初めてのゴーレム
小学生の頃に、こんなゴーレムを作れる魔法があれば楽しいだろうなぁ、と想像していた物を主軸において書いていきたいと思っています。
「さてさて今日も魔法の勉強を頑張りますか」
昨日は自分の得意系統を調べたので今日は土属性、聖属性、風属性の三つの魔法を調べようと考えている。
(まずは……土属性からだな)
楽しくてたまらないのだろう、満面の笑みで魔術書を開くサミュエル。
因みに魔術書をみながら魔法を使うつもりなので今日は庭での勉強である。
(どんな事も初歩が大事、というわけで初級の魔法からだな。魔力は有限だからどれか一つをためすか)
土属性、初級の魔法は幾つかあるがその内の一つ名前から想像しやすいストーンボールという魔法に決めた。
「試すだけだし威力も精度もそこそこでいいかな」
(弱めなら体力と精神力はこれくらいかな)
初めて魔法を使うせいなのだろう少しおっかなびっくりという感じで魔力を生み出す。
「ストーンボール!」
父親が剣の打ち込み稽古のために設置してある丸太に中指と人差し指を向け声高に叫ぶ。
そして魔法、ストーンボールは確かに発動したのだが予想していたのより三倍ほど大きい直径10㎝ほどの岩が、これまた予想の倍ほどの速さで標的の丸太を傷付け岩は砕けた。
「速いし!でかいわっ!」
(マジでビビった………2、3㎝の岩、というか石を生成するつもりだったのに………予想外すぎてまだ心臓がバクバクいってる)
目を見開き冷や汗をかいているサミュエル。
予想外とはいってもこの結果は当たり前といえば当たり前の結果なのだが。
サミュエル自信は気づいていないがこの世界に生まれ落ちてからすぐ魔力を生み出せるようになり毎日、魔力を自在に動かす訓練や素早く魔力を生み出す訓練をやっていたため世間一般で言われる駆け出し魔法使いと呼ばれる十七才から十八才の魔法使いと同等かそれ以上に魔力を扱う技術が高いため魔法を発動するために無駄にしてしまう魔力の数値が少い、そのため予想より性能のいい魔法が発動したのだ。
魔力を扱う技術が低い者だと魔力を10使い魔法を発動させようとしても四割から五割も無駄にしてしまうのだ。
サミュエルは初めて魔法を使うのだから当然、魔力の五割程は魔法に変換されず無駄になってしまうので小さく更には遅くなるだろうと思っていたのだ。
尤も高い魔力操作の技術を持つとはいっても魔力の源の体力、精神力はまだまだ低いため駆け出し魔法使いにはとても敵わないほど魔力の数値は低い。
「ちょっと怖いなストーンボールって………他の土属性魔法を試してみるか」
少しというよりかなりストーンボールという名の魔法に恐怖心を抱いた様子のサミュエル。
そのサミュエルが次に目をつけた魔法はゴーレムである。
「ゴーレムって確か人の形をした岩の人形だったよな」
(でもこの本の説明では単純に岩のみで出来ているものから内側は岩、外側は銅の鎧を装着したゴーレム。さらには鉄の鎧、鋼鉄の鎧と装着させると書いてあるな)
ゴーレムの為に鎧を買ってくるのか、と疑問に思っている様子のサミュエルだが読み進めるとその疑問も解消される。
「なるほど、土属性魔法と錬金術の魔法との半々でゴーレムを作成すると同時に鎧やゴーレムに持たせる武器も一緒に生成する訳か。錬金術は得意系統とか関係なく魔法を扱える者ならば誰でもつかえるんだったな、確か」
(ふむふむ銅、鉄、鋼鉄は成分などをちゃんと理解していなければ作れないわけか………それなら大丈夫だな、前世の仕事でそういったことを覚えなきゃいけなかった事があったから。なんなら銅、鉄、鋼鉄の三つ以外の物だって理解はしてるんだからおそらく生成する事が出来るだろうな)
さっき迄の魔法に驚いていた事など嘘のように集中している。
(両親に聞いたがこの世界には銅、鉄、鋼鉄しか生成する事が出来ないらしいし………これはヤバいな、知識があるからこのゴーレムの魔法は俺にピッタリじゃないか)
満面の笑みでガッツポーズをするサミュエル。
そして次の瞬間には取り敢えずゴーレムの魔法を発動するにあたって必要な腕、脚、指、首など人間に存在する関節部分をどうするかを考えている。
(取り敢えず今はプラモデルのような関節を想像して都合の悪い箇所などは随時、改善していこう。呪文はゴーレムか…………なんかまんまだな。まぁ、ストーンボールもまんま岩の玉だし一緒か)
「よし、出でよゴーレム!!」
呪文を唱えるとたちまち身長150㎝から160㎝の太くなく、かといって細くもなくといった体格の、岩のゴーレムが出現した。
「おぉ…………テンション上がってくるな。ゴーレムよ、庭を走って一周しろ!」
サミュエルがゴーレムに命令するとかなり不自然だがなんとかといった様子で庭を走りはじめた。
動きが不自然な理由は関節の少なさ、関節の稼働域の狭さ、更には体力と精神力をブレンドするさいの精神力の少なさのせいで精密さが損なわれたためである。
「まぁ、動きはぎこちないけど………初めてにしてはいいんじゃないかな」
人のゴーレムを見ずに初めてゴーレムを生成して此処までの精度を出したのはこの世界の土属性のゴーレム使いでは上から数えたほうが早いくらいなのだが本人はその事は一切知らない。
尤も前世の子供の頃にプラモデルといったこの世界にはない精巧な玩具を弄ったりしていたお陰で、ぎこちないとはいっても此処までの動きを初っぱなからゴーレムにさせる事が出来たのだが。
「しかしゴーレムの魔法は疲れるな、もう体力も精神力もからっぽだよ」
そう呟くと同時にゴーレムに集中していた意識を霧散させると出現した時と同じように黄色い光となったかと思った次の瞬間には消えていった。
(今日は此処までにしとこう、このあとはゴーレムの関節部分などを色々考えておこう)
そしてヴェロニカに魔法の報告をしたら見せて見せてとせがまれ、昼飯を食べたあともう一度ゴーレムを出現させ泥のようにベッドに横たわるのだった。
ゴーレム魔法はこれから青銅のものから作中に書いてある鉄、鋼鉄、そして作中には書いてませんがそれら三つ以外に様々な金属の鎧、武器と作り装備させていきます。
小学生の頃に妄想していたやつなので何だその地味で派手さも無くご都合主義の魔法はと思われるでしょうがどうか許して下さい。m(__)m




