第二話
「生徒会執行部、また呼ばれていたわね」
「そうみたいだね」
その日の夜部屋でゴロゴロしていると、部屋をシェアーしている友人、神崎美紅が話しかけてきた。
広大な面積を誇る青嵐学園の寮は、一つの学年につき一つの建物を持っている。
一階が共同ロビーで、二階から三階が女子の部屋、四階から五階が男子の部屋という造りはどの建物も同じ。
エレベーターは一応あるのだが――節約のためか訓練のためかは分からないが――電気は通っておらず、動かすには魔力を注がなければならない。
そのためエレベーターを使っているのは一部の優秀な生徒のみである。
青嵐学園は全寮制ではないものの、大抵の人が寮に入っている。優秀だから全国からたくさんの人が集まってくるのだ。
詩音は特殊な理由で寮に入っているが、そのことを知っているのはごく一部の人間だけである。
「それにしても生徒会、憧れるわね~」
美紅が座っている椅子をクルクルと回転させる。よく目が回らないでいられるものだ。
美紅は高校に入ってからの友人でC級魔道士。得意分野は“技術魔法”である。
魔法はその能力によって名前が違う。
“技術魔法”は名前の通り機械を魔力によって動かす魔法である。
使い方を覚えて機械を使うわけではないので、普通では難しい操作も簡単にこなすことが出来る便利な魔法だ。
今も美紅は魔法でパソコンを使いながら授業で出た課題をやっている。
「そう?」
「生徒会って言ったらA級魔法使い以上じゃなきゃ入ることが出来ない超エリート集団じゃない! 普通に考えて憧れない人なんかいないわよ」
「でもC級まで使えれば日常生活には何の支障もないじゃん。卒業資格ももらえるし就職には困らないし」
「そうは言っても絶対に便利でしょ?」
「まあそうだろうけど……」
「あんたはランクに興味が無さすぎよ。目標がC級だなんて――――ちょっとくらい憧れなさい」
「だって……」
私もうA級だし、という言葉は理性で飲み込む。。
生徒会執行部は一言で言えばエリートで構成された秘密組織である。
生徒会はエリート集団だから生徒が暴走したとしても止められる力を持っている(そのための生徒会だが)。
しかしその反面、その力を悪用しようとする輩が沢山いる。
だから普段役員は魔力を制御してC級魔法使いとして生活しているのである。
詩音も例外ではなくC級魔道士として生活しているので、美紅はもちろんクラスメイトも先生も詩音が執行部のメンバーだとは知らない。
生徒手帳にA級とは書いてあるが、誰にも見られることが無いように保管しているのでばれることはないだろう。
また、生徒会を悪用しようとするのが主に先生だということから、誰が役員なのかを知っているのが校長と役員だけだというのも特徴の一つだ。
『能ある鷹は爪を隠す』これが生徒会のモットーだ。
でもいくら秘密組織だとは言っても、今回のように放送で収集がかかったり、不良を討滅していたりするので生徒会執行部の存在は学園の誰もが知っている。
正確な役員を知らないとは言っても噂はいくらでも立つ。
そうこんな風に。
「私は有吉先輩じゃないかと思うのよね~。生徒手帳見せてくれないし、収集のときはいつもいないし、なんてったってB級魔法使いだし」
目を輝かせて美紅が詩音に迫る。宿題はやらなくていいのか、とは言わない。詩音もやっていないからだ。
執行部は収集のときは分身魔法[A級]を使ってあたかもそこにいるように見せているし、大体にしてB級の時点でアウトだ。一般の人はそんなことは知らないが。
とまあ心の中で突っ込みながら、
「そうかもしれないねー」
「あっ! 棒読み!」