心配だよねって言いながら全然心配してないでしょ?!
タイトルが頭に浮かんで書き始めました。
8月も下旬になると二人のお財布もすっかり“夏バテ”してしまって……今日はカレのお部屋でお料理教室! つまりは“お家デート”だ!
彼の部屋へ行く途中に立ち寄ったスーパーで鶏のむね肉が目玉で出ていたのでアプリ割引になっているプレーンヨーグルトと共にどっさり買い込んだ。
チューブのニンニクとショウガをブニュン!と投入したヨーグルトにカレー粉をバサバサ足し、塩コショウをしたむね肉と一緒にポリ袋へ……
腕まくりしたカレはポリ袋をグニュングニュン揉みしだき始めたのだが、手つきが何だかいやらしい。
「それちょっとおかしい!」と指摘すると
「“むね”肉だからこれでいいんだ!」とニヤリとする。
「まったく!変な冗談止めてよね!」とカレの手からポリ袋を取り上げて、結局私がやる羽目となる。
早々に“お料理教室”から解放されたカレはスマホをクリクリし始めたので私は別の“用事”を当てがった。
「ねえ!台風が近づいているのよね!」
「そうらしいな」
「“国営放送”なら台風情報を流し続けてるだろうからテレビつけてよ!」
「―ん、分かった」
“揉み込み”が一段落した私は鍋を火に掛け、バターでカレー粉を炒める。
これに缶詰トマトを投入すると何とも食欲をくすぐる香りが立ち込めて来る。
飴色になるまで炒めるタマネギの香りもいいけど、これも香りが食べられるわね!
本当は炒めタマネギを使ってカレーを作りたかったけれど、カレがタマネギを刻むのを嫌がるので(それこそ水泳用のゴーグルを付けてまな板に向かうなんてマンガみたいな事をしかねないので)諦めた。
だけど結局私一人で作るのならタマネギを使えばよかったなあ~
ほんの少しだけ恨めしそうにカレを見たら、いつの間にかこちらに背中を向けて、またスマホをいじってる。
『モウッ!』と言う心の声を飲み込んで丸まった背中に声を掛ける。
「台風、被害とか出てる?」
「んー 自転車くらいのゆっくりした速度で移動していて……線状降水帯が発生している地域は危険水位を越えたり土砂災害が出そうだ。心配だよね」
「ホントに?! 避難している人、居るのかしら」
「居るんじゃね まあこの暑さと湿度じゃ避難所も大変だろうな 赤ん坊とか老人なんか体調崩しそう」
「いやいや元気な私達だってその環境は辛いと思うよ! “コロニャ”罹患している人も居るかもしれないし」
「心配だね」
「そうだね」
このやり取りの間中、背中を向けているカレの手元を私は見ていた。
本当は全然心配なんかしてないでしょ!
私が話しかけても馬耳東風なんだから!
しばらく無言放置していると……カレったらせわしなくスマホをグリグリし始めた。
単にインス●を見てるだけじゃなさそうだ……怪しい!!
だからと言ってどうする事もできないので、私はコッソリため息ついてお鍋に向き直る。
さあ!漬け込んでいたむね肉をお鍋に入れよう!
漬け汁ごとお肉を入れてよく混ぜ合わせる。ふつふつしてきたら弱火に戻し、蓋をして更に煮込む。
「ねえ!知ってる?! コーヒーを入れるとコクが出るんだって」
私が鍋の方に向いたままカレに声を掛けると
「ああ、チョコレートなんかもいいらしいぞ」
なんて“知ったかぶり”を口にしながらカレは私の背中に立った。
振り返ると息遣いが聞こえそうな程にカレの顔が近い。
「鍋の蓋、開けろよ!」
「えっ?!」
「いいから」
右手を“おたま”に添えながら左手で鍋の蓋を開けるとカレの右手が伸びて来てコーヒーカップの中身をドボドボと入れた。
「あっ!!」
いつの間にか私の腰に手をやってるカレは、私の抗議の叫びを意に介さず、小憎らしくも得意げな表情をしている。
「勝手な事しないでよ!!私はインスタントコーヒーをパラパラ入れたかったのに!!」
「オレの淹れたドリップコーヒーの方がいいだろ!」
「ダメだよ!! カレーが薄くなっちゃうじゃん!!」
「トロ火にしてゆっくりコトコト煮込めばより味が深くなる!」
「知った風なこと言って!! 出来上がりが遅くなっちゃうよ!!」
「いいよ!鍋は熟成させて置いて、オレ達はセイジュクしようぜ!」
エプロンのリボン結びをシュルン!と解き、むき出しになったシャツの裾に指を這わせるカレの事を……
されるがままの私は……
色んな感情で咀嚼した。
おしまい
この先、このふたりはどうなってしまうのか??……(^^;)
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