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norn.  作者: 羽衣あかり
“星追い人と少女”
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139.占星術師

 ベルンへの旅を初めてはや数ヶ月。

 ノルン達は現在ラベール地方のトト丘陵を歩いていた。


「すっかり秋だなぁ〜」


 そう零すアトラスの言葉通り世界は気づけば黄金の大地に覆われていた。

 近くに池でもあるのだろうか。

 水のしらべと共に気温の差がった風が柔らかく頬を撫で、木々の葉を揺らした。

 はらはらと舞い落ちる黄金の葉にノルンは目を細める。

 そんなノルンの前を上機嫌で歩いていポーラが振り返ると、ノルンに笑いかける。


「ノルン〜。綺麗だね〜!」

「はい。とても」


 ノルンは頷くとポーラの頭に舞い落ちた薄い切れ込みの入ったイチョウの葉を取る。

 ポーラは手を細めた後で、ノルンの指先に掴まれた美しい金色の葉を眺めた。

 瞳を輝かせるポーラにノルンはイチョウの葉を手渡す。


「ノルン、これはなんて言うの?」

「イチョウです」

「イチョウかぁ〜!綺麗だね〜!ね!アオイ!」

「うん。本当に綺麗だね」


 くるくるとイチョウの葉を回転させて嬉しそうに笑うポーラにアオイとノルンも頷いて辺りを見渡した。

 薄い青空に紅葉した木々が映えて美しい。

 いつの間にか季節は移ろい、ハルジアの地は秋を迎えていた。


 柔らかな木の葉の道を踏みしめながらアトラスがそういえば、と口にする。


「昨日の宿屋でここら辺に星が綺麗に見える場所があるって聞いたぜ」

「星?」

「おう。何でも山の上にあるから周りに何にもなくて綺麗に見えるんだと」

「へぇ」

「確かトト丘陵から隣の山の頂上って言ってたぜ。イチョウの古木が目印だってよ」


 いいね、行ってみようか、と微笑むアオイにノルンも頷く。


「丁度今日の夜あたりに流星群が見られるそうですしいいかもしれません」

「へぇ〜そうか!それは絶好の天体観測日和だな」

「うん。楽しみだな。それにしてもノルンちゃん、

 どうして流星群だってわかるの?」


 首を傾げるアオイにノルンは歩きながら昨晩届いたホークスからの届け物を脳裏にうかべた。


「昨日手紙が届きましたので」

「手紙?」

「はい」


 アオイはその場に居なかっただろうか。

 するとアトラスがどこか遠い目をしてあー、と思い当たるものに気づいたようだ。


「そういえば昨日分厚い手紙受け取ってたなぁ」

「あはは…。アランさんかぁ」


 ノルンはアトラスの言葉にこくりと頷く。

 そしてアオイもまたその言葉でノルンが誰からの手紙を受け取ったのか察したようだった。

 旅立ちから度々送られてくる分厚い手紙は勿論ノルンの兄であるアランからであった。

 時たまにフローリアからの手紙も混じっているのこともあるが、大半はアランからのものでその内容は近況報告からノルンへのプレゼントを見つけただの、危険なことはないかなどのフォーリオへ居た時と変わらないものだった。


「それじゃあアランさんが教えてくれたんだね」


 そっか、と呟くアオイだが、ノルンはその言葉に緩く首を左右に振る。


「いえ。アランではなくレオからです」

「レオさん?」

「はい」


 聞き返すアオイにノルンが頷けばアトラスも少し意外そうな反応を示す。


「へぇ〜。そうか。じゃあレオもノルンに手紙を書いてくれたのか」

「手紙…」


 意外だな、と言いつつ笑うアトラスにノルンは昨日受けとった分厚い束の手紙を思い出す。

 そしてその中に一枚紛れた小さな真っ白いメッセージカードを思い浮かべた。

 そこにただ名も告げず、近々流星群が見られることととその日時だけが書き記されていた。

 名はなくとも、その達筆な筆跡は間違いなくレオのものであった。


「はは。なるほどな。レオらしいな」

「ふふ、うんたしかに」


 ノルンがぺらりと一枚のメッセージカードを見せると二人ともレオからだと納得したようだった。

 愛想もなくただ連絡事項だけを記すところがレオらしいとの事だ。


「レオは流星群の日や、星、月が一層綺麗に見える日はよく教えてくれました」


 そしてアランやフローリアを連れて。

 二人が来れない日にはレオと二人でフォーリオのシンボルであるフォリア湖や、フォリア山の星がよく見えるところまで登って。

 よく星空を眺めた。

 ノルンがそんな日々を思い出しているとアトラスは腕を頭の後ろで組みながら口角をあげる。


「それにしてもレオもよく知ってんな〜」

「そうだね。フローリアさんから教えてもらったのかな?」


 アオイがそういった所でノルンは思わずきょとんと首を傾げた。そして、


「いえ。レオは占星術師ですから」

「え?」


 と何でもないふうに答えたノルンに2人が声を上げたのは同時だった。



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