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初めての野宿

盗賊達の死体を処理した後サミュエルとミレーユ、荷物を持たせた岩のゴーレム達は馬車に辿り着いた。

そして二人を見つけたマリアンヌが声を掛ける。


「サミュエルさん、ミレーユ、お疲れ様でした」

「荷物は馬車の中に入れますね」


マリアンヌの言葉にサミュエルが返事を返し馬車の扉をくぐり中に荷物を持って入るとマリンが安心した様子で眠っているのを目にし、音をたてないように静かに荷物を置いていく。

そんなサミュエルの様子を見てミレーユが声を掛ける。


「大丈夫ですよ。マリンは一度寝ると、例え耳元で叫んでも起きませんから」


そんなミレーユの言葉を聞き笑いながら答えるサミュエル。


「ははは、まぁそれでも一様、今回はあんな事が起きたんですから、気を使って損はないと思いますし」


そう答えるサミュエルの顔を優しげな表情で見ながら「確かに、そうですね」とミレーユは答え、マリンの方に視線を向け頭を撫でる。


「取り敢えず荷物は全部馬車の中に入れましたし、お二人はどうぞ、ゆっくりお休み下さい」

「すみません、サミュエルさん。何から何まで」

「いえいえ、一期一会、一つの出会いを大切にと言いますし」


マリアンヌが恐縮した様子で言うがそれに笑顔で大丈夫ですよ、と答えるサミュエル。

そしてさらに言葉を続ける。


「それじゃあ俺は外で食事とったら休むので…………そう言えばお二人は何か食べられましたか?まだでしたらこれから食事を作るのでご一緒にどうですか?」


食事は摂ったかと聞く、その質問にミレーユが答える。


「大丈夫です。食事を摂った後の…………あの出来事でしたから」

「そうですか、それではお休みなさい」


もう陽も完全に落ち、辺りは暗闇に包まれている為お休みなさいと声を掛け、馬車の外にでるサミュエル。

そしてマリアンヌとミレーユはサミュエルにお休みなさいと返事を返し、少し普通より大きい馬車の中で横になり眠りについた。


「あぁ、かなり遅くなったな晩御飯」


サミュエルは一人、夜の暗闇のなかでそう呟くとブリッツの街を出る時に収納していた干し肉と革で出来た水筒を取り出し、食事を始める。

そして、そういえば初めて人をこの手で殺めたが、よくある漫画やテレビドラマに出てくる人のように取り乱したり、落ち込んでいないという事に気付き、何故だろうと考え込む。


(う~ん…………………………普通は俺は何て事をしてしまったんだ……………………とか考え込むものじゃないのか?やっぱりこの世界に転生して、もう十五年経つんだから……………この世界の常識に俺の思考も変化したのかな)


より正確にいえば、今日殺した盗賊達は人を殺め、人の財産を奪い、尚且つ人の尊厳を踏みにじるような輩だったという事もあるのでサミュエルが自分で判断したこの世界の考え方に順応したのと含め、取り乱す事も無く冷静でいられたのだ。


(まぁそれはそれで、結果オーライかな。うじうじ悩むよりも、俺としては………………………人を助けられて良かったと思えるし)


そんな風に考え、自己完結しながらそういえば冒険者ギルドにあの盗賊くずれの冒険者を報告しないといけないな、と考えながらゴーレム達にゴーレム内の魔力が尽きるまで周囲を警戒せよと指示をだし眠りについた。












「ん?う~ん…………………………………朝かぁ………体が…………………スゲー痛い!野宿に慣れてないからだろうな」


街の外で初めての夜を野宿して、同じく街の外で初めての朝を迎えたサミュエル。

凝り固まった筋肉を伸ばしながら収納していた昨日と同じ干し肉と水筒を取り出す。


(この干し肉あんまり旨くないな………………………。何かこれでもかって程、塩辛いんだよな)


旨い干し肉は無いものか、と考えながら食事をしていると背後から声を掛けられ声のした方向に顔を向ける。


「サミュエルさん、おはようございます」

「おはようございます、ミレーユさん」


サミュエルに朝の挨拶をしてきたのはミレーユだ。

そしてそんなミレーユに笑みを浮かべながら挨拶を返すサミュエル。


「早い目覚めですねミレーユさん」

「サミュエルさんも早い目覚めですね………………」

「あの……………………」

「どうかしましたか?」


早い目覚めですねとお互いに声を掛け合ったあとミレーユが言葉を続けようとするが何か言いにくい事でもあるのか躊躇した様子の為サミュエルが心配した表情で何かありましたか、とミレーユに訪ねる。


「良ければ…………ミレーユ、とお呼び下さい。それと………………敬語で話さず、何時も話してらっしゃる喋り方でお話し下さい」


そう言われるも、サミュエルは初対面の人には何時も敬語で話す為少し困惑ぎみに返答する。


「分かりました…………じゃなくて分かった………。これでいいかな?ミレーユさ………じゃなかった…………ミレーユ」

「ふふふ、はい!」


サミュエルにぎこちなくではあるが、ミレーユと呼ばれ満面の笑みで返事を返し頷くミレーユ。

そしてそんなミレーユの返答を聞き今度はサミュエルがミレーユに頼み事をする。


「それじゃあ…………ミレーユも敬語を止めて俺の名前もサミュエルと呼んでくれ」

「それは駄目ですよ。命の恩人なんですから、それに私は普段からこの口調ですし」


サミュエルがそちらも敬語等を止めてくれと頼むがミレーユはまるでいたずらっ子のような笑みで駄目です、と返す。

そんな会話をしているとマリアンヌとマリンも起きたようで馬車から出てきてサミュエルに挨拶してくる。


「あっ………もう起きてらっしたんですか?おはようございます、サミュエルさん」

「おはよう………………………です」


マリンはまだ眠いのだろう。目を閉じたまま器用に馬車を降りてマリアンヌに続き挨拶をし、コックリ、コックリ、と船をこいでいる。


「ははは、おはようございます。まだマリンちゃんは夢の中に居たいようですけど」


そんなマリンを見てサミュエルは笑いながら挨拶を返す。

そしてそういえば三人は何処に向かって旅をしていたのかと思いマリアンヌに質問する。


「そういえば皆さんは何処に行かれる途中なんですか?」

「私たちは、自分達が暮らすフォークスの街に帰る途中なんです」

「そうなんですか!それなら俺の目的地もフォークスの街なんでご一緒してもよろしいですか?」


目的地がフォークスの街だと聞き驚き、一人で旅をするのは寂しいしつまらないのでこれ幸いと、一緒についていってもいいか、と聞くサミュエル。

そしてサミュエルの言葉をを聞き満面の笑みで答えるミレーユ。


「もちろん!こちらからお願いしたい位ですよ!」


そして一人の男と三人の女性は馬車に乗り、マリアンヌが馬の手綱を握りブリッツとフォークスの中間地点の村に向け、出発した。

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