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散髪万歳万国びっくりショー

作者: 鹿沼部直作

髪が切りたい。


俺、神木力雄かみきりおがそう思ったのは、昼も終わりにかかり夕方が始まる時間帯のことであった。


別にさっさと切りに行けばいいじゃん。と思っているそこのアナタ、その回答は否であるのである。


だって俺、いま金一銭も持ってないんだ。自慢できることじゃあないけどな。


ついでに言うと働いてもいない。すねかじりのリオとは俺のことだい!


馬鹿なこと考えてないで、どうしたら良いのか考えないとな。


選択としては、親に金をせびるが一番だろうが、あの人たちはもう俺のこと完全に見限っているから多分、くれないだろうなぁ。


かと言って他に方法は思いつかないしな・・・・・・。


まぁ、長い長い説教を覚悟すれば何とかなるかもしれない。


「就職のためだ」と言えば説教もされることから回避できるかもしれないしな。うん、これなら大丈夫だ、大丈夫に決まっている。


全ての出来事・夢には可能性が僅かばかりにでもある。


さぁ、この部屋の扉を開けて俺は栄光の散髪をする。


「いざ行かん! 黄金の国ジバング!」


---


結果、めちゃくちゃ怒られた。


母親にあれほどの罵詈雑言を浴びせらる経験もまぁ悪くはないかなうん。泣きそうになったけど。


確かに2年も仕事もろくに捜さないでプラプラしてるからって、何もあそこまで言わなくてもいいじゃないですか。


だがまぁ金を恵んでもらうことには成功したし、いざ外の世界に飛びだそうではないか。


身支度を整え、そっと隠密で物音立てずに逃げるように家からの脱出する。また母親と顔を合わせるとバツが悪いからだ。


「金を貰ったのはいいが、この額でどうしろってんだよ・・・」


母親に恵んでもらった金は、僅か1000円である。これでは美容院はおろか床屋ですら行けないではないか。


つまりこれはあれですか、お前には安い千円カットで切って来いってことですか、そうですかなるほど。


嬉しいねぇ、母親の愛情を猛烈に感じるよホント。エロゲならば、母親ルートに一直線に辿り着きそうだな。


「ゲーム市場に残る最悪なバッドエンドだなこれは。会社は炎上間違いないしだな」


そもそもソフ論に通るかどうかも怪しいな。でもメディア論なら通りそうかもしれない。


てか、ソフト制作する会社がこの世にはなさそうだな。これはイケる! 思う会社もいないだろうしな・・・・・・。


さてさてさて、母ちゃんの事を考えるのはここまでにしようか。べ、別に母ちゃんのことなんかすきじゃないんだからねっ!


と、馬鹿な想像はここまでにして、そろそろ店に向かうとするか。


俺は携帯を取り出し、(料金は勿論親負担です)近くの1000円カットの店を検索する。


おっ、一駅先にだが1000円カットの店があるみたいだぞ、ここに行ってみよう。


電車に乗って行けば5分もかからないのだが、現在の所持金1000円しかないので電車にのることも出来ん。残念無念!


仕方ない、徒歩で店まで出向くとしようか。徒歩でな!


俺は、スマホで地図アプリを開き、その地図を頼りにしながら店に向かうのであった。徒歩でな!


---


電車なら5分! 徒歩なら20分! 異常なくらい時間が掛かったぞ、そして異常なくらい体力を消耗してしまったぞ。髪切る前に息が切れた。


「はぁ、はぁ・・・や、やっと・・・・・・近くまで着いた・・・・・・」


ゲームとネットばかりして家に篭もりっきりのせいで、すっかりと体力がなくなっちまったな。


これからは毎日、軽い運動がてらに深夜、近所でも散歩でもしようかな。最近は少し増えた脂肪も減らしたいしな。脂肪を減らし、体力を増やす。一石二鳥やな。


よし、明日から本気出してやるかな! ってこれは三日坊主になりそうなパターンになりそうだわ。


恐らく出来もしない(やらないとも言う)などと事を考えているうちに店の前までたどり着いていた。


自動ドアが開き店内に入店する。空調の効いた室内が運動で火照った体を冷まさせてくれる。


そして財布から全財産の1000円を取り出し、俺はこう言った。


「カットお願いします」


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