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Feasting Presence Full of Light ー光あふれる祝宴の広間ー

「『 』!」


少年の悲痛な叫び声が謁見の間に響き渡る。


少年は倒れ伏す少女に駆け寄った。


少女の傍らに膝をつく。


少女は抱き上げられてもピクリとも動かない。


まるで時が止まったかのように。


壊れてしまったかのように。


王も、王子も、大臣も、貴族も、騎士も、誰も彼も動けない。


ただ、少年の時だけが進み続ける。


「どうか眼を開けてくれ、『 』!」


少年は少女を抱きしめた。


けれどもう、少女が少年の願いを叶えることはない。


もう二度と、少女の心の蔵が鼓動を打つことはない。


砕け散った硝子が元の美しい姿を見せることはないように。


「ああ、『 』。どうして君がこのような目に合わねばならないのだ」


少年の眼から涙が零れ落ちる。


「なぜ愚かな大人たちが負うべき責を自ら引き受けるのだ」


少女の手の甲が雫に濡れた。


「君は優しすぎるよ、『 』」


悲しそうに、だが愛しむように微笑む。


「でも、そんな君を私は愛したんだ」


とめどなく流れる涙をぬぐうこともせず。


「永遠に君とありたいと願わずにはいられないほどに」


そっと少女に口付けた。


「許してくれ、『 』。君がいない世界は、黒と白だけのとても寂しい世界なんだ」


少女を抱きしめたまま立ち上がる。


「だから、君と共に眠るよ。君のとなりで」


笑顔をたたえて、もう動かぬ少女にそう告げる。


「君が、『 』が私を置いていったのだから。このくらいの我が侭はいいだろう?」


その笑みからは、悲しき喜びがあふれていた。


「いこう、『 』。そして私たちの願いを、幸せを叶えよう」


少年は少女から目を離す。


そして王を見つめた。玉座の王を。


その瞳の先にあるのは暗い闇なる幸福か。


扉をくぐり姿を消す。


それはまるで栄光へつながる門のようにも見えた。


少年のその姿が見えなくなるまで、誰も指の一本すら動かせず。


誰も声を上げることすらできなかった。

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