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待ちに待った………

「はい、これが魔術書よ」

「ありがとう、お母さん!」

(とうとうこの日がやってきた!長かった……やっと魔法を学ぶ事が出来る!)


康太がこの世界に転生して二年半がたっていた。この二年半はひたすら母親に話し掛け言葉を理解する事に努め、尚且つ文字の読み書きにも貪欲に挑戦していた。

魔法については、言葉を理解したら直ぐに母親に聞いてみたのだがまだ早いと、文字の読み書きが出来るようになれば魔術書を貴方にあげるわよ、と言われひたすら言語習得に励んでいたのである。


「サミーにはまだ早いんじゃないか?」

「大丈夫よ、直ぐに喋れるようになったし、文字の読み書きだってもう完璧なのよ!サミーちゃんは天才なの!それになんて言ったってもう魔力を生み出せるのよ!」


早いんじゃないか?と言っているのは康太のこの世界での父親である、名前はジャック。体つきはまるで鋼のような筋肉、身長は二メートル近い、しかも道を歩けば人が絶対に避けて行くと思わせる程の強面である。

因みにサミーとはこの世界での康太の名前である″サミュエル″の愛称、ニックネームだ。

そして大丈夫よ、と言っているのは同じくこの世界での母親、ヴェロニカだ。何故ジャックのような強面の男と結婚したんだと万人に疑問に思われるほど美しく妖艶な雰囲気をかもし出す女性だ。二人の息子として二度めの人生をスタートさせることになった康太、もといサミュエルも父親には悪いが世の中不思議な事もあるもんだと思っていたりする。


「じゃあ僕はお部屋で魔法の勉強してるね!」

「サミー、勉強もいいが頭ばかりじゃなく体も鍛えなきゃ駄目だぞ」

「ジャック、それこそまだ早いわよ!どうせサミーちゃんに剣術を教えたいとでも思ってるんでしょ!」

「別にいいだろ、俺は自分の子供に剣術を教えるのがお前と結婚してからの夢だったんだから」

「まったくしょうがないわね、でもまだ剣術は早いわ!せめて七才までは駄目よ」

「ちぇー、わかったよ」

「サミーちゃん魔法のお勉強頑張ってね」

「はぁ~い!」


ヴェロニカはまるで駄々っ子に言い聞かせるようにジャックに言う。

サミュエルが生後半年に差し掛かった時にジャックが長期の仕事から帰ってきた時から何度となく見慣れた光景を見て笑いながらサミュエルは自分の部屋へ行く。

そして満面の笑みで、魔術書を開く。


(何々……魔術とは体力、精神力の二つを融合させ魔力に変換し使用するものである、まぁこれはお母さんに聞いて知ってるな)


ニコニコ顔で魔術書を読み進めるサミュエル。因みに魔術と魔法と若干言葉が違うがこれは、現在より千年前までは魔術と呼ばれていたのだが大規模な戦争がおき、余りにも沢山の人族、獣人族、龍人族、エルフ、ドワーフといった者たちが死に、悲惨な過去と決別する為に最も多くの命を直接的に奪った技術、魔術と言う名前を魔法と改めたためである。

そして現在サミュエルが読んでいる本の様に千年前の本もまだ現存していたりする。だが現存するとはいえ、戦争後魔術と名前が書かれている本は処分された為に魔術書と書かれている本は小さな城一つと同等の値段である。更に写本ですら家一軒の価値があったりする。


(ふむふむ、なるほど………例えば火魔法のファイヤーボールの場合、体力を七、精神力を三にして魔力に変換すれば威力や精密さは低いが効果範囲は広いファイヤーボールが出来るわけか)


″体力″は効果範囲や一度に複数の魔法を生成する効果がある。

″精神力″は威力や精密さを上昇させる効果がある。

サミュエルの例えに合わせて説明するならばファイヤーボールの直径がでかく複数で、温度があまり高くなく目標まで着弾するまでのスピードが遅いファイヤーボールとなる訳だ。


(なるほどなぁ~、今までは魔力を素早く生み出す訓練はしていたけど………体力と精神力の多可で性能が変わるのか)

(ん?得意系統?……………調べる方法があるのか……水晶って家にあったっけ?)


人によって得意な系統があるのだがその逆に不得意な系統もあり自分が会得したい系統だからといって会得出来るとは限らないのである。尤もすでに魔法に夢中になり魔法自体をこれから学び続けるつもりのサミュエルだが、訓練しだいで魔力を生み出せない者は皆無だが魔力を使用し魔法を使える者は数千人に一人という少ない割合なのだと気づいていないサミュエルだった。


「お母さん!得意系統を調べる為の水晶って家にある?」

「勿論あるわよ、いつもサミーちゃんが本を取りに行ってる部屋の机の引き出しに」

「いいかサミー、もし水晶に変化がなくても落ち込むんじゃないぞ!」

「うん?分かった……?」

「サミーちゃんなら大丈夫よ頑張って!」


サミュエルはジャックの言った意味を理解せぬまま部屋へ行きすぐさま机から西瓜ほどもある水晶を取りだしドキドキワクワクといった表情で手をあて魔力を流した。


(うおっ!………水晶が茶色になったと思ったら今度は白色に!ん?今度は緑色!?)


茶色は土属性、白色は聖属性、緑色は風属性である。そして水晶に色がついた順番がサミュエルが会得できる属性の最も得意な順位だ。

因みに魔力は生み出せても魔法が使えない者の場合水晶に変化は無い。


「なるほど、土と聖と風か」


この後両親に自分の属性を報告するとヴェロニカは魔法が使えるだけじゃなく三つもだなんてと泣いて喜びジャックは、外に出て満面の笑みで夕食まで素振りをしていた。

普段どうりにしていてもサミュエルの事を心配していた二人だったようだ。


(両親二人の様子が普通じゃないし、取り敢えず自分が会得出来る属性は分かったし、どんな魔法があるのかは明日調べればいいか)





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