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ダンジョン

ようやくダンジョン突入です。

よろしくです。

酒を飲み、少し豪華な宿に泊まった次の日。

サミュエル、ミレーユ、カトナーの三人はダンジョンの前で警備兵にギルドカードを提示していた。


「魔族とは……初めて見たな。それで?……君らはパーティーなのか?そうならこれにパーティー名と人数を記入してくれ」

「はい…………………これでいいですか?」

「エフォールね……確認した。………頑張ってこいよ!………死ぬなよ!」


サミュエルがパーティー名と人数を記入し終わると、警備兵の男が死ぬなと声をかけてサミュエルたち、エフォールの三人を送り出す。

そしてエフォールの三人は小屋のような建物の中に入る。


「これが?……ダンジョンの入り口なのか?」

「私も初めてで………確かな事は言えませんけど………恐らく間違いないかと」


サミュエルは怪訝な表情で、地下に続く階段に視線を向ける。

するとカトナーが待ちきれないといった様子で我先に地下へと続く階段に足を踏み出し、サミュエルとミレーユに声をかける。


「どうした?早く行くぞ!……クククッ、どんな強い魔物がいるのか楽しみだ!」

「わかったよ……さぁ、ミレーユ」

「はい!行きましょう!」


地下へと続く階段を一歩一歩進む三人。

しばらく進むとサミュエルは一度視線を地上の方へ向け、溜め息を吐いた後再び視線を下へ向ける。

八百段ほど階段を降りてきたが、まだ下まで続くようだ……とそんな事を考えていると、ふと何故地下なのに明るいんだと疑問に思いミレーユに質問する。


「ミレーユ………何で地下なのに明るいんだ?」

「壁が光ってるんです。何故壁が光ってるのかは解っていませんが………ダンジョンを調べている方々の話ですと………ダンジョンは一つの生命体だという説がありまして…ダンジョンの中に存在する魔物や貴重なマジックアイテム、そして最深部にある祭壇をダンジョン自身が作り出している……という説です 」

「ダンジョンが一つの生命体か………まぁ、だとしたら何で祭壇とか魔物とかマジックアイテムとか作るんだろう?」


サミュエルは眉にこれでもかと言わんばかりに皺を作り顎に手を当てながら考え込んでいる。


「人間をダンジョンの中に誘き寄せる為だと言われています」

「人間を!?」

「はい……正確に言えば、人間とそれに類する者達を…ですね。実際このダンジョン内で死ぬと、一時間程で死体は装備や服を残し、溶けるように消えていくそうです」

「マジで!?魔物が死ぬと魔石や素材だけ残して消えるのは知っていたけど、人間も死ぬと消えるのか………もしかしてそれって…ダンジョンが消化したとか?」

「そう考えられています。ですがその説とは違うもう一つの説も存在します」


ダンジョンは自分が予想していたより、えげつないなと考え唇を真一文字に結び、眉間に皺を作り嫌そうな顔をするサミュエル。

そしてミレーユの話すもう一つの説とやらの続きを促す。

因みにカトナーは興味なしといった様子だ。


「もう一つの説って?」

「もう一つの説とは……神が我々に与えた試練だ……という説です。そしてその試練を………つまり祭壇である一定数のスキルを集める事が出来た強き者には更なる神からの試練を与えられ…それをクリア出来た時、想像も出来ないような力を貰えるそうです。…………正直私は神云々というのは信じていないので、ダンジョンが生命体だという説のほうが正しいと思っています」

「成る程ね……神様か……………俺がここに存在してるんだ、その可能性も…」


ミレーユからダンジョンの説明を聞き、ミレーユとカトナーに聞こえないような小さな声で、神が存在する可能性もあるな、と呟くサミュエル。

そして渋い表情をしたまま階段を進んでいると……幅15m、高さ15mの広い通路に辿り着いた。

先程の階段とは違う、その広い通路を見てカトナーが獰猛な笑みを浮かべ言葉を発する。


「クククッ……どんな強敵との出会いがあるのか……クククッハァァハッハッハッ!!楽しみだな!!なぁ、サミュエル!」


カトナーに影響されたのか知らず知らずの内にサミュエルも獰猛な笑みを浮かべ、カトナーに答える。


「あぁ、邪魔する奴は全て蹴散らして進むぞ!」

「はい!私達、エフォールの初陣ですし、頑張りましょう!!」

「邪魔する奴は全て………か……ククッ、そうだなサミュエルの言葉通り全て蹴散らして進むとしよう!!」


サミュエル達、エフォールの三人は勢いよく通路を進みだした。

因みにエフォールの三人が入っているダンジョンは未だに攻略されていないダンジョンの一つだ。

そしてダンジョンにはそれぞれに推奨レベルがありこのダンジョンは、推奨レベル30でサミュエルより10レベルも高く、ミレーユにとっては22レベルも高い。

その為サミュエルは、ミレーユを常に自分の後ろを歩かせ、戦闘になった場合はゴーレムを護衛につける作戦にしている。


しばらく通路を右に曲がり左に曲がりと、進んで行くと、ダンジョンに入って初めての魔物が現れた。


「ゴブリンと…………あれはポイズンブル!」


ポイズンブルとは……見た目は牛で、頭の左右から二本ずつ合計四本の角を持ち、その角には毒があり大変危険な魔物なのだ。そしてそのポイズンブルの討伐ランクはランクDである。


「何で違う種の魔物同士が一緒にいるんだ!?」

「ダンジョン内にいる魔物は全部がそうとは限りませんが、協力する者も存在します!この魔物達のように!」

「………成る程………」


ミレーユの説明を受け、冷静になったサミュエルは魔力を体に満たし呪文を唱える。


「出でよ!ゴーレム!」


ミレーユのそばに光の塊が現れたと思った次の瞬間には青銅製の鎧と同じく青銅製のロングソード、カイトシールドを装備したゴーレム一体が出現した。

そしてサミュエルがそのゴーレムに指示を出す。


「ミレーユに魔物を近付けるな!」


そう指示をだすとカトナーと共に魔物達の方に飛び出す。サミュエルが牛一体へ、カトナーが残りのゴブリン五体へと。

一方ミレーユは魔力を体に満たし何時でも呪文を唱えられる状態で待機している。


「うぅるぅあああ!!」


「しゃあああああ!!」


サミュエルは剣の間合いに入ると同時にポイズンブルに突きを放つ。だがそれをポイズンブルはギリギリで避けるとすぐに角を左右に振りながら突撃してくる。

カトナーの方は、たった一撃で三体のゴブリンの体を上下に切り裂き倒した。

そして残り二体のゴブリンに向かい剣を構える。


「うおっ!!っと、これでも喰らえ!!ストーンランス!!」


「終わりだ!……しゃぁあああ!!」


サミュエルはポイズンブルの突撃を横に転がり避けると右膝をついた状態で人差し指と中指をポイズンブルに向け呪文を唱える。すると岩で出来た槍が三本出現し、此方に振り向こうとしていたポイズンブルの横腹に放たれ、三本全て命中すると痛みのためか悲鳴を上げ絶命した。

カトナーは剣を左から右に振る、すると先程と同じようにゴブリンの体が上下に別れた。


「まだ一階層だからか、まだそんなに強くないな」

「こんな奴らでは無い!俺が求めているのは!」


魔物を全て倒した後サミュエルとカトナーが話している。

そんな二人の会話を聞いていたミレーユが話し出す。


「強力な魔物がいて先に進めないと言われているのは四階層の先の五階層に存在するボスの事です」

「ほう……ボスと呼ばれる魔物か…ククッそれは楽しみだ!」

「ボスって、一つのダンジョンに何体もいるの?」


ミレーユの言葉を受け、カトナーは五階層かと呟き嬉しそうに笑い。サミュエルは倒した魔物が消えたので残った魔石とポイズンブルの角を拾い収納しながらミレーユに質問する。

そしてミレーユは以前見た本の内容を思い出しながら答える。


「ダンジョンによって、何階層まであるのかは違うので確かな事は言えませんが、五階層事にボス部屋と呼ばれる部屋がありそこに強力な魔物が存在するそうです」

「ボス部屋か………楽しみだな。よし焦らずじっくり進もう!」

ミレーユの説明を聞き、屈託のない笑みを浮かべながらミレーユとカトナーにじっくり進もうと声をかけるサミュエル。

そして二人はサミュエルの言葉を受け、一人はこの上ない獰猛な笑みをし、一人は緊張した表情をし、頷くと先を進みだした。

因みにゴーレムはミレーユの護衛の為、出しっぱなしだ、ゴーレムを消して魔物が出た時にまた出すより魔力の節約になるからだ。


それから言葉通りじっくりと焦らず進んで、最初の戦闘以外にゴブリンを十五体、ポイズンブルを七体倒した。

そんなふうにして進んでいると魔方陣を見つけた三人。


「………これは?……」

「これが次の階層に行くための移動魔方陣です」

「移動魔方陣!?………ワープするのか?」


次の階層に行くためのには、移動魔方陣の内側に入れば勝手に転送してくれるのだ。

そしてその事をサミュエルとカトナーに説明するミレーユ。


「という訳です。因みにこの地面の下に転送されているのかどうかはわかっていません」

「成る程、まぁ取り敢えず入りますか!」

「はい!」

「……………」


取り敢えず入るかというサミュエルの言葉にミレーユは勢いよく返事をし、カトナーは笑みを浮かべ無言で頷くと三人は魔方陣の内側に入る。

すると魔方陣が光だしたと思ったら視界がぐにゃぐにゃと歪み気づけば先程とは違い一本道の通路にいた。

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