Ep1 出会い
この世界は願い事に溢れている。
人間は神や仏などの存在に願い縋り付く、人間とはそういう生き物だ。
願いというものは、
己の不安や欲求を、
自分が傷つきたくない、楽をしたい、
そんな浅はかな思考から、
誰かに押し付けそれを解決してほしいというワガママの事だ…
もちろん願いの全てがそういうものだとは思わない…
でも本当に叶えたい願いなんてものは自分でしか叶えられないものだ。
キーンコーンカーンコーン
学校の6限終了のチャイムで目が覚める。緩んだ口元から垂れたヨダレを拭く、先生はそのままホームルームを始め生徒達は先生の話を横目に帰る準備をしている。
俺はボーッと窓の外を眺めるがただ相も変わらず雲が流れていくだけだ
(さて俺も片付けるか…)
ヨダレのシミで滲んだ書きかけのノートを見て閉じた。今日もつまらない授業だった。頑張って真面目に授業を受けたところで成績は変わらない、そんな事を考えながらホームルームが終わるのを待っている
するといつもの3人がこちらへ近づいてきた。そしてその内の1人が耳元でコソッと囁いた。
「ねぇ、荒井君〜いつもの場所で待ってるからねぇw」
ソイツらはそう言ってケラケラ笑いながら席へと戻っていった。俺は教卓の方へ目を向けたが、先生はなにも見ていないかのようにホームルームを終わり教室を去っていった、
(事なかれ主義のクズが…)
俺はいつもの場所こと…体育倉庫の裏に向かうと、3人のチンピラが俺が来るのを待っていた。いつも通りポケットから財布を取り出しソイツらに差し出す。
「4000円かよ、しけてるなぁ〜wまあ、いいやお楽しみはこれからだしな」
そういうとまずは腹に拳が1発飛んでくる。
「カハッ…」
背後からもう1人が脇腹に会心の一撃ッ!!
我慢できずお昼に食べたパンの残骸が胃液と混じり口からだす
「おえっ…」
「うわっ!きったねw」
耐えきれず俺はその場に倒れ込んだ
そこに追い討ちをかけるように3人揃って楽しそうに足で顔面以外を蹴っている。
まあ、見ての通りイジメだ、
こんなシーン見ててもつまらないだろうから少し昔語りをしよう。
俺のスペックは小太りでアニオタだが顔はそこまで悪くないと自負して生きてきた。そんなある日、俺にも好きな子ができた。
まるでアニメのキャラクターがそのまま出てきたみたいだった。背が小さくて笑顔がとっても素敵でその子は誰にでも優しかった。
これは俺にもチャンスが有るのか!そう勝手に勘違いし、俺はその子と仲良くなりたいその一心で必死に気を引こうと話しかけ続けた。
時は流れて数ヶ月、日直でその子と2人きりになれるタイミングが訪れた。
今日こそ告白する!そう決意し言葉を発した…
「○○さん、実は話したい事があるんだけどちょっといいかな」
そういうと彼女は察した感じで
「何?」
と答えた。
これはいけるのでは!?そう思うと
心臓のドクドクが止まらない。
今から告白するんだ…落ち着け…
まずは深呼吸だ
吸って吐いてー…
よし行くぞ!
「じ、実は、初めて見た時から好きでした。付き合ってください」
そう言い切り頭を下げる、ようやく言えた!長い事思い続けたものを言葉にできた!
(神様どうかお願いします…)
あとは彼女の返事を待つだけだった。
……
恐る恐る顔を上げると
彼女はバツの悪そうな表情をしていた
まぁ分かっていたことだったが…
「荒井君の事は悪いとは思わないけど、 付き合えないごめんね」
勘違い野郎の恋は儚く散っていったのだ。
でもそのまま終われなかった。初めての好きな人を諦めきれなかった…
本当に今でも思う、そこで終わりにしておけば良かったんだ…
「なんで…なんでダメなの、、教えてよ…」
動揺し未練がましく何度も聞く…
「ねぇ…なんで…?」
そう言い詰め寄ってしまった…
「いや…!」
そう言い離れようとすると彼女は教壇から滑り転ける、
危ない!そう思い助けようとした、
神様はなんとも意地悪だ。
助けようとした俺自身もそのまま覆いかぶさるように転けてしまったのだ。
大きな音を聞きつけ先生が急いで入ってきた。目の前では涙目になった女の子に、そこに覆いかぶさるように居るデブ、誰がどう見ても襲いかかってるようにしか見えなかった…
あとは想像の通り、必死に相手の親御さんに弁明した、そして父と共に土下座をした。父は泣いて謝っていた…
結果、停学処分だけで済み、そのまま家に帰った。
帰ってからは父に殴られ、姉には罵倒された、母は、母は…とても言葉には言いきれない顔をし涙を流していた。
停学処分が終わり戻ってきてからは、皆から無視された。彼女がきっとあの出来事を広めたのだろう。でも確かに俺が悪かった、だから謝ろう。謝ってやり直そう、そう思い彼女に近づいた。
「あの…この前の…ごめ」
伝えなきゃいけないことを言い切る前に彼女が話を遮って言い放った
「もう関わらないでクズ…」
そうか…謝るにはもう遅かったのだ…
…この状況を作った彼女に、こう思わずにはいられなかった
(お前も同じクズだろ…)
彼女とはそれ以来、目も合わせていない、、
そしてアイツらのイジメが始まった…
最初は軽い嫌がらせ程度だった。初めは抵抗もしたし、先生にも報告した。
しかし、してもいない強姦魔としてのレッテルが、教師達を動かそうとはしなかった。誰も味方してくれない。
動かない教師達を見てアイツらはイジメの段階を次第にエスカレートしていった。
俺には耐えることしか出来なかった…
結局の所、俺が悪かったんだ…
あの時辞めておけばという後悔が溢れ、止まらなかった、、
回想はこんなものだ。
まだコイツらは満足してないらしい。
「レイプ魔デブッ!ハハッ」
楽しそうに笑いながら蹴ってくる
「もっとバカにしてやるよ!」
そう言って頭を蹴った、
その一撃が悪かったのだろう、
俺の身体は痙攣しだした。デブがピクついてるの見て最初は笑っていたが事態の深刻さにようやく気づいたのか
「おい!やばいって早く行くぞ」
そう言って逃げてった。
(…バカはお前らだ、ざまぁみろコレで俺が死んだらお前らも殺人犯だ!)
自分の身を代償に相手が自滅してったんだ、気分は案外悪くない…
身体を動かそうとしたがやはり動かない、はぁ…ようやく解放されるイジメからもきっと人生からも…そう思えば本当に…
惨めな人生だなぁ…
学校中でレイプ魔扱いを受け、家族からも軽蔑され、腫れ物扱い…
俺にも非があったが、なんで俺ばっかりこんな目に合わなきゃいけないんだろなぁ…
なぁ、神様…俺がアンタに何かしたか…?これも全部アンタのせいなのか… なんで…なんでなんだよ…
クソ…涙が出てきた…泣くなよ俺…
涙と一緒に胸に溜まっていたものが出てきた…
「なんで俺ばっかこんな目に合わなきゃいけないんだよ!俺が何したって言うんだよぉ!皆消えろよッ!死ねッ死ねッ!俺が何したって言うんだよッ!なんでこんな世界に生まれてきたんだよ…何処か誰も俺を知らない所に行きだい…幸せになりだい…」
殆ど動かない身体でそう願った…
そして何の意味もないただただ虚しい願いをしながら俺の意識は薄れていった。
身体が痛い…まだ生きていたようだ。
もういいよ…
神様お願いだ楽に死なせてくれ。
そう願い砂に顔を埋める。
ん?
おかしい…砂が暖かい、いや熱いっ!
目を覚まし飛び起きる
なんだよここ…
目の前に広がる光景に理解が追いつかなかった…
一面が砂の海に太陽は容赦なく照り付ける、それに見た事ない生物が空を飛び、砂の海を泳いでいる…
さっきまで体育倉庫裏でリンチに合って死にかけてたんだぞ…なんでこんな場所にいるんだよ、、夢だよなきっと…
そんな事を考えていると
砂が風に舞い目に入る…
痛い…この痛み紛れもなく現実だ
とりあえず立って周りを散策しようと現状を把握するために立ち上がると、いつもと目線の高さが合わない、おかしいと気づいた俺はつま先を見る、いつもなら、たっぷりと蓄えられた脂肪でつま先が見えないはずが見えるではないか…
それに背は縮み少し肌の色が焼け…服が汚れている、紛れもない別の人間の姿だ、しかも俺が中学生くらいの身長だしおそらく歳もそのくらいだろう。
(おいおいマジかよ…)
そうだこれは…
異世界転生だ…!
ふぅ…だが俺は慌てないぜ…転生なんて願ったり叶ったりだ、受け入れてこのまま生きていこう。
とりあえず現状を把握しながら歩こう、持ち物は何も無い、周りに人が居ない…
つまりこの身体は一人旅で力尽きたか、もしくは捨てられた、身体から元の持ち主の声とか聞こえないという事は死んだ身体に魂が入った的な…?
そう思い脈を測るが正常だ、問題は無さそうだ。
それにしても暑い、さすが砂漠だ。
喉が渇いてきた…とりあえず水の飲める場所を探すとしよう。
そう思い歩いていると後ろから爆発音が聞こえた。
急いで振り返ってみるとそこには、
砂埃が舞って見えにくいが、砕けた岩からウサギのような生き物が逃げていく、その奥に見えるのは、甲殻類と虫が混ざった生き物だ…巨大なボクシンググローブのような爪で岩を砕き、ギザギザの顎でウサギを噛み切り捕食している、ウサギから流れる血が砂に染み込んでいく…
「おいおい、それは無しだろ…」
奴はこちらの存在に気がついたようで羽を広げ飛ぶ準備をしている。
今すぐ逃げなければ死ぬ、そう思い必死に走る、慣れない身体で転けながらも走った。
(転生していきなりデカイ虫に喰い殺されるなんていやだ…死にたくない!!)
虫は重くデカイ体を4枚の羽を高速に羽ばたかして追いかけてくる
(いやだ…まだこれからだろ…神様!いや誰でもいい助けて…!)
そう願い走っていると前に人影が見えた!
こちらに気づいたのか前にいた人はこちらに振り返った!
ローブで見えないが腰には剣、両腕に金の腕輪をし、長い杖を携えていた。
まずい巻き込んでしまった逃げろと叫ぼうとした時、ニヤッと笑い彼はこう言った!
「さぁ!願い事を言うといい!このジーニアスが叶えて見せよう」
やっばい…変な奴巻き込んでしまったか
いや、もう仕方ない
この状況で願い事?
1つしか無いだろ!
俺は枯れた声で必死に叫んだ
「たすけてッ!」
今世紀最大の魂の叫びだっただろう
それを聞き届けた彼は待ってましたと言わんばかりの嬉しそうに笑顔見せ杖と手を前に出し詠唱を唱え始めた!
「大地と風の魔精達よ …今我が願いを聞き届け、その身を削り尖らせ、 目の前の障害を貫け… アースブラストッ」
後ろを振り向くと空中にいた生物達が集まり、辺りが白く輝きだしたと思えば、大きく風が吹き彼のローブのフードがめくれる。少し焼けた肌をし、耳に青い石のピアスした青年が見えた。
空中に居たその生物達は無数の鋭い石の姿へと変え、俺の後ろにいた巨大な虫を貫いた。
石で串刺しになった虫は羽をピクピク動かしながら茶色の血を流し絶命していた。
凄い!漫画やアニメで見たことのあるアレと同じだ…魔法使いだ…
俺は安堵し腰が抜けた。転生して早々こんな所で死ぬところだったのだから無理もないだろう。
「やぁ!大丈夫だったかい?まさかバルクレスに襲われるなんてね」
…バルクレスきっとあの虫の事だろう
「あぁ!そうだ自己紹介をしよう!
僕はジーニアス・ビン・ラシードだ!気楽にジーニーとでも呼んでくれ!それで君は?」
「あ"ら"ぃ " じんです」
声が掠れて上手く発音できなかった
「ん?あーアラジンか!いい名前だ」
上手く発音できなかったせいで間違えられてるが、まあいい…せっかくの異世界だ、前の名前を捨てよう。
これからはアラジンと名乗ろう!うんいい名前だ!
「さて、アラジン助けたからには礼が必要だと思うんだけど…いいかい?」
そう言われて、ハッとした
失念していた!助けてもらったのに礼をするのを忘れていたなんて恩知らずなんだ…!
「あ"りがとうございます。」
よし何とか聞こえるように言えたぞ!
枯れた喉にしちゃ完璧だったな!
「あー…ごめん...そっちの礼じゃなくてあっちの礼だよ対価の方だよ…」
「え"?」
そうか…命を救ってもらったんだ…口だけの礼など貰っても嬉しくなどないか、でも困った先程も確認したが何も持っていない、、
すると俺の困った様子と転んだ手の傷を見て察したのか自分の腰に付けていた水を差し出し、かがみながらジーニーはこう提案してきた。
「なぁアラジン!君さえ良ければ対価として僕の弟子にならないか?見たところ君も1人で何も無い様子だし」
思ってもみない言葉に反応が遅れた。
「え?」
彼は続けてこう言った
「アラジン!魔術師の素質があるかどうか判断するものはなんだと思う? 正解は〜…目だよ、目! 魔法はそこら辺に浮いてる魔精に魔術という指示をし使うんだ!」
魔精…この薄い色のケサランパサランみたいな奴らの事だろうか…
「さっきも今も魔精達が見えていたんだろ?君には魔術師ことマギの素質があるんだ!君さえ良ければ僕の傍で魔術を学ばないか?」
(俺に本当にできるのだろうか…)
しかしそんな事考えていても無駄だ。
この世界で生き残るには1つしか選択肢は無いだろう。
俺は受け取った水を飲み、何の躊躇いもなく返事を返した。
「これからよろしくお願いします!先生」
彼は満面の笑みで俺の手を掴みこう言った
「これは契約だ!僕は君を教え守り導く!そして君は対価として僕の願いを共に見届けてくれ!」
俺はコクリと頷いた…
これは俺と先生の旅…
先生の願いを叶える物語…
最後まで読んでいただき感謝します!




