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改善

ヴェロニカにポーションを買ってきてと頼まれた翌日、サミュエルはこの世界に転生して初めての友人と呼べるものが出来た事を嬉しそうに思い出していた。

その友人とはナイジェルマリーの事である。外見は街を歩けばすれ違う、ほぼ全ての女性が振り向くだろうと思われるほど目鼻立ちが整っていて、艶のありキラキラと太陽の光を浴び輝く鮮やかな金髪をしている。

そして体格は、身長185㎝ほどあり、かなり鍛えてあるのだろう、世界陸上で観られる短距離走の選手のような体つきをしていた。


簡潔にいえば名をナイジェルマリー、十七才、イケメン、である。


尤もサミュエルもまだ七才と若いが、母親に似たのだろう整った顔立ちをしている。因みに髪は黒く、このグレートアースと呼ばれる世界では、まず見られないといったほど珍しい髪色をしている。本人は、黒色の髪が珍しいとは知らないが…………。その髪色の事でこの先、冒険者になった後、幾度かトラブルに巻き込まれる事になるのだがそれも知るよしもないサミュエルだった。


(ギルドから金一封が出なくて良かったな。でていたらナイジェルマリーからこの短刀、ナイフを貰えなかっただろうし)


サミュエルはナイジェルマリーから助太刀に対してと、友情の証にと二つの意味を込められた、魔物や動物の剥ぎ取りに使う為の鋼鉄製のナイフを貰っていたのだ。


(いいナイフだな………。っと、いつまでも眺めてても仕方無いな。早朝の訓練をしないと)


ジャックが待っているだろうから早く行かないと、と考えながら庭に出る。


「おっ、来たな。もう準備はいいのか?」

「うん、バッチリだよ!」

「それじゃあ今日の訓練を始めるぞ、今日は………これだ!」


サミュエルがもう準備万端だと言うとジャックは槍をサミュエルにジャジャ~ンと効果音を口で出しながら手渡した。


「今日は槍術か」

(う~ん昔、武道館で薙刀を見て面白そうだったからリフレッシュがわりによくやらせてもらったな。でも槍と薙刀じゃあ、似て非なるものだからな、難しそうだな)

「そう、今日は槍術だ!初日だから、剣術や弓術と同じように今回も自分で、槍術ってこんな感じかなぁ~って考えながら振ってみろ。次回の訓練から悪い所等は修正していくからな!」

「分かった!」


元気よくジャックの言葉に返事を返し槍を振るサミュエル。


(こんな感じだったかな…………そうそうこんな感じだったな!それからこう振る!………そして…………)


剣術の時と同様、感覚を思い出しながら槍を振っていくサミュエル。


「ほぉう……。成る程ね」

(どうやら………。剣術ほどじゃないが槍術も隠れて修練していたようだな)


成る程、と呟きながら納得した様子で頷くジャック。剣術の時程は驚きはしなかったが、やはり多少の驚きはあったのか、あるいは息子の成長が嬉しいのか目を見開きながら笑顔を作るという奇妙な表情を器用に作り、見守っている。


「ふんっ!ふんっ!……そりゃ!!」


正面に突きを放ち、すぐさま槍を引き戻したと思うと今度は、右から左に横薙ぎに槍を振るった。そしてそのまま力に逆らわずクルリと回りながら柄の部分で突きを放つ。

そんな風に訓練を始めて一時間程が経ち、サミュエルの体力が尽きてきたのを見計らいジャックが終了の言葉を掛けてくる。


「よぉ~し、良いぞ。今日はこのへんで終わろう!」

「すぅ~…はぁ~……………。了解!」


深呼吸をし、呼吸を整えると笑顔で返事をするサミュエル。

そして二人は朝食を摂りに家の中に入っていく。


「はい、召し上がれ。朝は沢山食べなきゃだめよ!」

「そうだぞ、どんどん食えよっ!」


二人に言われ、サミュエルは心の中で″いただきます″と言いうと、机まで食べるのではと思わしき勢いで食べ進む。

やがて、先程と同じようにまた心の中でご馳走さまと呟くと、部屋にもどり体力を回復させるため

ベッドに横になり一時間程、眠りにつくサミュエル。

そして目が覚めた後は昨日実戦とまでは言えないが、敵に武器を抜く間も与えず捕らえた、その時の事を分析していた。


(あの時ゴーレムは、まぁまぁの動きを見せていたが……………。あれ以上素早く動かせられる気がしない…………。短距離走の選手並みのスピードで走らせたりしたいんだよなぁ)


確かに動きは悪くないのだが、どこか改善する場所がないか等と、色々考えるのだが良い案が出ないまま、時間が過ぎていき、もうすぐ昼になるという時間になり「これだ!これしかない!ていうか気付けよ俺!!」と叫び庭に向かって走り出したサミュエル。

そして庭に出ると、改善案を目を閉じ、頭のなかで明確にイメージして形にしていく。


「良し!これならかなりイケるはず!」


満面の笑みでガッツポーズをして、これはイケると声を張り上げているサミュエル。

そして声高らかに叫ぶ。


「出でよ!ゴーレム!」


そうサミュエルが声を発すると一体の青銅製の鎧を装備したゴーレムが刃引きされた同じく青銅製のロングソードを持った状態で出現した。


「ゴーレムよ!丸太に向かって全力で打ち込みをせよ!」


命令を出すと、ゴーレムは言われた通り打ち込みを開始した。

左諸手上段の構えから右斜め上から左斜め下に向かって素早く剣を振り、次にはすぐさま剣を引き戻し突きを放つゴーレム。そして左にまるで人間の様に軽やかにステップし、逆胴打ちを放つ。

その様子は明らかに昨日のゴーレムとは見た目は変わらないが動きは格段に違っていた。


「良いぞ!やっぱり動きがかなり改善された!」


余程嬉しいのだろうニコニコ顔でガッツポーズを再びとるサミュエル。

サミュエルがゴーレムのどこをどう改善したかというと、関節部分を鋼製に変更したのだ。

昨日までは、中身は全て岩で生成され外は青銅製の鎧を装備したものだったが、一部分、つまりは関節部分のみ岩から鋼製に変更したのだ。

その為関節部分の動きがスムーズになり動きが素早く、滑らかになったのだ。


「だがもう少し改善できそうな気がするな………。関節は強度を一番必要とする、その為炭素を1%以上……………………ケイ素は0.30%以下にして………多すぎすると曲げに対する強度が弱くなるし………そしてりんや硫黄等も少しずつ配分を考えて試していけばより良い動作が出来るはず!!」


笑顔でブツブツと独り言を呟きながら何度も繰り返し頷くサミュエル。

因みになんで全て鋼製にせず、一部分だけ鋼製なのかと言うと、ただ単純に全て岩で作っていた時 と比べて魔力消費が激しい為である。


「早速次のゴーレムを生成し、試したいけど……。いかんせん体力がな………。精神力はかなり上がったけど、まぁ体力強化はここ数日開始したばかりだししょうがないか。休憩を挟んだらもう少し改善してみよう」


そんな風にまた一日が過ぎていく。そしてこの日からサミュエルのゴーレム魔法は劇的に成長していくことになる。勿論のこと、土属性、ゴーレム魔法だけでなく、聖属性、風属性、更には錬金術

、次元魔法、そして剣術等とあらゆる技術を吸収し肉体的にも精神的にも高い技術を会得していく。










そしてあっという間に時は流れ………。

いよいよサミュエルが冒険者登録する日がやってくる。


子供時代はあっさり終わる感じでいこうと思います。要望があれば番外編みたいな感じでもう少し書くかもしれません。

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