1節「いつもの朝」
私の名前は黒沢如月。
今年から、かの有名で人気な響藍学院に通うことになったのだ!!
もちろん・・・有名で人気だから倍率も相当あって、
兄貴である黒沢皐月にスパルタな勉強をしてもらった。
結果、見事に合格!!
とはいえ・・・学院負けな凡人学生である
「卯月姉~おっはよ~♪
ねぇねぇ、響藍の制服どうかな?似合う?似合う??」
トントンと軽い音を立てて、まだ皺も少ない新品な暗い黄色のブレザーに
丈は膝上より上の普通の学校よりも短い紺のヒラスカート。
ブレザーの下は薄い黄色のワイシャツで、
黒チェック入りの黄色いリボンの真ん中には
響藍学院の紋章である紋章が緑のバッチに刻まれている。
「おぉ、いかにも響藍の生徒だねぇ~キサ」
リビングまで下りればカウンター越しから卯月姉が顔をのぞかせながら、
わざとらしくヒューと口笛を吹く。
この人は黒沢家の長女、黒沢卯月。
一応21歳なんだけど、とても綺麗な顔立ちをしている。
髪はボブな明るい茶髪でいかにも「お姉さん」な人。
私達、兄妹は旧暦名から取った名前。
父さんや母さんが好きっというのもあるけど誕生月とは全然関係ない
兄貴と卯月姉は私を「キサ」と呼ぶ
「もう・・・響藍の学生だっつーの!!
って、あれ?兄貴は?」
ふとリビングの寂しさに勘づく。
それは黒沢家で一番騒がしい長男の皐月がいないからだ
「あんの馬鹿まだ寝ているの!?
本当に馬鹿だね、いんや元から馬鹿だな。
キサ、悪いけど皐月の馬鹿を起こしに行ってくれ。
姉ちゃんは今料理をして手が離せないから」
「はーい」
なぜか卯月姉はあんまり兄貴の事を好いていない。
まぁ問題ばっか起こして卯月姉が、しょっちゅう学校に御呼ばれされてるからなのかも。
なぜ母さんや父さんかじゃないかというと、
父さんはとある会社の社長で企画者でもあるから
あまり家に帰っては来ない。
母さんは元から体が弱かったけど、最近体調が悪化してばっかで、
家事は卯月姉が引き受けるって事で今は入院中。
なので卯月姉が今はお母さん的ポジション
髪に指を通しながら下りてきた階段をまた上がり、
私と卯月姉の部屋とは反対方面の廊下を駆ける。
そこが兄貴である皐月の部屋がある場所だからだ
コンコン
「兄貴ー!!」
ノックしながら呼びかけるが中から応答はない。
・・・まだ寝ているの??
息を吸って深く吐くとまたノックをする
コンコン
「あーにーきーー!!寝てんのぉ???」
この様子からしたらきっとそうだろうけど念の為確認(?)と取ってみる。
だけどやっぱり反応はない。
携帯を開いて時間を見るが、これ以上寝ていたら
確実に兄貴は遅刻するよな~・・・
「兄貴ぃー入るからね~」
ゆっくりドアノブを回せばあっさり空いた。
そこにはやっぱり電気のついていない暗い部屋が視覚に広がり、
カーテンからすこしもれる光が兄貴のくるまる布団を照らす
「ほら兄貴起きろ!!起きろ!!!」
少々手荒いだろうけど肩を思いっきり揺らすが反応がない。
どんだけ爆睡してんのよぉ!!!
むっとしたからカーテンをひっつかみ全部開け光を入れると、
兄貴にまたがって重量をかけながらゆさることにした
「起きろぉお!!!!」
「-----んー・・・」
さすがの兄貴もこれには唸りを上げ、
私の重量に痛みを感じたのかその重い目蓋を少し上げた。
少し見せた瞳は綺麗なアイスブルーの瞳。
母さんがハーフで多分その遺伝
「ほら兄貴、起きてよ。遅刻するよ?」
兄貴は目を腕でこするだけで起きる気配が無かったので、
とりあえず一声かけるが変わった様子はない。
返事を待つ為そのままの体勢で圧力をかけながら、
「起きろ」という念を込め睨む
「あと5分」
「日本語通じてる???起きろぉおおおおおお!!!!!!」
「------------うるっさいな」
「うぬわ!?」
いきなり兄貴は私の腕を思いっきりひっぱると、
私の視界は一瞬にして兄貴の胸板だけになった・・・
=さっきの衝撃でこんなことになってしまったのだ
ってかちょ!!??
「うわああああああ!!!!!
兄貴の馬鹿ああああ!!!新しい制服に早速皺ついたじゃんか!!!」
「はぁ?そんなのいつかなるだろ。
それが早いか遅いかだけだし」
私を抱き寄せた状態でタメ息をつきながら更に私を腕の力で閉じ込める。
タメ息つきたいの私なんだけど、ってか私は抱き枕じゃない
「兄貴、本当にどいて。まじで」
私まで遅刻するわ
「嫌」
「嫌じゃねぇよ」
「キサから甘えてきたじゃん」
「あのさ、あれのどこが甘えてたの?
10文字以内で答えろや、ゴラ」
「全部」
駄目だこいつ・・・・
完全に寝ぼけているし、今にももう寝そうだよ。
せめてどうにかしようと兄貴の胸板を押し返そうとするが、
男の力に勝てるわけもなくすぐに疲れた
チラッと兄貴の部屋の時計を見れば8時30分前
あぁ・・・本格的にやばい。
私がもう一度怒鳴ろうとした時、その衝撃な出来事が起きた
チュッ
リップ音
・・・・・・・・・リップ音?
目の前は胸板じゃなく兄貴の寝顔・・・・・
え、は?うっそ・・・・私のファーストキス・・・
「へ・・・・・
へんたいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!」
バタン!
「どうしたのキサ!?って・・・・・
こんの馬鹿皐月ぃいいいいいい!!!!!!!
お前は私の可愛い妹のキサになにしとんじゃあああああああ!!!!!」
「っさいなぁ・・・ただのおはようのキ
「キス・・・キスぅううううう!!!!!??????
お前一回表出て面かせや!!!!!!」
卯月姉は何やら御乱心と化し、おたまを持っていない方の手で
兄貴の首を猫のようにひっつかみベットから引きずり落とした
「は?ちょ、え。はぁ!!??」
ドダンッ
案の定 兄貴は顔面から落下。
驚いた拍子で力が抜けた為私はその隙をつき脱出
「っていただ、いだい!!!こんの馬鹿姉貴!!!!!
何してんだてめぇふっざけんなよお!!!???」
「馬鹿はてめええええだろ!!!!
いい加減起こされないでも起きろや!!!!」
あぁ・・・また始まってしまった。
兄貴VS卯月姉
なんでこの二人はこうも口が悪いのかなぁ・・・
「この綺麗な顔に傷でもついてみろ!!!
学校からはDV被害だと思われたらどうすんだ!?」
「なーにがDV被害だ、このシスコン。
つか自分で綺麗言うな、変態ナルシスト」
この一言でまた兄貴がぶちぎれて取っ組み合いとなり、
私が仲裁に入るけどしばらくやまず・・・・
喧嘩が終わったのは8時50分だった。
これが黒沢家の1日の始まりである。