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norn.  作者: 羽衣あかり
“狂戦士と少女”
225/259

224.単刀直入に

 ノルンはアランの腕の中で少し身動ぎをしながら視線を上げてアランの表情を伺う。

 花が舞っているかのように満面の笑みでノルンを抱きしめるアラン。

 普段ならば適当なところでその腕から抜け出すノルンだが、今だけは静かにアランの腕の中に収まっていた。


「ノルン!来てたんだな!ホークスが来て驚いた。随分早かったな!身体は冷えていないか?寒かっただろう?」


 アランが矢継ぎ早に言うと、両手をノルンの雪のように白い頬に触れて、少し持ち上げるようにして視線を合わせる。

 触れられたその指先はとても冷えていてノルンは大きなアランの手の上に小さな手を重ねた。


「…わたしよりもアランの手の方が冷えています」

「…!すまない、冷たかったか」


 ノルンがそう言えばアランは焦ったように慌てて手を離そうとする。

 ノルンは慌てふためくアランを静かに見つめて、それからアランの手を握ったまま首を振った。


「いいえ。アランも早く温まってください」


 ノルンがアランを気遣うようにそう言えば、慌てふためいていたアランは一瞬きょとんとした顔をして、それから幸せそうに微笑んで頷いた。


「…あぁ。ありがとう。そうするよ」

「はい」


 ノルンが頷き、そこで漸くアランは部屋の中を見渡した。そして、テーブルを囲うようにして席に着くアオイ、アトラス、ポーラを見つけるとそれはとても驚いたように目を丸くして、それから久しぶりの再開に表情を緩ませた。


「ん?…アオイ?アオイか!それにアトラス!ブラン!久しぶりだなぁ…!元気だったか?」

「お前なぁ…。はぁ…ま、相変わらずで安心するけどよ」

「あはは。お久しぶりです。アランさん」


 アトラスは相変わらず弟妹を一途に思うアランを見て呆れたようにため息をついて笑う。

 アオイもまた微笑ましそうにノルンとアランを見つめて会釈をした。


「…ん?君は…そうか。君がノルンが言っていた新しい仲間のポーラだな?初めまして。俺はアラン。ノルンの兄だ。よろしく頼む」


 アランは身体を小さくして様子を伺うポーラを見つけると、ポーラに近づいてそれから、目線を合わせて眩しい笑顔で自己紹介をした。

 ポーラは再び必死に頷くだけで、返事をすることはなかったがアランは嬉しそうに瞳を細めていた。


 アランがやってきた事でフローリアはもう一つカップをキッチンから運んでくるとレオの隣に腰を下ろしたアランの元へ置いた。

 アランはフローリアに礼を言うと紅茶を一口口に含む。


「…ふぅ」


 入ってくるなり嵐のように己のペースで一瞬で空気を変えてしまったアランも温かな紅茶を飲み、少し落ち着いた様子でカップをソーサーに置く。

 それから口元に笑みを浮かべたまま、目の前に座るノルン達に視線を向けた。


「…ははっ。俺に聞きたいことがある顔だな」

「当たり前だろ?ノルンはお前達を心配してここまで急いで帰ってきたんだからな」

「…アル」


 アトラスがそう言えば、アランは一度眉尻を下げて嬉しそうに柔らかく微笑んだあと、静かに頷いた。


「あぁ。全て話そう」


 アランがそう言った瞬間、アオイは背筋を伸ばし、ノルンも顎を少し引いて身体を固くする。


「…そうだな。まず、何から話すか…」


 アランは片手を顎に置くと呟く。

 そこで口を開いたのは少し前のめりに鋭い猫目を光らせたアトラスだった。


「それじゃあこっちから聞く。…誤魔化しても仕方ねぇから単刀直入に聞くが、ゲイルはこの街に現れたのか?」


 アトラスは言葉通り単刀直入に最もノルン達が気になっていた事を聞いた。


「…………」


 アランは静かに口を結び、真剣な表情でアトラスを見つめる。先程まで爛々と輝いていたエメラルドは今は波の立たない海のように静かだ。

 そして数秒の沈黙の後にアランは静かに口を開いた。


「…あぁ」


 そしてたしかにそう言った。

 アランはたしかにアトラスの問いに対して肯定の意を示したのだ。

 アランが頷けば、ノルンとアオイ、それからアトラスの表情が強ばった。

 緊張感が走る。

 そんな三人を前にアランは事が起こった日の事を脳裏に思い返していた。


「…結論から言おう。確かにこの街にゲイルという戦士はやって来た。…そして、その彼の目的はやはり…」


 アランはそこまで言ってからしちらりと視線をノルンに向ける。


「…ノルンの手紙に書かれていた通り…以前ノルン達が戦闘となった相手…そして、現在フォーリオに囚われている男…マレウスの解放だった」


 アランはそこまで口にすると、視線を落として机の上に置かれた両の拳をきつく握りしめた。

 そしてノルンもまたアランの言葉に眉を寄せ、口をきつく結ぶ。

 アランの言葉にレオとフローリアは静かに視線を落としている。

 どうやらアランからある程度の話は聞いているようだ。


(…どうしてだろう)


 ノルンはふと膝の上に重ねられた両手を組むとぐっと力を込める。

 フローリア、アラン、そしてレオ。

 三人の無事を確認したというのに、どうしても胸の焦燥感が___不安が消えない。

 何故だかこれからアランから伝えられることが、何かとても重要で___そして、何かの引き金を引いてしまうようで。

 しかしそんなノルンの胸の内を察することはなく、アランはノルンかれ手紙を受け取ってから何が起こったのかを語るために小さく息吸うと口を開いたのだった。




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