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後処理

「出でよ!ゴーレム!!」


サミュエルが魔力を込め、明確なイメージを持って、呪文を唱えると関節のみが鋼製で出来た武器を持たず素手のゴーレムが八体、青銅製の鎧を装備し、同じく青銅製の武器、ロングソードを持ったゴーレムが二体、合わせて十体のゴーレムが出現した。

因みに何故全て青銅製の鎧と武器を装備したゴーレムでは無いかというと、一日ずっと歩きっぱなしで体力が減少していた為、全てのゴーレムに青銅製の物を装備させる事が出来なかったのである。


「ゴーレムよ!視界に入る全ての敵を排除せよ!!」


サミュエルが憤怒の表情でゴーレムに指示を出す。すると青銅製のゴーレム二体は女性三人を地面に押し倒していた盗賊五人に向かって行き、残りの岩で出来たゴーレム八体は少し離れた位置で女性の馬車から奪ってきたと思われる物の周囲にいた残りの盗賊五人に走り出した。

そしてサミュエルも女性達を救い出すために女性三人を押さえ付けている盗賊に向かい青銅製のゴーレム二体が飛び出したのと同時にサミュエル自身も走り出した。


「何!?」

「何だ!?このガキはっ!?」

「魔法使いだ!」

「ゴーレムだ!気をつけろ!!」

「糞っ!ゴーレムの癖にやけに素早いぞ!」


サミュエルの叫びを聞いた直後は「何だ只の糞ガキかっ」等と言っていたり、馬鹿にした表情をしていたが、ゴーレムが出現してから盗賊達の表情、態度は一変しゴーレムが走り出すと、今度はパニックを起こし出した。

そして一方サミュエルは一番近くにいて、女性の両手を押さえ付けていた男の背中に剣を突き刺し先程よりも更に激しく声を荒げ、叫ぶ。


「貴様らのような奴等は生きる価値など無い!!全員、血を流しながら後悔して死ぬがいい!!」


地球は、日本で生活していた時はこんな場面に遭遇する事など無かった。即ち今までに経験したことがない。その為これ程までにサミュエルは我を忘れ激情しているのだろう。

そしてサミュエルが声を荒げ叫んでいる中、岩で出来たゴーレム八体が盗賊達に襲い掛かっていた。

岩ゴーレムに殴られ、心臓がある場所、左の胸が陥没する者、顔を殴られ、頭蓋骨が割れる者、首を裸締めで絞められ折られる者そういった風にして荷物の周囲にいた盗賊達五人は死んだ。

そして女性達を押さえ付けていた盗賊の残り四人は何とか、といった感じで青銅製ゴーレム二体と斬り合っていたが、そこに岩ゴーレム八体が加わり自分達の状況が芳しくないと判断したのだろう

ゴーレム達に背中を向け逃げ出した。

そんな盗賊達を見てサミュエルはゴーレム達に指示を出す。


「ゴーレムよ!逃げ出す者達を追う必要はない!それよりもこの周囲に魔物や肉食動物、あるいは先の盗賊達が来ないか注意していてくれ!!」


サミュエルの指示を聞き周囲に均等に広がり始めるゴーレム達。

そしてそんなゴーレム達を確認してから女性達三人に先程までの憤怒の表情ではなく、声でもなく、優しげな表情と声音で声を掛けるサミュエル。


「大丈夫ですか?………………………大怪我などしていませんか?」


サミュエルに声を掛けられるが、まだおちつける筈も無く一人は泣き、一人はしきりに周囲に視線を向け、そして残りの一人は目を瞑り震えていた。

そんな三人を見て、サミュエルはまた優しく声を掛ける。


「もう大丈夫です。あなた達に危害を加える者はいません……………………。さぁ、これを飲んで心をおちつけて下さい」


これを飲んで下さい、と空間に収納していた革で出来た水筒を差し出す。

そして水筒に入っていた水を三人が飲み、少しおちついたのだろう、涙を浮かべ感謝の言葉を述べる三人。


「危ないところをありがとうございました………………。正直………………もう…だめだと……………もう死ぬんだと………思いました。本当にありがとうございます」

「うぅ………ありが……とう……ありがとう」

「感謝いたします。ありがとう……ありがとうございました」


そんな三人を見てサミュエルは何故冒険者の護衛も着けず旅をしているのかと疑問に思い、三人に訪ねる。

何故サミュエルが疑問に思ったのかというと、岩の壁や木で出来た柵に囲まれた街や村を出ると肉食動物や魔物、それに今回のように盗賊に襲われる事もあるからである。


「何故冒険者も着けず旅を?」

「実は…………冒険者に護衛を頼んでいたのですが………先程逃げた四人と貴方が直接倒した一人が……私達が雇った護衛だったんです」


女性に説明され護衛を雇っていた事、その雇った護衛が盗賊の仲間である事を聞き眉をしかめるサミュエル。


「あの…………貴方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか」

「あぁ…すいませんまだ名乗っていませんでしたね。初めまして、サミュエルと言います」


サミュエルが名を名乗ると女性達三人も、名乗り出す。


「私はこの妹達の長女で名前をマリアンヌと申します」

「私は次女のミレーユです」

「三女のマリンです」


長女のマリアンヌは優しそうな表情で、身長はサミュエルと同じ170㎝程の少し細身の女性だ。

次女のミレーユは形のいい眉をし、少し切れ長の目をした、身長160㎝程の強気な印象を受ける女性で、男性を虜にするような体つきをしてる女性。

そして最後の三女の女性は、女性と言うより女の子といった方が正しいと言えるような年頃の、幼い顔つきをした女性だ。

因みに三人とも、地球では見ない銀髪である。


「取り敢えず、馬車に戻りましょう。三人は馬車の中に待機していて下さい。青銅製のゴーレム二体を護衛に着けて置きますので」


此処にいては血の臭いに寄ってくる魔物等がくる可能性があり危険だし、何より死体があるので目に毒だからと、三人に馬車に移動するように言うサミュエル。

そしてサミュエルの言葉を聞きサミュエルはどうするのかと質問するミレーユ。


「サミュエルさんはどうするのですか?もう日が沈みますし一緒に馬車に移動した方がいいのでは?」

「死体を処理しないと、不死者になるかもしれませんしね。それに荷物などはミレーユさん達のですよね?それならば荷物を馬車に移動させないといけないですから」


そんなサミュエルの返答に対してならば私達も手伝いますと答える三人。


「私達の荷物ですし、それに助けて頂いたのに何もせず休めません」

「そうです、それに私は冒険者で死体にもなれていますし大丈夫です」

「です」


マリアンヌ、ミレーユ、マリンの順番で答える姉妹達。

そしてサミュエルはミレーユが冒険者である事に少し驚きながら答える。


「ありがたいですが、流石にこんな後じゃ体も心も疲れているでしょうし………マリンちゃんはまだ幼いので馬車で休ませるのにいくらゴーレムを護衛に付けると言っても一人には出来ませんから」

「でしたらマリアンヌ姉さんがマリンと一緒に馬車に行っていてちょうだい。私がサミュエルさんのお手伝いをしますから」


有無を言わせぬ様子で姉のマリアンヌに言うミレーユ。


「わかったわ。それじゃあサミュエルさんスミマセン、お願いします」

「ます」

「はい、分かりました。青銅製ゴーレムよ!二人の護衛につけ!」


サミュエルの指示でマリアンヌ、マリンの前と後ろ、前後を挟み移動するゴーレムと二人の女性達。

そんな二人と二体をを見送り死体の始末にかかるサミュエルとミレーユ。

そして死体を一ヶ所に集め、サミュエルが火を起こそうと枯れ葉等を集め火打ち石を収納した空間から取り出し火を起こそうとするとミレーユがそれを止める。


「待ってください」

「どうかしましたか?」

「私が火を点けます」


サミュエルの疑問にミレーユが答えた後、ミレーユの体に魔力が満ちるのを感じサミュエルが驚きで目を見開く。

そしてミレーユが人差し指と中指を死体を集めた場所に向け呪文を唱えた。


「ファイアーボール」


ミレーユが呪文を口にすると指先から50㎝程の火球が出現し、死体の一つに着弾し、次々に燃え上がった。

それを見届けるとサミュエルは岩のゴーレム達に荷物を馬車に運ぶよう命じた。

そしてミレーユと共に馬車に向かうのだった。


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