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norn.  作者: 羽衣あかり
“シロクマと少女”
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78.行方不明

 その後、小さな村で宿屋はあるか不安だったが、村人に聞けば快く小さな宿屋へ案内してもらった。


「ここだよ」

「ありがとうございます」


 案内をしてくれた優しい中年の女性にノルンが礼を言うと女性はいいえ、と言って笑った。


「ふふ。それにしてもまぁ。可愛らしいお嬢さんに、可愛らしいおともの子ね」


 女性はノルンを見た後にノルンの足にしがみつくポーラに目を向けて微笑んだ。

 ポーラは視線を向けられて、驚いたようにノルンの足に顔を隠す。


「あらあら。ごめんなさいね。それじゃあ私はこれで」

「ありがとうございました」


 女性が去っていったあとで、宿屋に入る。

 宿屋と言ってもここは部屋がいくつもあって、部屋を貸してくれるタイプではなく、この小さいながらも一軒家をまるまる貸してくれるようだった。


 部屋には暖炉とタンス、ベットだけの簡素な部屋だったが、ノルンたちが泊まるには十分な広さであった。


「わぁ〜!ふかふかだぁ〜」


 ノルンの足に隠れていたポーラは部屋に入るなり、興味津々で部屋を駆け回り、ベットによじ登ってはその柔らかさに感動していた。


「フォーリオを出てから初めての宿屋だね」

「だなぁ。久しぶりにゆっくり出来そうだ」


 アトラスは腕を上げてぐぐっと伸びをする。

 アオイとアトラスを横目にノルンはフードからブランを出してあげる。

 ブランは部屋に降り立つなり、元の大きさに戻って背を伸ばしている。

 それを見たノルンはブランの頭を撫でたあと、またマントに腕を通した。

 そして、トランクを掴む。

 そんなノルンにアオイは視線を移す。


「ノルンちゃん。どこかに行くの?」

「はい。村に滞在している内に少し買い出しをしてこようかと」

「それなら僕も行くよ」


 ノルンの言葉を聞いてアオイがノルンに微笑む。

 しかしノルンはそんなアオイに伺うように少し首を傾げた。


「ですがアオイさんも疲れてはいないですか。買い出しはすぐ終わるので休んでいて頂いて大丈夫です」


 一見冷たく聞こえるが、それはノルンなりの気遣いだった。それをアオイも理解しているように、アオイは柔らかく微笑みながら首を横に振る。


「ううん。ありがとうノルンちゃん。でも僕も少しこの村を見て回りたいから」

「…そうですか。ありがとうございます。アオイさん」

「うん」


 そう言われてしまってはノルンも断ることはできず。

 素直にアオイの申し出を受け入れた。

 アオイはノルンの返事に嬉しそうに微笑んだ。

 玄関の前にたったノルンはベッドで寛ぐアトラスに視線を送った。


「アル。アオイさんと少し買い出しに行ってきます」

「おう!頼んだ!」


 そうして、アトラスの返事を聞いたあと、ノルンとアオイは買い出しへ向かったのだった。

 小さな村ではあるものの万事屋はあって助かった。

 そこでノルンは小麦、白米、野菜類、乳製品を購入した。


「大分潤ったね」


 買い物袋を抱えるアオイにノルンは頷く。


「それにしても、ポーラとはここでお別れかぁ。少しの間だったけど寂しいね」

「…はい、そうですね」


 歩きながらアオイの言葉にノルンはもう一度頷いた。

 しかしそこでふと、アオイがそういえば、と口にする。


「ポーラって僕らと別れたあと、ご飯どうするんだろう」

「………」


 アオイの疑問にノルンは何も返せなかった。

 とりあえず木の実や果物を食べるかもしれない、と思いもしたがこの間のように毒のある木の実や果物、キノコなどを食べてしまうのでは、と想像してしまって、ノルンは1人その考えを打ち消すように小さく頭を左右に振ったのだった。


 そして、宿屋まで帰ってくると、絨毯の上でブランに寄りかかり、寝息をたてるアトラスがいた。

 その姿にアオイは微笑みをこぼす。

 ノルンもブランケットを持ってきてアトラスにそっと掛けてあげた。

 野宿ばかりで疲れが溜まっていたのだろう。

 そこでノルンは何かを探すように部屋を見渡した。

 そして、一面を見渡したあとで少し困惑したようにぽつりと零した。


「…アオイさん。ポーラがいません」

「えっ」


 ノルンの言葉にアオイは目を丸くする。

 2人は急いでベットの下、毛布の中、トイレ、風呂を確認するが、どこにもポーラの姿は見当たらない。


 そんな2人の気配を感じたのか、まだ寝ぼけ眼のアトラスがゆっくりとブランから身体を起こした。


「んぁ…。おう、帰ってたのか。…ってどうした?」


 アトラスは思わず奇妙な行動をしている2人に投げかける。


「それが、ポーラがいないんだ」

「何…?」


 困惑したアオイがそう答えればアトラスは怪訝な顔をしてすぐに起き上がった。

 そして、アトラスも加えて宿屋を見回るも、そう広くない宿屋はすぐに探し終えてしまった。

 しかし、ポーラは見つからない。

 ノルンはいつもの真顔ながらその雰囲気は少し強ばり、ポーラを心配していることが窺えた。


「…どこに行ったんでしょうか」


 ノルンの呟きに、アトラスは耳を申し訳なさそうに垂れさせた。


「わりぃ。俺が居眠りしちまったから」


 しかしすぐにアトラスの言葉にノルンとアオイは首を振った。


「とりあえず、村の人に聞いてみようか」

「だな」


 そうして急遽ポーラの捜索は開始されたのだった。

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