冒険者とはなんぞや
「サミーちゃん朝よ」
「ん?う~ん………お母さん、おはよう」
「はい、おはよう」
今日も笑顔でサミュエルを起こしにきたヴェロニカ。一方母親の笑顔とは反対に疲れた表情でベッドから起き上がるサミュエル。
昨日やった魔法の訓練で体力、精神力を使い果たした為にこんな暗い表情に成っているのである。
実際昨日はベッドまで自分で移動していたサミュエルだが、その後は寝るというより気絶といったほうが正しいほどだったのだから。
「朝御飯よ、お顔洗ってらっしゃい」
「分かった」
母親に返事をし、部屋を出てリビングに行くと父親のジャックの姿が見えないのに気付いた。
「お母さん、お父さんは?」
「昨日実入りのいい仕事が見つかったから、ちゃちゃっと討伐してくるって言ってたわよ。だから日が昇る前には出ていったわよ。」
(は?討伐?お父さんは確か冒険者じゃなかったっけ………)
冒険者なのだから何処か前人未到の場所に足を運び未知の植物、鉱物、動物などを発見しそれらを国に報告して、国から助成金、あるいは企業などからお金を援助しもらい生活していると思っているサミュエル。更には未知の植物や動物などの発見により沢山の病人や怪我人といった人の命そのものや人の未来を救う誇り高い仕事だと何故かサミュエルは勝手に想像し自己完結していた。
因みに人の為にやっているというのはあながち間違いではないが。
そしてその疑問をヴェロニカに投げ掛けると、ヴェロニカは、サミーちゃんはなんて可愛いの。冒険者をそんなロマン溢れる職業と思っていたなんてと顔を真っ赤にし、サミュエルを抱きしめる。
そしてヴェロニカが冒険者とはなんぞや、という問いにこたえる。
冒険者とは…………………………………………。
その1 冒険者ギルドに所属している者を冒険者という。
その2 人に害をなす動物、魔物といったものを村や街あるいは国からギルドに依頼し冒険者が討伐しにいく。
その3 討伐だけでなく街の掃除、個人の家の雑用などもある。
その4 街から街あるいは村から村と移動する商人や引っ越しする人などを盗賊、または動物、魔物といったものから護衛する依頼などもある。
その5 ダンジョンと呼ばれる迷宮がありそのダンジョンの中に何故か存在するマジックアイテムを得る為に入る。
また最下層にはこれまた何故か祭壇がありその祭壇の前に立つとスキルを得ることが出来るためスキル目当てにダンジョンに入っていく者もいる。
因みに今現在確認されているダンジョンは約千箇所あるが最下層まで攻略されてあるダンジョンは1割にも満たない。その為ダンジョンで得られるスキルは今のところ被っていない。
その6 冒険者にはランク制度があり自分より高いランクの依頼は請けることができない。
ランクの種類は下からG、F、E、D、C、B、A、S
の八種類あって、Dランクで一人前と言われている。
などなど、まだ細かく言えば色々あるのだが、ヴェロニカはかいつまんでサミュエルに教える。
「それじゃあ、お父さんはいつもダンジョンや魔物の討伐にいってるの?」
「この辺にダンジョンはないからいつもは討伐の依頼を請けてるわよ。因みにジャックはAランクで私はBランク冒険者よ」
(!?高っ!?かなり高ランクじゃん)
「ほらサミーちゃん、早く朝御飯食べないと覚めちゃうわよ」
「は、はぁ~い」
ジャックもヴェロニカも凄かったんだと驚いた様子のサミュエル。食事中なんどもヴェロニカに視線をやりジャックは筋骨隆々で剣の素振りを見ていて弱いなんて訳が無いと納得出来るのだがヴェロニカはそんなに強そうには見えないのにと考えていた。
それは当たり前で、ヴェロニカは魔法使いであり剣士ではないので見た目では判断が出来ないのだ。
尤も日常のヴェロニカの動きを見ていれば常に隙がないのでサミュエルが注意深くヴェロニカを観察していれば納得出来たのだろう。
「そうそう、今日は魔法の練習は駄目よ。魔術書を読むのは構わないけどね」
「何で駄目なの!?」
練習禁止と言われ、さっきまでの母親への驚き異常に目を見開くサミュエル。
「魔法の練習をするときは一日おきにしたほうがいいのよ。一日休みを入れるか体力や精神力の鍛練のための一日にすることによって毎日やるより効率よく魔法を身に付けられるの。だけどサミーちゃんの場合は体力の鍛練は早いから精神力の鍛練かお休みにしたほうがいいわね。」
「う~ん、分かった」
(それじゃあ今日は魔術書を読んで過ごすことにするか)
渋々といった表情で返事をし、自分の部屋に戻りさっき母親に聞いた冒険者の話し、迷宮、即ちダンジョンの話を思いだしていた。
将来冒険者になるのが今夢中になっている魔法を最大限使え極められるだろう、そして前世で努力した剣道もまたこの世界で極めよう、と決意を抱きならがら魔術書を開く。
(じゃあ今日は聖属性、風属性を調べるか)
聖属性は主に回復と不死者<つまり死んで埋葬されなかった者、即ち野晒しにされたりダンジョンの中に放置されたりした人間の死体がなる成れの果て>や体を持たない、実体のない魔物にのみ有効な魔法がある。
風属性は強烈な突風を標的にぶつけたり、風の刃で切りつけたり出来る。更に空を飛ぶことも出来る魔法が存在する。
しかし今現在、最後に飛行魔法を使える者が死んでから飛行魔法を会得出来ている魔法使いはいない。 尤も魔族と呼ばれる魔界の住人は会得している者もちらほらといるのだが。
(回復魔法はいるな、一人で冒険者としてやって行くなら必須だな。そして…………………………空飛べる魔法とかあんのかよ!くぅー、俺も空飛びてぇ!)
そんなこんなでまた今日も一日が過ぎる。
冒険者になるという事とまた、まだ剣を手にするのは早いが七才になったらまた剣を手にし魔法も剣も極めてやると心に誓ったサミュエルだった。
(それじゃあ今日は最後にゴーレムの関節部分の改善策をたてよう。それと土属性と錬金術を使ってゴーレムに装着する鎧の外見や武器を考えなきゃな)




