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初めてのボス

充分な睡眠をとった翌日、宝箱のある部屋を出て次の移動魔方陣を目指し出発したエフォールの三人。


「しっかし、広いな!ダンジョンって!」

「ええ、そうですね。それに……どれだけの魔物がいるんでしょう?」

「三階層に来てから、既に倒した魔物は百体は越えたよな?」


サミュエルとミレーユがダンジョンの広さと、一つの階層に存在する魔物の多さに驚き話していると、カトナーが笑みを浮かべ二人に声をかける。


「クククッ、おい!前を見ろ!」

「ん?……おお…やっとか!」

「これで四階層へ行けますね!」


三人とも笑顔を見せながら通路の先をみている。サミュエル達の目の前には、次の階層に行くための移動魔方陣をようやく見つけたのだ。


「良し!それじゃあ、先に行こう!」

「はい!」

「……………」


サミュエルの言葉を聞き笑みを浮かべ頷くミレーユ、カトナーは無言だが同じく笑みを浮かべつつ頷く。

そして三人は魔方陣の内側に入ると、前回同様に視界の歪みを感じた後、次の階層へ移動していた。


「うぅ………これは慣れるまで時間が掛かるな」

「そうですか?」

「フンッ、俺はもう慣れたな」

「私も慣れました」

「マジで?………俺はまだ不快な感じがする」


サミュエルは移動魔方陣に、まだ慣れていないようで眉間に皺をつくり、気持ち悪そうにしている。だがミレーユとカトナーは、たった一度で慣れてしまったようで、魔物がいないか周囲を確認しながらサミュエルに答えている。


「大丈夫ですか?」

「おう!もう大丈夫だ!………それじゃあ先に進もう!」

「はい!」

「ようやく四階層だな。この次が……クククッ、ボス部屋か」

「楽しみだな!やっぱりボスって言う位だから、さぞかし強いんだろうな!」


早くボスと戦いたいのだろう、待ちきれないといった様子のサミュエルとカトナー。そんな二人を優しげな笑みを浮かべながら見るミレーユ。

そして三人はようやく四階層の探索へと進み出した。








四階層の探索を始めて半日が経過していたが、まだ次の階層にはたどり着けていない。

しかしサミュエル達三人は襲ってくる魔物を全て倒して進んでいるのだが、かなり早いペースでこの四階層を進んでいた。


「………魔物のバリエーションが増えてきたな」

「そうですね。ファイアーファング、ポイズンブル、そしてウォーターファング……火、毒、水ですからね」

「そうだな………魔物自体はまだそれほど強敵といえるほど強くないが、組み合わせ次第では侮れないな」


三階層までとは違い、魔物が持つ能力が幅広くなってきているため、楽に倒せなくなってきていた。もっとも楽に倒せなくなってきたとは言え、倒すのに苦労する程ではないが。

しかしサミュエルは油断する事は無く、ミレーユに付けている護衛のゴーレムを一体増やし、今は二体にしている。

そんな風にして魔物の強さと自分たちの強さを比べながら油断せず冷静に進んで行くサミュエル達。

すると三人の前に立ち塞がるようにまた魔物が出てきた。


「カトナーはウォーターファングを頼む!ミレーユは援護だ!俺はファイアーファングを殺る!」

「はい!」

「……………………しゃああああ!!」


現れた魔物は、ウォーターファング三体にファイアーファング二体だ。

サミュエルの指示を聞きカトナーはすぐさま飛び出して突きを放ち、剣を横薙ぎに振るい倒していき、サミュエルも負けじと剣を振るう。

そしてミレーユはサミュエルとカトナーを、戦いの邪魔にならぬよう絶妙なタイミングで援護する。

やがて、ウォーターファングにも慣れたのか、さほど時間も掛からず全ての魔物を倒した三人は少し乱れた息を整え、先へと進み出した。

しかし進み出した三人は、目の前の曲がり角を曲がると三人とも同時に立ち止まった。

その理由は………………………………………。


「うおっ!?………これがそうか?」

「ええ、そうです!」

「クククッ…三階層に比べ、かなり早いペースで見つけられたな」


そう三人が立ち止まった理由は、下へと続く階段を見つけた為である。

どうして移動魔方陣ではないのかというと、何故かボス部屋へと行く方法は全てのダンジョンで共通していて階段でしかいけないのだ。


「………………この階段の先に!」

「…………………………………………………………」

「クククッ、やっと強力な魔物との戦闘だな!」

「ミレーユ?……………大丈夫か?」

「……え?……あ…はい!大丈夫です!……少し緊張してるだけですので」

「深呼吸するといいよ。きっと落ち着けるから」

「は…はい!………すぅぅ……はぁぁ」


カトナーは抑えきれないといった様子で殺気を漏らしている。

そしてミレーユは少し表情が強張っていたがサミュエルがそれに気付き、深呼吸をすると良いよと言い、その言葉通り深呼吸をして、決意を秘めた目でサミュエルを見つめ言葉を発する。


「もう大丈夫です!必ず勝ちましょう!」

「うん!勿論だ!………二人とも道具の確認はいいか?」

「はい!」

「あぁ、問題ない!」

「それじゃあ、行こう!」

「はい!」

「おう!」


サミュエルの言葉に勢いよく返答するミレーユとカトナー。

そして三人とも体に魔力を満たした状態で階段を下り始めた。









百段ほど階段を降りると半径50m位の部屋に辿り着いた。

そして部屋の中央に、全身灰色の毛に覆われていて頭には巨大な二本の角を持った全長8mから9m程のミノタウロスが大きな両刃の斧を持ち立っていた。

その巨大なミノタウロスはサミュエル、ミレーユ、カトナーの三人に強烈な殺気をぶつけながら、ゆっくりとサミュエル達に近づき始めた。


「でけぇな………それに……すげぇ殺気だ!」

「…………ミノタウロス!!……魔法は使えませんがかなり強力な肉体を持っている魔物です!!」

「クククッハッハハハハァ!!いいぞ!これほどの奴がいるとは!!」


ミノタウロスは、巨大な体格と強力な肉体を持っている為、討伐ランクBと高ランクの魔物である。だが確かに強力な肉体を持っているが、魔法は使えないのでランクBとはいえ、ランクBの中では比較的倒しやすいと言われている。

もっとも、倒しやすいとはいえ、実際に倒せる事の出来る者はそうそういないが。


(ミレーユの護衛に付けているゴーレムは、二体だけだと不安だな………あと三体増やすか)

「出でよゴーレム!ミレーユの護衛に付け!!」

「サミュエル!!作戦はどうする!?」

「カトナーは前衛を頼む!俺はカトナーをサポートする!……ミレーユは魔法でバンバン攻撃してくれ!!」

「分かりました!!」

「クッハハハハハッ!!任せろ!」


サミュエルはミレーユを守る壁を更に厚くし、ミレーユとカトナーに指示を出す。

そして指示を出し終えると、まるでそれを待っていたかのように、ゆっくり近付いていたミノタウロスが駆け出した。


「来るぞ!!気を付けろ!!」

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