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norn.  作者: 羽衣あかり
“夢追い人と少女”
201/259

200.収穫祭

 ノルンがエルガーと共に街に戻ると、アトラス、アオイ、ポーラが入口で出迎えてくれた。

 どうやら祭りをまだ見て回ることはせず、ノルンとエルガーを待っていてくれたらしい。


「お。帰ってきたな。良かった」

「はい。待っていてくれたのですか」

「うん。せっかくのお祭りだし皆で見て回りたいねって話したんだ」

「…そう、ですか。ありがとうございます」


 エルガーを探しに行きたいと希望したのはノルン自信であって、その間アトラスやアオイ、ポーラは先に祭りを楽しんでいるものだと思っていた。

 ノルンも勿論それでいいと感じていた。

 しかし街の入り口で手を振って笑顔で出迎えてくれた仲間に心の奥底がじんわりと熱を持った気がした。


「悪かったな…。俺達の喧嘩なんかに巻き込んで…」

「んや?俺たちは構わないぜ!…ま、後のことはお前に任せるさ」


 アトラスは申し訳なさそうに首の後ろに手を置いて謝るエルガーに笑ってみせる。

 エルガーはそのあと、アトラスの言葉の意図に気づいたのか、小さく頷いてみせた。

 アオイも特に何かを言うことはないがアトラスの横で優しげな笑みを浮かべエルガーを見つめていた。

 そんな時、ふとぐ〜きゅるるるるる、という可愛らしい音がノルンの足元から聞こえてきた。


 ちらりとノルンが視線を下に向けるとそこにはアオイの足元で小さなお腹を小さな手で抑えたポーラがいた。


 可愛らしい音はどうやらポーラのお腹の音だったようだ。思わずこれにはノルンの表情も緩む。

 思えば朝から何も食べていない。

 きっとお腹はずっと減っていたのに、それでもノルンの帰りを待っていてくれたのだろう。

 そう思うと申し訳なさと同時に、胸の内に暖かいものが広がる。

 少女は未だその感情の正体を知らない。


「…ぁぅ」


 ただ今は小さなシロクマの目線に合わせてしゃがみこんだ。


「お待たせしてしまい申し訳ありません。ポーラ。行きましょうか」

「…うん…!」


 ノルンが優しげに目元を和らげて言えばポーラは顔をあげ、瞳を輝かせてぱぁっと花が弾けんばかりに笑って見せたのだった。


「だな。んじゃ、せっかくの収穫祭を見て回ろうぜ!」

「楽しみだなぁ」

「ほら、エルガーも行くぞ〜」

「え…」


 ノルン達の会話を微笑ましげに眺めていたエルガーは突如当たり前のようにアトラスに声をかけられ一瞬驚いた表情をした。

 しかし、すぐにその表情は優しげなものに変わるとエルガーは小さく頷いてノルン達に並ぶのだった。


 まずは腹ごしらえをしようと言うことになってノルン達は様々な露店を覗き込む。

 ポーラはどうやら蜂蜜に目がないらしく、この街はポーラにとって幸せの絶頂だった。

 きらきらと黄金に輝く瓶の中を見つめてはぽたぽたと涎を滴らせている。

 アオイとノルンは視線を交わすと微笑みあう。

 その様子があまりにも可愛らしかったもので気づけばノルンはポーラに蜂蜜パンケーキを、蜂蜜ジンジャーを買ってあげた。

 ポーラがそれらをぺろりと平らげて蜂蜜レモンケーキに再び瞳を輝かせ、ノルンが再び硬貨を出そうとしたところで焦ったアトラスに止められたのだった。


「待て待て待て!これ以上は糖質の取りすぎだ!ノルンはポーラにこれ以上買い与えるなよ?」

「…申し訳ありません。アル。分かりました」


 アトラスに腕を握られて止められたところでノルンははっとして確かに、と自分でも反省をした。

 しかし傍から見れば珍しく落ち込んでいる様子のノルンにアオイが慌てて話題転換をしようとエルガーお勧めのきのこのカンパーニュを買ってきてくれたことでノルンは気持ちを持ち直していた。


「いただきます」

「うん。僕もいただきます」

「零れるから気をつけて食べろよ」


 ノルン、アオイ、エルガーの三人で並んできのこのカンパーニュを頬張る。

 その瞬間ノルンは口いっぱいに広がる濃厚なホワイトソースに目を見張る。

 トロッとしたホワイトソースの中にきゅっきゅっとした食感のマロンタケ。

 そのマロンタケも粗食をする度にほのかな甘みを感じさせる。マロンタケの他にも薄切りのとろとろになった玉ねぎが入っていて、その玉ねぎもまた甘い。

 カンパーニュは少し表面を焼いてカリッとしていて、けれど中はもっちりとしていてとても美味しい。


「ん〜!!何これ、おいしい…!」


 アオイもまたその隣で瞳を輝かせていたのは言うまでもない。


「へへ、だろ?…ん、うまい」

「こっちもいけるぜ。肉が肉肉しくてうまい」


 アトラスはどうやらジャンボチーズバーガーを何処かで見つけてきたようで両手でバーガーを押さえつけると大きく口を開いて目一杯に頬張っていた。

 ちなみにブランには露店に並んでいた鶏肉をハーブ塩で焼いたものをノルンはこっそり分け与えてあげた。


 その後は雑貨やアクセサリーが売られている屋台を見たり、広場で行われている大道芸を鑑賞した。

 そうこうしている内に気づけば陽は傾き始め、静かに街を夜へと誘うのだった。








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