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続続 ゴブリンキング………………そして黒い影

「出でよ!!ゴーレム!!!」


サミュエルが大声で呪文を唱える。

するとサミュエルを中心に八の字型に青銅製の鎧、青銅製のロングソードと少し大きめのカイトシールドを持ったゴーレムが四体出現した。

それを見ながらサミュエルは、大きく、深く深呼吸をし、もう一度魔力を生み出し大声で叫ぶ。


「ストーンランス!!!」


サミュエルの視界全体に、直径4㎝、長さ1m50㎝の岩の槍が四十本も出現した。

そしてここでようやく突然聞こえてきた大声に混乱していたゴブリンの集団がサミュエルの方に視線を向け睨み付けてきた。

サミュエルの視線の先は空中に浮かぶ四十本もの槍、そしてその槍の向こうは谷の底の一面に蠢く緑色のゴブリン。

普通は絶望的な状況だろう、だがサミュエルは不適に笑い、右腕の人差し指と中指を左から右へと言葉を掛けながら振る。


「貫け!!」


サミュエルから見て左から指先が通り過ぎるとその先にある槍は無数のゴブリンへと放たれていく、やがて指先が右側へといき終わる。

すると槍がゴブリンの胸や腹、首等を貫通し後ろにいたゴブリンにも突き刺さって百体ものゴブリンが一度の魔法で死んでいた。

まだ約二百体程もいるがそれでも一度に仲間を百体も殺された、その恐怖にゴブリン達がサミュエルから下がっていく。

だが次の瞬間…………………。


「「「「「ギィギィイ!!」」」」ギィイイ!」


ゴブリン達の頭上から火球が降ってくる。

一度に放たれる火球は二つから三つと少ないが、それでもどんどんとゴブリンの数が減っていく。

三分程も火球の雨は止まず……………火球が止んだ時には、ゴブリン達に何もさせず、混乱から冷静になる時間も与えず、辺りに肉の焼ける匂いを残し て……………残り四十体から五十体程になっていた。


「ミレーユ!後は任せろ!!」


火球の雨を降らせていた女性、ミレーユに視線を向けると地面に膝を着いているのだろう、谷底からは顔しか見えなくなっていて、かなり辛そうな表情をしていた。そんなミレーユの表情を見て体力、精神力が限界なのだろうと判断し、後は任せろと気合いの入った表情と声で叫ぶサミュエル。

そしてサミュエルが視線をゴブリン達に向けるとゴブリンキングがゴブリンの頭を掴み上げ盾のようにしてミレーユとの間に掲げていた。

その様子を見てサミュエルは眉をひそめて睨み付け、ゴーレムに指示を出す。


「ゴーレムよ!ゴブリンを殲滅せよ!殲滅させ次第、俺の援護に来い!!」


そう指示を出すと一斉に生き残っているゴブリン達に向かってゴーレムが走り出した。

そしてサミュエルはゴーレムが走り出した後、魔力を生み出し、ゴブリンキングに向け呪文を唱えながら素早く剣の間合いに入る。


「ストーンボール!」


直径10㎝ほどの岩が十個、出現した瞬間、ゴブリンキングはまた新たな死体を手に取り盾にする。

そしてストーンボールは放たれるが全て死体で防がれてしまう………だが、死体で両手の塞がっている隙に、サミュエルはゴブリンキングの懐にはいった。

そして……………………………………………。


「うぉおおりゃやあ!!」


左から右へ胴斬りを放つサミュエル。しかし、確かに斬れたが皮膚しか斬れていない、皮膚が硬すぎるのだ。

その事にすぐに気づき渋い表情をするサミュエル。


「ちっ!硬すぎる!……もっと魔力を体に満たさないと」


サミュエルはこのままでは不味いと集中して魔力を生み出す為に後ろに飛び退く。

そしてゴブリンキングが怪我をした腹の傷を見て大きな歯を剥き出しにして叫ぶ。


「グォォオ!!……………グググォア!」

「はぁぁぁああ!!」


ゴブリンキングが腹の底から標的を威嚇するために出した叫び声に、標的のサミュエルはまるで意に介さず、集中した様子で魔力を生み出した。


そしてサミュエルとゴブリンキングの両名は睨み合いながら、一瞬の隙をお互いに探す。







だがお互いに隙を見つけられず、数分が過ぎた……………その時、青銅製のゴーレムがゴブリンをゴブリンキングの方に蹴り飛ばしたのだ。

そしてゴブリンキングが何が飛んできたのかとそちらに目線だけ反らした瞬間、サミュエルはゴブリンキングの右側へ飛び出す。


「グァア!」

「おぉるぅああああ!!」


だがゴブリンキングもサミュエルが出てきた事に反応してサミュエルを捕まえようと右腕を突き出 す…………が時すでに遅く、抜き胴斬りを放たれた。

そしてサミュエルがゴブリンキングの横を通り過ぎると……………………。


「グゥ……ゥ……ゥ…………」


腹から内臓と血を谷底にばら蒔きはがら苦悶の表情と微かに聞き取れるほどの小さな声を出し、大の字に背中から倒れ、絶命したのだった。


「はぁ…はぁ…疲れた…………………」


息を切らし疲れた表情で生き残りがいないか確かめるサミュエル。そして全滅したのを確認した後ミレーユに声をかけようと谷の上を見るがミレーユの姿が見えず何かあったのかと焦りだす。

だが次の瞬間、背後からミレーユに話し掛けられる。


「サミュエルさん!お疲れ様でした!」


満面の笑顔で声を掛けてくるミレーユを見て安心した様子のサミュエルが同じく笑顔で頷く。

そしてお互いに無事な事を確認した後、これからどうするかを話だした。


「どうしますか?すぐに村に帰ります?」

「少し休憩したらゴーレムを出して討伐証明部位や魔石を剥ぎ取りさせるよ。その後で村に帰ろう。…………それと出来れば死体を燃やそう。流石にこんなに死体が、村の近くにあるのはいただけない」


何故サミュエルが死体を燃やそうと提案したかというと、約三百体も死体があると魔物が沢山集まるかも知れないし病を呼ぶかも知れないからだ。

村が近くにあるので尚更だ。


「確かにそのままにするのは良くありませんね」


納得したのか大きく頷くミレーユ。

そしてサミュエルは出したままのゴーレムに谷の前後を二体ずつにしてこの場所を守護させ、ミレーユとサミュエルは一時間程、休憩した。







そして休憩が終わると剥ぎ取りをし、素材を魔法で収納し、死体を燃やした後、村に向け出発した。

来た時とは違ってゆっくり話しながら歩いて帰る二人。だが来たときは魔物や野生動物と遭遇しなかったのだが、帰りは違ったようだ。


「ん?あれは……人か?」


500mほど先に一人の鎧を身につけた人物が見えた。

そしてサミュエルは冒険者ギルドで男性職員に説明された事を思い出した。


「恐らく、あいつが冒険者ギルドで説明された黒い男じゃないか?」

「かもしれませんね。でも魔族なら心配する必要はないと思いますよ」


ミレーユが心配しなくても大丈夫、魔族ならと言うがサミュエルはそれならいいが…………と考えなら顰めっ面で鎧の男に近づいていく。

そして相手の表情が見える位置まで近づき皮膚の色を確認してほっとするサミュエル。何故なら皮膚が黒かった為、魔族だと判断したのだ…………が……………………。


「ククククっ。なかなかやるな貴様」

「え~と、すいません…………あなたは魔族の方ですか?」

「俺が魔族だと?何故そんな勘違いをしたか知らんが……俺は魔物だ」


凶悪そうな笑みを浮かべ自分は魔物だと言う黒い男、そしてそんな返答を返され意味を理解出来ず聞き返す二人。


「「は!?」」

「魔物だと言ったんだ。俺はヒューマノイドゴブリンだ。ククククっ、俺は貴様のような強い奴と戦いたいのだ」


パニックになっている二人に凶悪そうな笑みを浮かべながらも親切に再度、答えるヒューマノイドゴブリン。そしてそんな返答にまた聞き返す二人。


「「は!?」」

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