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2節「初めての通学路」

いつもの朝はやっぱり喧嘩から始まった。いつものように兄貴を起こしに行けばセクハラに合ったりして散々な目にあった(筆記.黒沢如月)



「あたた……あんの雌ゴリラ、まじで手加減しなかったよ」


頭をさすりながら皐月は私の前を歩いてる。


卯月に見つかってすぐに皐月はおたまでフルぼっこをされ、

挙げ句の果てには空手技なども目の当たりにした


「兄貴の自業自得だよ~。

あれが家族じゃなかったら犯罪だよ」


新しい鞄を持ち直しながら軽く笑う。

だってそうでしょ?いきなり抱き枕にされるなんて――


あれはセクハラだ、悪く言えば痴漢


「だーかーらー!寝ぼけてたんだって!

寝息をたてるなっていう程に無理がある」


「寝息とあれは大分違うよ」


「たしかに――寝息するたびに

姉貴にあんなことされたら体が保たないわ」


わざとらしく肩もみをしつつ苦笑いをする


「というかあんなことをしなければいいんだよ」


「・・・・努力します」


皐月である兄貴の敬語は大体その反対の意味を示す。

つまりこの場合は努力をしない。

そんな自分の癖すら知らない兄貴だから思わず「ぶっ」と吹いた。


「な!?きったねーな!!!

仮にも性別上女なんだから汚い事すんじゃねー!!」


「男女平等社会でーすw」


アハハと軽く笑いながらステップで兄貴と距離を置いた・・・

はずなのに先程まで後ろに歩いていた皐月は私の隣を歩き始め私の視線と絡んだ。

その表情は先程までの調子とは違った


「なぁキサ。学校、楽しみか?」


え、いきなり?つかいきなりすぎない??

楽しげな口調とは裏腹に、言っている言葉は不安そうだ。

一応私の兄貴だからなのか・・・心配してんのかな?


「もちろん!楽しみすぎてあまり寝れなかったんだし」


「お前ガキじゃあるまいし、一々そんなふうにするなよ(汗)」


不安そうな表情が消え呆れ顔になるがそんなの構わない。


兄貴が安心した笑みで言っていたから。

本人の前では言えないけれど私はとても兄貴こと皐月に憧れている。

それは今からわかるかもしれないが、周りに好かれて、頭も良く運動神経も良い。

そんな兄貴に憧れて、一歩でも近づこうとこの高校を選んだのだ


周りからは案の定ブラコン言われたけど(笑)


「初めてのものは人間なんでもかんでもドキドキすんの」


「俺はしなかったけど」


「んじゃ兄貴は人外」


「おま・・・その発想はないだろ」


他愛無い話をし、通学路を通るが私達しかここは通ってない。

他の事かはもう行ってしまったんだろう・・・


「別にいいじゃん」


素気ない一言を言い終わって私はとあることに気付く。

皐月を起こしたのは事実だが、朝っぱらは入学生のクラス割りで

在校生の登校は10時からとなっている。


もちろん在校生の皐月は暇なはず


「兄貴は朝から何しときわけ?」


「まぁ色々と準備があるわけよ、色々」


「ふーん?」


そのときの私は知る由も無かった。

この学校のとある制度に皐月と登校しながら話すのは小さい頃から変わらない。

ただ変わったのは通学路だけ――あとは身長差とかかな


兄貴は男性だから成長期でもあるけど、絶対に身長は170いっているに違いない。

そのぐらい背中が大きく見える。

末っ子というのもあるけど家族の中で一番小さいし一番凡人。


背中を見る度になぜか自分のちっぽけさを感じる。

だから――そんな自分を高校で変えたい。

皐月や卯月に負けないほど輝きたい


「おい、キサ?大丈夫か、さっからぼーっとして。

余計に馬鹿にみえっぞ?」


「馬鹿言うな!!!馬鹿を!!!

本当に兄貴はそんな事しか言えないんだからさ・・・・」


内心とは裏腹な言葉しか出ないこの口が憎いが、

そのぐらいが多分会話としては成り立っている。

私も兄貴もしんみりとした話は嫌いだし、何より娯楽とか冗談が好きだ。

卯月姉は冗談が少し苦手らしく、私達の会話を呆れながら聞いている。


「卯月姉がいたらまたやられるよ」


ゲラゲラ笑っていた兄貴だが、天敵(?)である卯月姉の名前を出せば、

嘘のように下品な笑い声が静まった。

わぁー、卯月姉効果恐るべし


「・・・・おまえ、姉貴に言うなよ?」


「ケーキで考えてあげる♪」


ウフフとわざとらしく言えば、兄貴は「はぁ!?」と眉間に皺を寄せた。

うんうん、私にだってわかっているよ。

むちゃくちゃでたらめを言っていることなんだって


「卯月姉の愛の技とケーキ、どっちが安いと思うの???」


「あいつのは愛の「あ」すら入ってないって・・・・

わーったよ、いつか買うよ。いつか」


「いつか!!!???」


いつかっていつよ!!!


私はまさかの発言に思わず立ち止り兄貴の背中を睨む。

振り返るものの兄貴は歩きながら嫌な笑みを浮かべる


「ほら、さっさと学校に行かないと?

お前、入学式早々から問題児になるつもりかァ??」


その言葉でやっとで我に帰れば、小走りで兄貴に並んで歩く。


「本当に意地悪なんだからさー・・・」


頬を膨らませわざと拗ねたフリをすれば、兄貴が笑いながら

「すまない、すまない」と謝る気のない声音で言う。

初めて通う通学路のはずなのに、最初よりも足が軽くなった気がする





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