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日本刀

昨日はメンテナンスで書くことが出来ず、毎日更新という目標が出来なくなるのでは…………と、ちょっとビビりました。

 新しい武器を手に入れる為、ミレーユの知り合いに会いに行くエフォールの三人。勿論、道行く人々の視線を集めながらである。

 そんな風に暫く進んでいると、鉄を叩くリズミカルな音が辺りに響き渡る。


「カンカンキンキンと沢山聞こえるね。……この辺は鍛冶屋が沢山あるみたいだな」

「ええ、十軒程ありますね」

「それで、ミレーユの知り合いっていうのは……まだ先?」

「そこを曲がった所です」


 ミレーユが指差す先にある曲がり角を曲がると一軒の建物が目に入った。その建物は、普通の鍛冶屋と比べれば少し大きく、他の鍛冶屋の建物よりも古い印象を受ける。そんな鍛冶屋の扉の上には、木の板の看板が掲げてあり、豪傑、と書いてある。

 サミュエルは店の前で立ち止まり、豪傑と書いてある看板を暫く見つめた後ミレーユに視線を向け話し掛ける。


「ここ?随分、豪快な名前の鍛冶屋だね」

「はい、ここで間違いないです。店の名前は初代が考えられたそうで、今は四代目です。………店の名前が豪傑なのに、鍛冶師の腕が普通以下だったら恥ずかしいので代々死に物狂いで鍛冶の技術を身に付けるそうですよ」

「はは…………可哀想だな……」

「クククッ初代とやらは、自分の子孫が怠けぬように考え、豪傑、と名付けたのだろうな」


 豪傑、という豪快な名前の裏に隠された悲しき物語を聞き、乾いた笑いしか出てこないサミュエル。内心で、店の名前を変えてしまえばいいのにと思いながら店の中に入る。


「いらっしゃい!…ん?ミレーユじゃない元気にしてた?」

「ふふふ、元気にしてましたよ。スカーレットはどうでしたか?」

「勿論!元気一杯だったよ!……それで……後ろの二人は?」

「紹介します、黒髪に黒目の方がサミュエルさん……私の、いえ私達姉妹の命の恩人です。次に、赤い髪に黒い皮膚、そして金色の瞳をしているのがカトナーさんです……因みにカトナーさんは魔族ですよ」

「凄い、初めて魔族の人を見たわ!それに黒髪に黒い瞳って………って、そうじゃなくて命の恩人ってどういう意味!?」


 まるで数10m離れた場所から話し掛けているような声の大きさで話すスカーレット、ミレーユの親友なのだそうだ。見た目は金色の髪に金色の瞳で、笑顔が似合う女性だ。少し体つきは、幼いが……それでもミレーユと同い年である。

 そんな元気一杯のスカーレットが、ミレーユの言った命の恩人という発言を聞き、目を見開き驚きの表情でミレーユに詰め寄る。

 そしてミレーユはそんなスカーレットに冷静に説明する。


「姉さんと妹と私三人が、盗賊に襲われ危ないところをサミュエルさんに救われたんです。……その後はサミュエルさんと一緒に、このフォークスの街まで帰って来る間にカトナーさんと出会いました。運命の出会いに感謝ですね」


 盗賊に襲われたというのにミレーユは、嬉しそうに話す。

 そんなミレーユの表情を見てスカーレットは呆れた表情をした後、ニヤニヤと笑みを浮かべサミュエルに視線を向けると自己紹介をする。


「へぇ……ミレーユがねぇ………初めましてサミュエルさん。それにカトナーさん。私はスカーレットよ!よろしくね!」

「よ、よろしく。スカーレットさん」

「貴様がミレーユの言う、腕の良い鍛冶師か?」


 サミュエルはスカーレットの勢いに押されながら挨拶をする。そしてカトナーは挨拶を返すでもなく、鍛冶屋に来た目的の為にスカーレットに尋ねる。せっかち過ぎるカトナーだ。

 そんな風に戸惑っている様子のサミュエルとせっかちなカトナーにスカーレットが返事を返す。


「スカーレットでいいわ。それに敬語は不要よ。………それと私も鍛冶師ではあるけど腕はまだまだ、腕の良い鍛冶師ってのは私のお父さんの事よ!」

「成る程な。……それなら悪いが貴様の父親に会いたいのだが」

「分かったわ、ちょっと待ってて!」


 まるで嵐のようなスカーレットが、カトナーに促され父親を呼びに店の奥に入っていった。

 それを見届けた後、サミュエルはミレーユに話し掛ける。


「物凄い、パワフルな女性だね」

「ふふふ、いつもあんな感じなんです。……理由は、スカーレットのお父さんを見たら納得すると思います」

「スカーレットのお父さんを見たら?」


 スカーレットの父親を見たら納得すると言われ、頭の中でクエスチョンマークを浮かべ首を傾げるサミュエル。

 そんな会話を二人がしていると、店の奥からドスドスという音が聞こえてきた。そしてサミュエルがその音の方へ視線を向けると、まるで筋肉の塊のような大男が出てきた。


「ミレーユちゃん、久しぶりだな!!はっはっはっ!!それで今日はどうしたんだ?新しい杖でも欲しいのかい?……それと後ろの二人は連れかい?」

「お久しぶりです、ドミニクさん。今日は……杖と剣、それに出来れば防具の方もお願いしたいんです。……それと紹介しますね、サミュエルさんとカトナーさんです」

「二人ともよろしくな、俺の名はドミニクだ!!……武器や防具の事は構わねぇよ!!しかしオーダーメイドってなると、金が高くつくぞ!!はっはっはっ!!防具は防具屋で武器は武器屋って具合に、そこで自分の体に合う物を見つけた方が安いぞ!!はっはっはっ!!」

(見れば納得するってこういう事か。…………スカーレットの二倍はパワフルだな)


 ドミニクと名のる男を見て納得した様子で大きく頷くサミュエル。スカーレットを嵐と例えるなら、ドミニクはまるで大嵐と言ったところだ。そんなドミニクの外見は、身長2m以上、体重は100㎏を超える大柄な男で、スカーレットと同じ金髪、金色の瞳をしている。

 そしてサミュエルはドミニクとミレーユの会話に入りながら、素材と魔石を出す。


「えぇと、すいません。今使っている剣だと強度不足と俺の剣技に合っていないので、斬る事に特化して尚且つ強度的にも満足出来る剣が欲しいんです。……素材はこの角と魔石を使って造ってくれませんか?………それからミレーユの杖も今より優れた物をお願いします」

「これは!?凄い!私こんな巨大な魔石見たことない!」


 サミュエルが取り出した魔石を見て感嘆の声を上げるスカーレット。その反応も仕方ないだろう。ランクBの魔物の魔石はそうそう出回らないのだから。

 ドミニクはその魔石と角をサミュエルから受け取り、まじまじと眺めると笑いながらサミュエルに言う。


「これはミノタウロスだな!!久しぶりに見たぞ!!高かっただろ?」

「その魔石と角は確かにミノタウロスのですが………買った物ではないですよ。ダンジョンの五階層にいたミノタウロスを倒して手に入れた物です」

「何!?サミュエルと言ったか!?お前が倒したのか?」

「俺だけで倒した訳じゃないですよ。ミレーユとカトナー、エフォールの三人で倒したんです」

「はっはっはっ!!やるな!!誰もあのダンジョンにいたミノタウロスを倒せなかったのに!!………気に入った!!そこにある剣を参考にどんな剣が良いか選ぶといい!!それをベースにこの魔石を使って剣を造ってやる!!カトナーだったか?お前はどうするんだ!?」


 サミュエルが自分達で倒して手に入れた、と言うと大笑いして杖と剣を造る事を了承するドミニク。そんなドミニクがカトナーはどうするんだ、と疑問を投げ掛けるがカトナーは淡々と、背中に斜めに差した剣を親指で指差し答える。


「……俺にはこの剣があるので必要ない」

「はっはっはっ!!そうか!!…………っ!?ちょっと待て!?それは……まさか………」

「クククッ、そうだ。……この剣の名はドラゴンスレイヤー………竜殺しの剣だ」

「……………隣の国に一振り………そしてここから、かなり遠い国に一振り………合わせて二本しか存在しないはず………なのに何故、その内の一本がここに?………」


 先程までパワフルな大嵐といった印象を受けるドミニクだったが、今はそんな様子が一変し、何とか声を絞り出しカトナーに尋ねるドミニク。因みにスカーレットは剣に視線をやり、固まっている。

 そんなドミニクにカトナーは淡々と答える。


「クククッ。ただ単に、このグレートアースの世界に存在するドラゴンスレイヤーの二本以外に見つかった……新しいドラゴンスレイヤー、というだけの事だ」

「…………見つかった?……………どういう………意味だ?」

「このドラゴンスレイヤーは、ダンジョン二階層の宝箱で奇跡的に発見出来た物だ」

「………信じられん…………はっはっはっはっはっ!!…凄いな!!」


 カトナーの説明を聞き、再びパワフルに笑い出すドミニク。一方サミュエルは、そんなドミニク達を横目に見本として棚に飾ってある剣に目を通す。

 すると一振りの剣でサミュエルの目が止まった。

 そこにあったのは……………刀。そう日本刀があるのだ。サミュエルは驚きに目を見開くと、その一振りの刀を手に取り、ドミニクに尋ねる。


「何故、ここに日本刀があるんですか!?………これはドミニクさんが鍛えた刀なんですか!?」


 先程まで驚いていたドミニクのように、サミュエルは大笑いしているドミニクに尋ねる。サミュエルが驚くのも仕方ないだろう。何故ならサミュエルは今まで、この世界で日本刀など見たことが無かったからだ。だからこそ、このグレートアースの世界に、刀……日本刀が存在している事にこれ程驚愕しているのだ。


「日本刀?…刀?…はっはっはっ!!何の事か分からんが、それはダンジョンで発見された剣を俺なりに造りあげた物だ!!本物よりも良いできだぞ!!……ただそれを買う武器屋はねぇがな!!誰も使わんのだ!!はっはっはっ!!日本刀っつうのはその剣の名前か?初めて知ったぞ!!はっはっはっ!!」


 ダンジョンで日本刀が発見されてから百年以上が経つが、一人として日本刀を使う者はいないので売れないのだ。だがドミニクは腕を磨く為に、日本刀を造り尚且つ発見された日本刀より遥かに優れた日本刀を造りあげている。

 サミュエルはそんな日本刀をまじまじと眺めるとドミニクに視線を向け言葉を発する。


「ドミニクさん!この刀をお願いします!ただ…野太刀………って言っても分かんないか………えぇと、長さ100㎝にして下さい!」

「はっはっはっ!!任せとけ!!長さ100㎝の日本刀だな!!それにミレーユちゃんの杖!!はっはっはっ!!それだけなら三日で出来るぞ!!……ただ、防具に回す魔石や角は無いから防具は出来ねぇが、構わねぇか?」

「はいっ!」


 サミュエルはドミニクに日本刀……野太刀を注文する。そして満足した様子でミレーユとカトナーに声を掛ける。


「良し!俺の剣と、ミレーユの杖を注文したし。いよいよ討伐依頼の方に行くか!」

「はい!」

「クククッ、そうだな」


 ミレーユとカトナーは笑みを浮かべ頷く。そんな二人の反応を確認したサミュエルはドミニクとスカーレットに挨拶した後、店を出て宿屋に今日の分の宿賃を三日後に回してくれ、と頼みに行き。その後は、馬車を借りに馬屋に行った。

 そしてエフォールの三人は慌ただしくワイバーンが出没する近くの村へと出発した。

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