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第四話

 美紅に話しを流したことを散々文句を言われ気がめいってきたところで話題が急に変わった。


「それにしても…………」


「?」


 美紅が、詩音が首からかけている物をじっと見る。視線を追うと、いつもは服の中に入れているサファイヤの付いたペンダントが出ていることに気付いた。慌ててそれを服の中に滑り込ませると、


「それ、どうして隠しているの? 魔法石(マギアラピス)でしょ?」


 ごもっともな疑問を投げかけられた。


 魔法石(マギアラピス)は魔法を補助する石のことで、理由は解明されていないが宝石が魔法石になることが多い。


 人工ではなく、自然にできた石なのだ。


 魔法石(マギアラピス))には様々な種類があり、魔導師の魔力を大きく上げるものやお守り程度の力しかないもの。逆に巨大な魔力を抑えるものなどがある。


 魔法石(マギアラピス)の能力を見分けるには特殊な訓練が必要で、訓練を受けていない人が売るのは詐欺行為となり厳しく罰せられる。


 訓練はB級以上の魔導師しか受けることができないし、それに訓練の内容自体がハードなため見分けられる人はほとんどいないのが現実だ(そのかわり給料は魔道士の中でもトップレベルだ)。


 詩音のそれは魔力をC級に抑えるためのもので、たとえ魔法石(マギアラピス)の能力を見ただけで見分ける者がごく僅かだとしても、警戒するに越したことはないので服の中に隠しているのだ。


 なぜ美紅の質問がごもっともなのかというと、魔法石(マギアラピス)は魔法に必要なもの、つまり授業に必要なものなので学校への持ち込みは許可されているからだ。魔力を必要以上に上げたり他人に危害を加えるものに関してはもちろんダメだが、詩音がそんな物騒な物は持っていないだろうと考えているのだろう。


「サファイヤって結構高価なものだからさ。盗られてもいやだし。それにおおっぴらに魔力上げてます感を出すのもなんかね」


 嘘を吐くのは心が痛むが決まりだからしょうがない。


「ふーん」


 返事の雰囲気からして納得してもらえてない気がするが、まあいいだろう。さっきも言ったが魔法石(マギアラピス)の能力が分かるのは限られた人だけだから大丈夫だ。


 と、そこで消灯のチャイムが鳴った。


 消灯時間は11時だが、魔法学校は宿題が多いため消灯時間に寝る人は少ない。


 でも、


「じゃあ、私もう眠いから寝るね」


 私は不満そうな顔をしている美紅に挨拶を言いベッドに潜り込んだ。


 ベッドにはカーテンが取り付けられている(天蓋ではなく天井にカーテンがついている形だ)ので、それを引いて中の様子が美紅から分からないようにすると瞬間移動(テレポーテーション)でとある場所に移動する。


 そしてついたのは学校の中の何もない壁の前。


 私がその壁に手をつき魔力を流し込むと体が壁に吸い込まれていく。しばらくすると視界が開け、生徒会室にたどり着いた。


 そう。ここはどこにあるのか知られていない生徒会室だ。


 魔力は一人ひとり違い、指紋や声認証などより正確なので、最近のセキュリティーにはこれがよく使われているのだ。


 私が部屋に入るともう他のメンバーは集まり終わっていた。


「遅かったな。何かあったのか?」


 頬杖をつきながら私に話しかけてきたのは、高校二年 生徒会女子副会長 A級魔導師である灰村梓だ。


「同室の子と少し話しをしてたんです。生徒会のことだったので無下にするわけにもいかず、遅くなってしましました」


 私は腰をしっかりと折りメンバーに謝罪をする。言い訳を並べても遅れたことは変わらない。


 集合時間は11時で私が来たのが五分過ぎ。普段ならともかく緊急時の今は有り得ない遅刻である。


「まあまあ、梓もそんな責めんといてあげえや。詩音ちゃんも事情あってのことやろ?」


 と、私に頭を上げるように促したのは、高校三年 生徒会男子副会長 A級魔導師の飛鳥井要である。


 実家は大阪だが魔法を学ぶために東京まで出てきているのだ。要先輩と知り合った当時は、そのしゃべり方に違和感があったがもう大丈夫だ。


「要先輩、こいつを甘やかしちゃダメですよ。ただでさえ落ちこぼれなのに」


 そしてこのムカつくやつが椎名司。


 私と同じ高校一年生で役職は会計。ちなみに私の役職は書記だ。


 それぞれ一応役職は決まってはいるものの、やっていることは全員同じだから名前だけのものになっている。


「そういうあんたこそ、その意地の悪い性格を直したらどう?」


「なんだと!」


 パンパン


 司が椅子から立ち上がり、言い合いが悪化しそうになったとき手を叩く音がした。


 ぎくりと音源の方を向くと我らが生徒会長――架院湊斗が手を叩いたのだと分かる。架院先輩は学校で唯一のS級魔導師で本来の力は先生たちを軽く凌駕する。もちろん生徒会の中でも一目置かれている存在なのだ。


「君たち、喧嘩をするのは勝手だけど今はやめてもらえるかな。緊急事態なのは知ってるよね」


 架院の顔は笑顔だが目が笑ってない。


 これは真面目に怖い。一言でも発したら殺されそうなレベルの殺気だ。


 司も私と同じことを感じたらしく、机に両手をつき立ち上がろうとした変な体制のまま動けずにいる。


 あれでは色々なところが辛いだろうに、とは言わずにただ黙る。


 私と司が同時に黙ったのを見て架院が声をあげる。


「じゃあそろそろ行こうか」


 それを合図に全員が立ち上がり、架院を先頭に出口へと向かう。


 私は姿勢を正しくしつつ今日の昼のことを頭に思い浮かべていた。

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