続 ゴブリンキング……………そして黒い影
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サミュエルとミレーユが村を出発し、約三時間。夜の闇の中とはいえ、今日は満月のおかげか少し明るい、その為もう既に二人は、ゴブリン達が発見された場所に到着していた。
かなり急いだのだろうサミュエルは平気そうだが、ミレーユは眉の間に皺を作りながら息を整えている。
そしてそんなミレーユの状態を見て、サミュエルが声をかける。
「ミレーユ、大丈夫か?」
「はい……大分落ち着いてきました」
「ミレーユはここで周囲を警戒していてくれ。俺は少し奥に行ってゴブリンや、肌の黒い男とやらがいないか確認してくる」
「一人で行動するのは危険です!」
ミレーユの言葉ももっともだが、サミュエルが一人で行くと決断した理由は二つある。
ここは辺り一面岩しかない渓谷である為、木や背の高い草などの身を隠すような物が無いので二人よりは一人のほうが比較的見つかりにくいと判断したのだ。
そして村を出てこの場所まで移動する間に、サミュエルがミレーユに何の魔法を使えるのか、魔法以外にも戦闘手段はあるのか、と質問すると火魔法のファイアーボールしか使えない、魔法以外の戦闘手段は短刀術とナイフの投擲技術だと言われていた為である。
サミュエルはそれを聞き今回の状況では、短刀術それとナイフの投擲技術は役に立つが今は夜で、尚且つまずは敵にばれる事も無く索敵に集中しなければならない為ファイアーボールは、″私達はここにいます″といっているようなものである為、サミュエルはそれら、ファイアーボールと隠れる場所という二つの事から一人で行くほうがいいと判断した。
そしてサミュエルはミレーユに要点のみをかいつまんで話す。
「火魔法は夜ではかなり目立つ………それに隠れる場所が少ない………そして俺は土属性以外にも聖属性、風属性とさらには次元魔法の一つ空間魔法で弓、投げナイフ等…色々な武器を所持し、敵にばれる可能性の少ない攻撃手段を持っている………だからだ」
「わかりました…………。ですが、ゴブリンの集団を確認したら一人で戦わないで下さい!」
「ああ、勿論だ。黒い男か敵を確認したらすぐに戻ってくる。…………じゃあ、またあとでな」
「はい…お気をつけて」
サミュエルの説明を聞き渋々といった表情で頷いた後、今度は心配そうな表情でサミュエルを送り出すミレーユ。
そしてサミュエルは月明かりの中を姿勢を低くした状態で素早く進んで行く。
ミレーユと別れて十五分ほど進み、ようやく目的のゴブリンの集団をみつけたサミュエル。
そしてその集団の中でトップに君臨する、ゴブリンキングを探す。
(どいつがゴブリンキングなんだ?……………見たところ、これといっ……………!?……あいつか!?だがゴブリンとは思えないほどでかいな!!……)
サミュエルはゴブリンキングの姿をその目で見て驚愕している。
初めて見るのだ、それもしょうがない事だろう。ゴブリンキングの身長は通常のゴブリンの約二倍程もあり、腕の太さが通常のゴブリンの胴回りと同じ位ある。まるで少し小さいオーガである。
(大きいな………見たところ倒せない程ではないと思うが………だが周りのゴリブリンを同時にとなると厄介だな………ミレーユと二人だけじゃあ無理じゃないか?………………ミレーユに報告して退くか否か判断するか)
サミュエルはゴブリンキングとその周囲に集まっているゴブリン、三百体程の集団を見て二人ではかなりキツいと、冷静に分析していた。
そして一旦ミレーユの所に戻り報告してどうするかを決めよう、と判断し来た方向に戻っていく。
無事に戻って来たサミュエルを見つけ、その目にうっすらと笑みを作りサミュエルを迎えるミレーユ。
「お帰りなさい。…………どうでしたか?」
「恐らくゴブリンキングと思われる奴を発見した………肌は普通に緑色だが……体長約260から280㎝といったところで、腕回りは通常のゴブリンの胴回りと同じ位あった」
「私が聞いた事のある情報と一致しています。ゴブリンキングと思って間違いないかと思います」
ミレーユがゴブリンキングの特徴と一致する事を サミュエルに伝える。
間違いないとの言葉を聞きこれまでよりも一層、眉をひそめ深刻そうな表情で言葉を発するサミュエル。
「ゴブリンキングは単体ならば確実に倒せると思うが…………通常のゴブリンの数が尋常じゃない…………約三百体だ。…………幸い、弓といった物を持っている者がいなかったため、上位種はいないと思うが」
ゴブリンの数を聞き驚愕して言葉を失った様子のミレーユ。
それも致し方ない、ミレーユが聞いた過去に出現したゴブリンキングに率いられていた数はいずれも百体程の規模でありその三倍の三百体等聞いたことは無かったのだ。
そんなミレーユを見ながら優しい声音でサミュエルがこれからどうするかを相談する。
「正直、かなりキツいと思う………どうする?一旦退いてギルドに報告して周辺の村や街の冒険者を呼んで貰うか?………まぁそれが………あくまで一番堅実的な答えだと思うが………」
「…………………………………………………………」
ギルドに報告しに帰るのが一番堅実的だと言うサミュエルの言葉を聞き考え込むミレーユ。
普通、冒険者に成り立ての二人じゃ無理なのだからギルドに報告しに帰るのが良いのだが、このまま帰ってしまったら陽が昇るとともに村に攻めて来るかも知れない、等と色々考え逡巡していたがやがてサミュエルの言葉の一つに疑問を持ち首を傾げながら聞く。
「あくまで?…………とは?」
「ゴブリンの集団がいる場所はまさに渓谷のど真ん中だ。………だからミレーユが谷の上からファイアーボールを打ち続け、俺が奴等と同じ谷の底に行き魔法をぶち込む!」
「それなら………確かに……ですがサミュエルさんがかなり危険です!」
「大丈夫だ。………青銅製のゴーレム四体に同じく青銅製の盾を持たせて生成し、俺の身を警護させれば問題ない。ミレーユの援護もあるしな!」
「そうか、サミュエルさんにはゴーレムがあったんですよね………それなら……わかりました!やりましょう!」
地形を一言で説明するとグランドキャニオンと言えばわかるだろう。そのため、サミュエルはこんな作戦を考えたのだ。
そして今度はミレーユと共にゴブリンの集団を見つけた場所に移動する。勿論、周囲を警戒しつつ。
(良し、ミレーユも位置についたな!)
サミュエルは指示した位置にミレーユが到着したのを確認した。
そして、緊張した面持ちで深く深呼吸するとミレーユに聞こえるように大声で叫ぶように呪文を唱える…………………………………………………。
「出でよ!!ゴーレム!!!!」




