか、まずは君から」
「その前に、眩しくて周りが見えないんですが」
「気にするな」
「あ、はい、僕は白石陸。で何でここにいるのかなというと……」
ようやく、周りがが見えるようになったから、陸が説明しようとしたら、目の前にいた、夏なのに黒く長いコートを着ていて、髪の毛が白い、男性が座っているのに気づいた。
「はい、ストップ。そこからは後で聞こう。」
「え、あ、はい」
「では、俺の番だな。俺の名前は、ダニー、ダニー・アビレスだ」
ダニーはそう言って、陸に近づいて魔法を唱えた。
「通常魔法――『森の息吹』」
次の瞬間、陸とダニーの周りが細長い木に囲まれた。
陸は驚いているとダニがーが笑いながら木に触れた。
「これが本物だと思うか?」
「どういうことです?」
何が起こっているかわからず目が点になっている陸に向かってダニーが木に触れるように言う。
陸はゆっくりと木に触れる。
「本物みたい……けどなにか変だ……」
「お、わかるか?」
「この木の中に何か凄い力みたいなのが……」
「今の時点でここまで気づけば満点だな」
ダニーは少し木から離れた、陸も同じように木から離れた。
「では、魔法を解くぞ」
そう言うと、周りを囲んでいた木が消滅した。
それを見て陸はここが本当に魔法の世界だと納得する。
ダニーは陸を見ながら少し考えてから、目を瞑り、陸に話始める。
「よし、陸、お前も魔法を使えるようにするぞ」
「え? 本当に?」
「ああ、大丈夫だ、これから基礎的なことを教えるかな、それとここではやりづらいから移動するか」
そう言ってダニーが歩き出す。陸はそれを見て急いで追いかけるのだった。
**************
陸とダニーは十分くらい歩いたところにあった、岩場についた。
ダニーは近くにある岩に腰掛けた。
「さて、まずは陸、お前のことを聞こうか」
「分かりました。」
陸はこの世界にどうやって来たのか、元居た世界がどんな世界だったか説明した。
森の中で迷子になり、光る扉を見つけ入って気づいたら洞窟の中にいて、また迷子になり、ダニーに出会った。
ここまで説明するとダニーが「なるほど」と、言いながら陸に質問をしてきた。
「陸、お前がこの世界に来てから違和感を感じないか?」
「違和感?」
陸は周りに目を向ける、すると二ヶ所から不思議な力を感じる。
一つは十メートル位離れた所から、もう一つはダニーからだった。
「なにか、力が出ているのが二ヶ所あって、一ヶ所はあそこで、もう一つはダニーさんから出ているような……」
「……なるほど、そこにいるのか、お~い、出てこいよ! もうどこにいるかばれてるぞ!」
「? 誰ですか?」
「まぁ、会ってみればわかる」
すると陸が指差した所から、髪の色は青くて背は160cmくらいの髪の長い女性が出てきた。
それを見て、ダニーが手招きした。手招きされていることに気づいた女性は、周りを確認する、すると、また岩の後ろに隠れてしまった。
「あ~、やっぱりそうなるよな」
「え? 誰?」
「まぁ、会ってみればわかる」
ダニーは陸が指差した所にある岩場に向かい、座ると笑いながら陸を呼んだ。
陸はダニーのところに行き、岩の後ろを覗くと、必死にダニーにしがみつき、隠れようとしている人がいた。
「自己紹介しなよ、ほらしがみついていないで」
ダニーはそう言って立ち上がろうとする。
「ダニー、や、やめてよ……」
「だったら自己紹介しようか」
「……」
「なにも言わないなら、勝手に紹介するぞ」
「わかったよ…… わ、私の名前は、リリー、リリー・ベン・サブリナ。よ、よろしくお願いします……」
リリーは自分の名前だけ言うと、またダニーの後ろに隠れてしまう。
それを見てダニーは陸にリリーのことについて説明する。
「リリーは見ての通り超人見知りなんだよねでも、なぜか俺は平気みたいなんだよ」
「い、言わないで!」
「ハイハイ、あ、陸、魔法の本を持っているか?」
陸はダニーに言われた通り魔法の本をリュックから出したら、前は見えなかったページがいくつか見えるようになっていた。
増えていたのは人々の種族、魔力の知識、魔法の属性の三つだった。
「あれ? 前は見えなかったページが……」
「見えるようになっているだろう」
「どういうことですか?」
ダニーは魔法の本について細かく説明した。ある一定条件を満たすと読めるページが増えたりする。
本も人によって中身が違い、自分で他の人が見れないようにブロックをすることができる。
ダニーが説明し終わるとページの確認をした。
「最初のページには何て書いてある?」
「えーと、最初の魔法、と書いてあります」
「で、なんの魔法だって?」
陸が本を読みながら書いてあることを言った。
【魔力検知】
・通常魔法
・属性 光
・能力{無詠唱で発動でき周りにある魔力を出すものを検知する、障害物も関係なく検知可能、検知できる範囲は発動者の魔力に比例する}
ダニーは説明が終わる前に喋り始めた。
「陸、お前がリリーを見つけれたのはその魔法を使ったからだと思う」
「え? 本当に? そうなのダニー?」
急にリリーが顔を出す。
しかし、陸が居たためかまたすぐに隠れてしまう。
「リリー、いきなり出てこないでよ。てか隠れるのもいきなりだな」
「うぅ、だって ……」
ダニーの後ろで少しだけ顔を出しながら話をする。
「陸、もう一度、【魔力検知】を使ってみて、俺ら二人がどんな感じかいってみろ」
言われた通り陸は魔力検知を発動させる。するとダニーからは緑色の大きな力が、リリーからは水色の少し大きな力が感じた。
感じたことをダニーに言うと「なるほど」と言って他に魔法がないか陸に聞く。
「えーと、あ、あった」
【エネルギーショック】
・通常魔法
・属性 発動者依存
・能力 {魔力を玉にし、飛ばす。玉の色や大きさは発動者の魔力に依存する}
「やっぱりそれか」
「やっぱりって知っていたんですか?」
「いや、この魔法が一番初歩的なやつだから」
「なるほど」
「私も使えるよ」
またリリーが顔を出す、陸に少しだけ慣れたみたいで、すぐには隠れなかったが、しばらくするとまた隠れてしまった。
ダニーはまた少しからかいながら陸に魔法の説明をしていると、ダニーが急に【魔力検知】を使えと言ってきた。
「…………! これって」
「わかるか、たくさんの魔物たちがここを囲むようにいるぞ」
「ダニー、大丈夫なの? やられない?」
リリーが不安そうな顔をしてダニーに聞く、ダニーは笑いながら、「大丈夫」と言った。
「心配するな、しっかり捕まっとれよ」
「うん、わかった」
「陸、どこに何匹いるか教えてくれ」
「えっと、ここから、三十メートルの距離に九十匹、左右に一メートル位離れているように囲んでいる」
陸は、細かくダニーに、魔物の場所を教える。
それを聞いてダニーは笑いながら魔法を唱える。
「通常魔法――『森の息吹』」
次の瞬間陸はとんでもないものを見てしまった。
陸たちを囲むようにしていた、たくさんの魔物たちが、空中に吹っ飛びそのまま、光の玉になってしまった。
陸がわかったことは、魔物たちが空中に吹っ飛ぶ寸前に魔物の足元からものすごい魔力を感じたが、次の瞬間にはすべての魔物が空中にいて、そのまま光の玉となり足元の魔力も無くなっていた。
「な、何が起こったんだ?」
「簡単だよ、ただ単に思いっきり空中に飛ばしただけ」
「そ、それだけ?」
「これを使うと思いっきり空中に飛べるんだけど、あの魔物たちには刺激が強すぎたのかな?」
「いや、ダニーさんが強すぎるだけでは?」
「……この際だから教えるか」
「何をですか?」
「強さの序列を」
ダニーはこの世界は魔力や使える魔法でランクが決められていることを教えた。
一番上がSランク、次にA、B、C、D、E、と最弱のFとなっている。
Sランクは今は世界で二人しかいない、逆にFランクは魔力がほとんどなく、魔法が使えない人だということ、ダニーがBランク、リリーはCランクということも教えた。
「わかったか?」
「あ、はい。ということはまだ上がいると」
「そういうこと、まぁ取り敢えず夕飯とするか。リリー、頼むよ」
「は~い」
リリーは元気よく返事をしてご飯の用意を始めた。
「ふ~、またとんでもないことになってしまったな~」
陸はため息をつきながら、のんびりと魔法の本を覗く、これから何があるのかと想像しながら。
そして、空がだんだん赤くなって日が沈む、そのとき陸はまた別のページが見えるようになっているのに気づいた。