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norn.  作者: 羽衣あかり
“粘土人形と少女”
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95.扉攻略

 アトラスが声をかければ、気づいたノルンは少し気まづそうに視線を下に逸らした。


「…すみません。アル」


 初めてみる魔法につい没頭してしまいました、とノルンが謝る。

 けれどアトラスはもちろん気分を害した様子などなく、気にすんな、と元気よく笑った。


「それで、この扉は開きそうなのか?」


 再び首を傾げるアトラスに、ノルンは頷いた。


「はい。恐らくこの扉が開くことがあるとすれば正しい魔法をかけられた時に開くものだと思われます」


 ノルンはそう言うと扉につけた手のひらに魔力を込める。そしてノルンが知っている魔法を唱える。


開け(オーピニオン)


 この魔法は一般的に扉や箱などを開ける際に使われる魔法だ。

 しかし扉の魔法陣が消えることは無い。

 ノルンはアトラスに視線を送る。

 それを見たアトラスは納得したように石の扉を見上げた。


「なるほどな」


 アトラスは一連の流れで理解したように頷いた。

 それにしても何故そこまで厳重にこの神殿を守っているのか。

 神を崇める場所だとされているためか。祭事に用いられていた場所だからだろうか。

 それともなにか別にこの神殿には秘密があるのだろうか。ノルンは思わず厳重に閉じられた扉を見てそんなことを考えてしまう。


「それで、この扉を守る魔法を解くことは出来そうか?」


 無言だったノルンにアトラスがどこか挑発的にノルンに話しかける。悪戯っぽく方目を細めて口角を上げるアトラスはノルンなら出来るんだろ?と言わんばかりの顔だ。ノルンはほんの少し眉毛をピクリとさせてため息でも着きそうな顔だったが、再び扉に目を向けた。


「……………」


 ノルンは無言のまま扉を見続ける。


(…この扉の魔法…何処かで…)


 見たことがある気がする。

 そう思ったノルンは無言のままじっと扉を凝視する。

 どこで見たことがあるのだろうか。

 いや、しかし見たことがあると言っても実際に見たわけでは無いだろう。

 実際にこうして目の前でこのような古き美しい魔法を見たものならノルンが忘れるはずはない。

 では、どこで。

 本で見たのか。はたまた人伝に聞いたことがあるのか。

 そう考えていた時に、ノルンは何かを思い出したかのように小さく口を開く。


(…ぁ)


 思い出した。

 どこでこの魔法について知ったのか。

 何故この魔法を見たことがあると感じたのか。

 少し目を見開くノルンにアトラスが話しかける。


「ん?ノルン、大丈夫か?」


 アトラスの言葉にノルンは頷く。

 ノルンの頭の中には以前バルトの家で、夜中に手にした誰かの手記のような本が浮かび上がっていた。瘴気に効果的な魔法薬について書かれていたあの本だ。

 バルトの家を出てからノルンはあの本が気になって、野営をしながら夜になると度々あの古い手記を読み進めてきた。そこで見つけたのだ。

 この美しい魔法を。


「…はい。平気です。それよりアル。この魔法以前見たことがあります」


 ノルンの言葉にアトラスの耳がぴくと動く。


「何処でだ?」


 アトラスに答えるより先にノルンは手に持っていたトランクを開けてがさごそと何かを探すように漁り、アトラスの前に一冊の本を差し出した。

 見るからに古く題名も何も無い本を。


「この本で見たのか?」

「はい」


 ノルンは本を開くとぱらぱらとページをめくる。

 アトラスは魔法についてはあまり詳しくなく、専門外とでも言うようにノルンがぱらぱらと本をめくるのを見守る。


 しばらくノルンが本を捲りながら注視していると、あと少しで本が終わってしまうという所の残り少しの所で“扉封じの魔法”という魔法を見つけた。

 はっとしてノルンは本と実際の魔法を見比べる。

 どうやら魔法自体はこれで間違いが無さそうだ。


「お!これだな!」


 ノルンが開いたページをアトラスも覗き込んで、本と目の前の魔法の陣を見比べると頷いた。


「それで、開ける方法も書いてありそうか?」


 ノルンは本を開いたまま沈黙する。

 古いため少し字がかすれているところもあるが、注意深くそのページを読み込む。

 けれどどうやら解呪の方法、魔法については書かれていなさそうだ。

 そして、開いているページを1ページめくる。

 そこでノルンは手を止める。

 そこには“扉封じの魔法”と対になるようにして、“扉を解錠させる魔法”というページがあったのだった。



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