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norn.  作者: 羽衣あかり
“旅立ち”編
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61.決着

 ソフィアがノルンを守るようにして前に立ち、マレウスを冷静に見つめる。

 するとそこで、ソフィアはマレウスを見て何かに気づいたように、少し目を見開いた。


「…マレウスと言ったか?貴様、もしやここ最近魔物を凶暴化させていた元凶か?」


 その言葉にノルン、アオイ、アトラスは初めて耳にする出来事に思わず目を見開く。


「…何故そう思った。女騎士さんよぉ…?」


 マレウスの口調は相変わらず挑発的だ。


「いや、凶暴化した魔物に襲われた者が騎士団内にもいてな。その者達の内の一人が偶然目にしたそうだ。鎌を背負う仮面をつけた男が魔物に呪いのようなものをかけているのをな」


 ソフィアがそこまで言うと、マレウスは下を向き、肩を揺らした。


「くくく…くくくッ。ははははッ」


 狂気じみた笑い声が闇夜に響く。

 マレウスの背後では高らかに月が輝きを放ち、逆行となりマレウスを照らす。

 それが余計に彼の不気味さをて演出しているようだった。


「そうかぁ…俺としたことがそんなヘマをしていたとはな。あぁ、そうだ。魔物共を凶暴化させていたのは俺だ」

「やはりか。何のためだ」


 ソフィアの凛とした揺るぎない声にマレウスは再び目を細めると、その瞳をノルンに向けた。


「…何のため、か。それはもちろんそこの嬢ちゃんにけしかけて嬢ちゃんの実力を測るためさ」

「何だと…?」


 アランが眉を寄せる。


「言っただろ?俺の目的は嬢ちゃんの様な魔法使いだ。まぁ凶暴化したリザルドくらい簡単に倒せるやつじゃなきゃ使えないからな」


(使えない…?)


 ノルンはマレウスの言葉に違和感を覚え、マレウスを見つめる。一体魔法使いを捕らえたとして、その先の目的は一体何なのだろうか。この男は何を思い描いているのだろうか、と。

 しかし、冷静に思考するノルンとは反対にアランは限界のようだった。


「何が目的かは知らないが、俺の妹に手を出したことに変わりは無い。続きは牢で聞かせてもらうとしよう」

「はははッ!馬鹿が。さすがに俺一人で鳥の隊長格を相手に真正面から立ち向かうほど俺はイカれてない。一度帰ってアイツらに伝えたあとまた来るとしよう」


 アランの言葉に高らかに笑うマレウス。

 しかし、それを逃がすほど国家騎士団隊長は甘くない。


「…逃がすものか」

「何…?」


 そして小さくそう呟いた瞬間、アランは地面を強く踏み込み、一瞬でマレウスの鼻先まで迫っていた。

 アランの姿を追うことが出来なかったマレウス。気づいた時にはもう鼻先で剣の切っ先が鋭く光り、思わず仰け反り、後退する。


「クソッ…、鳥の分際でッ…!」


 剣の切っ先が鼻に触れて、スっと切られた皮膚から血が滴る。

 しかし後退した先にはいつの間にかソフィアが背後に構えていて、キィンという甲高い音が風を切ったと思えば、冷たい刃がマレウスの首に微かに触れた。


「ッ…!?」


 そしてマレウスの頭上の木の上からはアトラスがハンドガンを構えて、金色の瞳で冷や汗を流すマレウスを射抜くのだった。


「大人しく投降しろ」


 ソフィアの声にマレウスが舌打ちを鳴らす。

 しかしその瞬間、マレウスの前方からアランがもう一度マレウスの方まで勢いよく踏み込んできた。

 その片手で剣を振りかぶりながら。


「…っ…」


 勢いよく振りかざされる剣にマレウスも先程の余裕で挑発的な表情を捨て瞳に恐怖を走らせていた。

 しかし、剣はマレウスの首まで1センチあるかないかの所で寸で止まる。

 マレウスの耳に風切り音だけが響いた。

 それを合図にマレウスは腰が抜けたように膝から崩れ落ちた。

 目の前に月を遮るようにして立つ自身を射抜くような瞳で捕らえるエメラルドと対峙したまま。


 その後、マレウスは拘束され、後からやってきた騎士団に引き渡され、連れていかれた。

 マレウスが連れていかれた後、アランはすぐにノルンに向き直ると勢いよくその身体を抱きしめた。


「ノルンっ…、怪我は、本当に、ないんだな?」

「…はい。アラン。ソフィア様も。アオイさんも本当にありがとうございました」


 ノルンはいつもの様にアランに抱きとめられたまま抵抗することはなかった。

 それよりも、不安そうな声色のアランを思ってかそっと手を添えた。

 アランの肩口からソフィア、アオイの方を見て礼をいえば、ソフィアは薄く微笑んだ。


「いや。ノルンが無事で何よりだ」

「僕も。結局何も出来なかったし…」

「いや、アオイがあの時居なかったらと思うとぞっとする。助かったぜ!ありがとな!」


 申し訳なさそうに言ったアオイを、アトラスが呈して礼を言う。ノルンも小さく頷いた。

 すると、そっとノルンから身体を離したアランが、もう一度ノルンと瞳を合わせると、やっと安堵したように眉を下げ、大きな手をノルンの頭に乗せたのだった。



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