表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

佐々木さんちの風鈴さんは思う

作者: 橘 薫羽
掲載日:2025/12/18


 ある夏の夕暮れどき。


(おっ、だいぶ暗くなってきたな。そろそろか?)

 風鈴が思うのとほぼ同時に窓が開く。


「中に入れるねー」

 佐々木(ささき)に柔らかな声で告げられ、風鈴は家の中へ。


「今日もお疲れ」

 風鈴をスタンドにかけつつ言う佐々木は、二十歳前後と言っても通りそうな三十歳前後の男性だ。家主アンド風鈴の持ち主である。



 朝起きて、晴れ予報なら風鈴を外へ。

 夜が近づき、暗くなってきたら家の中へ。

 突然の雨に、あわてて家の中に入れることもあるし、外出中などで対応できず、あとで水滴を優しく拭き取ることも。


 風鈴を朝出して夜入れる、佐々木の行動。


 もともとは、夜に風鈴の音が響くことを厭う人の意見を、佐々木が目にしたことから始まったように思う。


 その意見は、佐々木と佐々木の家の風鈴に対してのものではなかったし、そもそも、この家の周辺は、あまり人気ひとけもないのだが。


「気に入っている風鈴の、風鈴の音、できればいい感情で聞いてほしいなー」

 佐々木はそう言っていたし、その年から佐々木は夏の間、日々せっせと風鈴を出し入れしている。



 気に入っている、と言ってもらえて光栄である。

 天気を気にして、雨にあわてて、その佐々木の振る舞いには、風鈴は自分がたまに洗濯物であるかのような気持ちになったりもするが、心を向けてもらえていることに、嬉しさを感じている。


『今日もありがとな!』

 スタンドにかけられるあたりで、風鈴は毎度礼を言うが、佐々木の反応は毎度ない。


 けれど、想いを込めて風鈴を丁寧に鳴らすと。

「どういたしまして」

 佐々木は毎回そう返事をする。



「――さてと。もうちょっと今日の分の仕事進めたら夕はんだー」

 伸びをしたあとで佐々木が言う。


 風鈴が、頑張れ! と風鈴を元気に鳴らすと、佐々木は「応援ありがとー」と言って微笑んだ。



 佐々木は言葉で、風鈴は音で。伝え合う日々も、楽しくすごしている。

(けど、いつか――)


(言葉を交わして、いろいろやりとりできたら、それも楽しそうだよな!)

 けっこう話が弾むんじゃないかと思うのだ。




お読みくださり、ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ