3節「高校初の迷子」
兄貴こと皐月と通学路を歩きながら何気ない雑談をしていた・・・
だけど兄貴はなぜかその時、本当に時々だけど不安な顔をしていた
大きな門前まで来ると兄貴こと皐月は
「んじゃ、俺はここらで」となぜか足早に私とは逆方向へと走ってしまった。
とりあえず「わかった~」と兄貴の背中を見送った後、指定された教室へと向かう事にした。
1-Bが私の教室クラスで、1年なのになぜか教室は2階にある。
理由としては1階には図書館や事務室、職員室や食堂などが占領していて、
生徒の教室は2階かららしい・・・・
そこまでわかっているから私も兄貴の背を見送った筈なのに・・・・・・・・・
---兄貴と別れて10分後
「階段・・・どこ」
この学校、響藍学院----------どこからともなく階段が多い!!!
一応二個ぐらい階段とか試しに上がったけど、1-Bの教室らしき教室が一向に見つからない。
ちなみに私のいった階段先には資料館などといった教室とは場違いな場所である。
ってかなんでこんなに無駄に階段あるわけ?
確かにマンモス学校的な噂はあったけど・・・
「これは無いでしょ・・・・ってか階段」
もうそれしか出ない。
中央広場掲示板に展示されている地図をみても、校内が複雑すぎて意味がわからない。
そう・・・つまり、私 黒沢如月は現在「迷子」になっている。
初っ端から迷子になるってわかっていたら私だって早めにでたよ!!!
なんだよ、ちくしょー・・・・
兄貴にばれたら絶対今夜の笑い話にされる。
それだけは避けたい私はとりあえず色んなところに足を運ぶ事にした。
まず西側から制覇(?)しようと考えた私なので、図書館のある所の階段をまず上がってみた。
っが・・・そこは教室ではあるが、文芸系の教室・・・
つまり美術室や音楽室などがある所だ。
1つタメ息をついてまた下りた時に、ふと携帯を開ければデジタル時計は
9時20分にちょうど切り変わっていた。
「げっ!?あと10分で教室に行かなきゃだのに!!!」
プログラムでは9時30分には自分のクラスにいって、
9時45分にそのクラスと誘導員と一緒に体育館に移動して朝会・・・
つまり30分までには教室につかなければいけないのだ。
つかない=遅刻=初日から遅刻
「うわあぁ・・・・嫌だよ、そんなの」
泣きそうだよ。いや、実際に泣かないけどさ!
そんな気持ちってところだよ・・・うん。
ある意味兄貴がいなくてよかったよーな・・・・よくないよーな。
いやいたら私はこの場で恥ずかしがって座りこんでいるであろう。
「そこで何しているんですか?」
私が迷子で嘆いていたら、後ろから声をかけられた。
凛とした声に振り向けばそこにいた人物に目を見開く。
なぜ見開いたか?
そりゃー漫画にでも出てきそうな美男子ってやつが目の前にいたからで。
肩幅的には・・・男性だよね?女性っぽい顔だなぁ・・
青い瞳だけどもしかして外人さん?でもジャパニーズがペラペラだし
「その様子だと新入生かな?」
そんなふうに私がじろじろ見ているにも関わらず、無表情でそう聞いてきた。
無愛想にも見えるが、見知らぬ私に声をかけてくれた時点でこの人は親切な人だ。
というか私がじろじろ見ていたにも関わらず親切にするなんて、
なんて心の広い人なんだこの人は!!!
じーんと感動しながら頷けばその人は考え込むように顎に手をそえる
「どこのクラスかわかるでしょうか?」
「えっと・・・1-Bです」
「それなら職員室の近くにある階段から上がればすぐ右にあるよ」
少し金がかった茶髪のその人は、職員室があるであろう場所に指を指してくれた。
そこは私の探していた方向とはまったく逆の東側だった。
「あ、ありがとうございます!!!」
慌てて頭を下げながらお礼をする。
美男子はどういたしましてと一礼下げれば、すぐに私が向かうとこと逆方向へと歩く。
結局表情を1つも変えてくれなかったなー・・・あの人。
ちょっと漫画の様な展開を望んでいた私がいた事に嫌気がさしながらも、
職員室のある場所へと足を運んだ。
あ、名前聞くの忘れちゃった。------まぁいっかな
職員室の近くまでいくと、さっきの人の言う通り、
職員室のすぐ近くに上に上がる階段が1つだけあった。
時間も時間な為、早めに階段を駆け上がり2階の右を曲がれば、
上の方に1-Bと書かれた看板らしきものがぶらさがっていた
「あった!!!」
あー・・・あの人には本当感謝だよ・・・
でもよくどの階段がどこに通じているってわかったなー・・
3年生かな?もしそうなら2年間ここにいるわけだしわかるよね。
感動の波に襲われると同時に前から誰かに抱きつかれた
「如月ーー!!!!」
「うわ!!?」
いきなりの衝撃もあったため少しよろめきながらも、
抱きついた本人を受け止めながら私より背が低い為見下ろす。
髪はストレートな黒髪で童顔で唯一、私と一緒の中学からきた親友
「みーちゃん?」
私でもアホっぽいと思う音色をもつ声音で問えば、
抱きついていた本人は私を見上げながら満面の笑みを浮かべた。
「覚えていてくれた!?ずっと待っていたんだよ~♪」
この子の名前は庵崎 美恵。
小学校から出会って中学も一緒、そして唯一高校も一緒になった私の親友。
私と兄貴は愛称「みーちゃん」と呼んでいる。
みーちゃんもそれでいいと言ってくれているので・・・
「もしかして初っ端から遅刻かと・・・」
なんで予想的中しそうになっているのよ、この子・・・
「実はそうなんだよ~」なんて言える訳もなく、アハハと・・・
ん?ちょっとまって・・・
「みーちゃん・・・ここ(1-B)にいるってことは、
みーちゃんも一緒のクラス!?」
みーちゃんはえへへーと言いながら愛想良い笑顔で答えれば、
先程までの感動の波が一気に失せてしまい喜びの波が上がった
「本当に!!!良かった~・・・」
そのまま抱きついたままのみーちゃんを抱きなおす
「それより如月。あたしらそろそろ入室しとかないと出席扱いされないかもよ?」
みーちゃんは自分の腕時計の時計をコツコツと指で当てながら、
それに注目してと言わんばかりに主張。
ふとみーちゃんの腕時計を見れば9時28分。
「あと2分じゃん!!!さっさと言ってよー」
「だって如月がなんか変な風に感動していたから、つい~」
わざとらしくテヘっとうざく言えば、
私はみーちゃんの腕を掴み教室へと入室していった。
でも本当に良かった―・・・
みーちゃんが一緒だし、とりあえずこの一年は乗り越えられるかな?
教室にはすでにグループになっている子もいるけど、
やっぱり大半が緊張してカタコトだったり席に座りっぱなしがいた。
みーちゃんがいるおかげで私は騒がしい方の一員だけど。
しかし私達が騒ぐ暇もなくベルが鳴れば誘導員となる教員が教室に入ってきた。
「皆さん座ってください。これから移動の説明をします」
そういえば先程まで騒がしかった人達は各々の席へ戻った。
42人クラスで、私の出席番号は32番。
みーちゃんは24番で、意外に遠かった為別れがちょっとさびしかったけど、
私は自分の席へと座った。