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norn.  作者: 羽衣あかり
“粘土人形と少女”
94/193

93.神殿へ出発

 アトラスが着いてきてくれるならば頼もしい。


「ノルン〜どこかに行くの?」


 話し合いをしているとポーラがとてとてと走ってきてノルンを上目遣いで見上げる。

 大きな黒目は相変わらずきらきらと輝いている。

 ノルンは頷く。


「はい。東の神殿に行ってみようかと思います」

「神殿…?」


 ポーラはぴんとこなかったようで可愛らしく頭を傾げた。


「んじゃ、さっさと行くか〜」


 そんなポーラの横で伸びをしながらマイペースにアトラスが言う。思わずノルンはそんなアトラスを止めた。アトラスの足元ではポーラがよく分かっていないままお出かけの気配を感じて目をきらきらさせている。

 ポーラには申し訳ないが、連れていくことは出来ない。


「アル、待ってください。全員でここを離れることは出来ません。誰かバルト様の治療に残って貰いたいのです」

「あ〜。たしかにそれもそうだな」


 玄関に向かおうとしていたアトラスはノルンの言葉を聞いて納得したのか身体の向きをノルンに向き直す。


「本来ならノルンが残った方がいいだろうが、星蒼花ってやつも、ノルンが見た方が良さそうだ」


 本来であれば治療を受けおうノルンがそばにいた方がいいだろうが、今のバルトの状態を考えれば、薬さえ置いていって、症状が酷くなった時に服用してもらえばそれほど緊急事態に陥ることは無いだろう。

 ともなれば植物に詳しいノルンが星蒼花を探しに行った方が良い。


「じゃあ僕は残ろうかな」


 アトラスがノルンに着いていくとなれば必然的に残るはアオイだ。後に残るはポーラとブランだがブランは勿論ノルンに当たり前のようについて行きそうだし、ポーラは正直今回はバルトの家に残ってもらった方が安全そうだ。


 アオイの言葉にノルンとアトラスは頷く。


「すみません。アオイさん」

「ううん、僕は全然。ノルンちゃん達こそ気をつけて行ってきてね」


 ノルンが軽く頭を下げればアオイは緩く首を振る。

 そして冒険冒険、とわくわくしているポーラには悪いがアオイの手伝いをして欲しいと頼むことで申し訳ないがバルトの家に残ってもらうこととなった。


 行くのならば早い方がいいということで、すぐにでも出発することとなった。

 出発の前にノルンはアオイにバルトに飲ませる薬を預ける。

 ノルンが説明をすると真面目なアオイは薬の使い方、効用をしっかりとメモしていた。


「何があれば知らせてください。ホークスはこちらに残していきます」

「うん。わかった。ありがとうノルンちゃん」


 一通り必要な説明を終えるとノルンはベッドで横になるバルトの元へ向かい、東の神殿へ向かうと伝えた。

 バルトは話し声が聞こえていたのか分かっていたように頷いた。


「よし!じゃあ行くか〜」

「はい」

「気をつけて行ってきてね」

「ノルン〜気をつけてね〜」


 バルトに報告をしたあとで、玄関でアオイとポーラに見送られる。

 アオイとポーラの言葉に頷くとノルンはアトラス、ブランとともに背を向けて歩き始めた。


(…東の神殿…通称星紡ぎの神殿)


 森の中を歩きながらバルトが言っていた言葉を思い出す。

 耳にした事の無い神殿だった。

 森の中を歩きながら持っていた手元の地図に視線を落とす。

 地図はノルンの家にあったものでかなり古い紙切れだが、そこにはハルジアの大陸全土が描かれて村、街の名前などが記載されていた。


 今いるバルトの家はもちろん書かれていないが、道中通ってきた大きな森が描かれていたので何となく今の位置は確認することが出来た。

 そこから東を探る。

 すると森をぬけ、草原を抜けたあたりに神殿という言葉が見つかった。


「お〜思ったより離れてるな」

「はい」


 ノルンの手元をいつの間にか覗き込んでいたアトラスに頷く。

 アトラスの言う通り少し離れた場所にあるが、もしかしたらバルトを助ける手立てがあるかもしれないのだ。


「アル。行きましょう」

「おう!」


 そう思うと無意識のうちにノルンの歩く速度は早くなって行ったのだった。

 星紡ぎの神殿に向かう道中では魔物に遭遇することもあったが、ノルンとアトラス、ブランは難なく魔物を討伐して順調に神殿へと歩みを進めた。

 不思議だったのはだんだんと神殿が近づくにつれて、魔物が減って行ったことだ。

 そのため、最後の方は特に戦闘をすることもなく神殿に近づくことが出来た。


 途中から石畳みの道が現れるようになった。

 石畳みの両脇には石作りのモニュメントが置かれていたりと神殿が近くなっていることをノルン達に感じさせた。


 気づけばバルトの家を出てから数日がすぎていた。

 そして、太陽が燦々と降り注ぐその日やっとノルン達はバルトが言っていたであろう神殿までたどり着くことが出来たのだった。


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