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norn.  作者: 羽衣あかり
“旅立ち”編
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56.初訪問

 ノルンの家に着いたアオイは、物珍しげにノルンの家を見渡していた。

 かなりの年月が経っているのか、年季の感じられる家。しかし清潔感があり、家具は統一されており、居心地が良い。

 そしてあちらこちらに積まれる本の山。山。山。

 様々な植物のドライフラワーが天井から吊り下げられ、テーブルの上に広げられた魔術書や様々な道具はノルンが魔法使いの薬師ということを徐に証明しているようだった。


 何も考えずに、アオイを部屋に上げてしまったノルンだが、内心とても後悔していた。


(…片付けをおえていなかった)


 辺りを見渡し、わぁ、とどこか感嘆な声を漏らすアオイとは対照的にノルンはその後ろでいつもの真顔にどこか影を指していた。


「あちゃぁ…。そういえば、薬作ってる最中だったな」


 アトラスが、苦笑いをうかべ部屋を見渡す。

 ノルンは口を一文字に結んで、遠い目をしている。


「…アオイさん。すみません。30秒ほど目を瞑っていて頂けますか」

「えっ、あ、うん」


 突如、わくわくとした心持ちでノルンの部屋を見渡していたアオイはノルンの声に背筋を伸ばした。


(…しまった…。つい、夢中で部屋をじろじろ見ちゃったけど…失礼だったよね)


 目を閉じながら、アオイが全くノルンとは別の意図で反省し、落ち込んでいたことをノルンは知らない。


 ノルンはアオイがまを閉じたことを確認すると、手に杖を出した。そして何を言うでもなく、杖に魔力を込めて、散らかっている本や、ノート、ペン。瓶。魔道具に向けた。


 すると全ての物が浮遊し、勝手にそれぞれが元々置かれていた場所に収納されていくのだった。

 本は本棚に。魔道具は棚に。ノート、ペンもそれぞれの定位置に。散らかっていた何が入っているかも分からない瓶たちも気づけば綺麗にノルンの調薬室の壁の棚に並べられていた。


(…なんか、音と気配がする)


 目を閉じている中でアオイは、バサバサバサ、という紙の音。ゴトゴトゴト、と何か重いものが移動する音。トントントン、と本が整列する音を聞いて、思わず目を開けてみたくなる気持ちを抑えていた。


 今、もしかしたら、ノルンが魔法を使っているのではないか、と。


(…もしそうなら、見たい)


 むくむくと湧き上がる好奇心。

 しかしその瞬間一人でアオイは頭を降った。


(いや、駄目駄目。ノルンちゃんに言われたんだから)


 むず痒くなる気持ちの中真面目にノルンの言いつけ通り待っているアオイの外では実際にアオイの予想通りノルンが魔法を使って片付けを行っていたのだが、残念ながらアオイがそれを見ることは叶わなかった。


「おぉ〜。相変わらずすごいな」


 関心した様なアトラスの声が聞こえた瞬間、


「アオイさん。お待たせしました。もう大丈夫です」


 というノルンの声が聞こえた。

 それを合図に目を開けば、先程とは見違えた部屋が広がっているのだった。

 綺麗に整理整頓された部屋にまた改めてアオイは一人感嘆の声を漏らすのだった。


「…すごい」

「いやぁ、いつ見ても便利だよなぁ。でも、あんまり魔法に頼ってるとフローリアに怒られるぞ?」

「………………。…お茶を入れてきます。どうぞ座っていてください」


 関心するアオイの後に、アトラスに痛いところをつかれたノルンは、少し居心地が悪そうにアトラスに返答することはなく、キッチンへ入っていった。


 ノルンが紅茶を入れて戻れば、部屋に芳醇な紅茶の香りが充満した。


「それにしてもよく偶然あの森でノルンと会ったなぁ」


 アトラスが紅茶をふーふー、と冷ましながら金色の猫目をアオイに向ける。

 アオイは、ノルンの入れた紅茶にあ、美味しい、と零しながらアトラスの言葉を聞いて何かを思い出したように苦笑した。


「…あ…あはは。それが、実はあの時___」


 アオイの話によれば、フォーリオへ向かう道中訪れたこの森で突如複数のリザルドに襲われたらしい。

 そして、何故か凶暴化しているリザルドに手間取りつつも、倒し終えたところ、後ろに段差があり、そのまま転げ落ちたところにノルンがいたのだという。


「…なんか、心当たりある情景だなぁ」


 アオイの話にアトラスはノルンを見つめる。

 ノルンも視線に気づいたのかアトラスを見つめ、ほんの少しだけ、薄く微笑んだ。


「それにしても、やっぱり凶暴化してたんだな」

「やっぱり?」


 アトラスの言葉にアオイが首を傾げる。


「はい。アオイさんと会う前に私達もリザルドと遭遇しまして、その時のリザルドに違和感があったものですから」


 アオイの疑問に丁寧にノルンが答える。

 アトラスも頷いた。


「魔物の活性化はここの所聞いてはいたが、凶暴化は初めてだな」

「そっか。そうだったんだ」


 魔物は体内に魔力を宿し、人を襲うものの総称であるが、たまに条件が揃えば凶暴化することがあるのだという。

 それは人に悪影響を及ぼす瘴気の付近であったり、また魔物によっては夜、また新月の夜など様々だ。

 しかし、そのどれも聞いたことがある程度のもので、実際に遭遇したことはなかった。

 そして、リザルドの凶暴化の原因は何だったのだろうか、と三人は頭を悩ませるも結局答えは出てこなかった。


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