忘れてた
「4月になったら高校受験を控えた3年生になるんだから、もっと勉強しなさい」
と、口うるさく小言を言う母に反発して「うるせえんだよ、婆!」と罵声を浴びせ、スマホと財布だけを持って家から飛び出した。
罵声を浴びせて家を飛び出したのに30分も経たずに舞い戻った僕は、涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら鍵が掛けられた玄関のドアを叩き謝罪の言葉を叫んでいる。
「ごめんなさい! ごめんなさい! 家に入れてー!」
僕は忘れていたんだ、今が春先花粉の季節だって言う事を。
涙をボロボロ流し鼻水を垂らしながら僕は母に向けて、謝罪の言葉を叫び続けた。